ダイスロール

@panjan0126

プロローグ

 今ここにいる僕を過去の僕が作ったというのなら、今の僕次第で未来を変えられるかもしれない。

 けれど意志の弱い僕は何度も失敗してきた。このサイコロを手に入れるまでは。

 「悪魔のサイコロ」。ネット上ではそう揶揄されていた。

 出た目に応じて運命を操るという触れ込みでフリマアプリやネットオークションなどで瞬く間に世間へと広まっていった。

 初めは誰も見向きもしなかったが、実際に効果があったという購入者のレビューが増えるにつれ拡散は加速し、それは僕も例外ではなかった。

 使い方は簡単だ。願いを込めてサイコロを振る。それだけで後は全てサイコロの出目が決めてくれる。出た目が大きければ大きいほどいいという話だ。

 手に入れてまず願ったのはお金が欲しいという安易な願い。半信半疑のままサイコロを振る。出目は見事6。

 すると紙切れが風に舞って僕の部屋へ。その紙切れは宝くじだった。思わず番号を照合する。1等組違い賞10万円。当たっていた。

 泡銭を手に僕はショッピングを楽しみそのまま浮かれた足取りで繁華街へ。鯨飲馬食を謳歌した。

 サイコロに身を任せる。僕たちがその意味を知るそのときまで「悪魔」は笑いを堪え身を潜めていたのだろう。

 最初の悲劇は、サイコロバブルだなんだと荒唐無稽な乱痴気騒ぎを繰り返していたある日のことだった。

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