018・前編-創作物に出てくる、外人ってなぜか皆日本語上手だよね
いやに全身黒くて色素の薄い黒髪————緑に近いだろうか。筋太郎には及ばないながらも(大体半分ぐらいか?)がっしりとした体。筋太郎に及ばないながらもでかい偉丈夫。
……筋太郎デカすぎだろ。
あ、
だから俺の周りキャラが濃いな。
まだまだ序盤だっていうのに。
「Who are you? Are you a student here?」
「え?」
急に話しかけられたから何を言ってたのかは解らないが、恐らくは英語だったと思う。それも中学生レベルくらいの。
「It's from my boss. I can't let you through from here.」
「?」
別に急じゃなくても何を言ってるのか解らなかった……。
俺一応受験して入学したんだけどな……。
俺が首を傾げている事に気づいたのか、ポンとなにかに納得したように手を打った。
「そうか、ここは日本だったな。これはすまなかった」
「い、いえ、大丈夫です」
謝られてしまった。
以外にも流暢な日本語で謝られてしまった。
「Well, what was it in Japanese……? そう、上からのお達しでここから先に進ませることはできない。すまないな」
「い、いえ、こちらこそ丁寧に、すいません」
「………………」
「………………」
なんだ、この空気。
テロリストとお話ししてお互いになんか謝ってしまった。
え? 帰らなきゃいけない?
「それじゃあ」
「ああ」
そうして踵を返して今度はゆっくりと歩き出す。
「って、なるかあ!」
なってたまるか。なんだそれ。
今絶賛(絶賛はされて無いと思うが)学校内じゃテロリズム中なんだよ!
それがなんだ、じゃあ、って!
あってたまるか! 主人公的に!
「なんだ、帰ってはくれないのか」
「ああ、あんたのその流暢な日本語に騙されるところだったが、帰るわけにはいかないんだ」
「別に騙してはいないと思うが」
俺の日本語がどこかおかしかったか、と教訓めいた何かを知ったかのように、知ったなにかを反芻するかのように男は一瞬思案する。
考えているところ悪いが、別に日本語はおかしくなかった。おかしくなさ過ぎて驚いてはいるが。
すると考え終わった男は最終通告とばかりに、
「そうか、今度は直接言うが、どうか帰ってはくれないか」
と言った。
それは、それは———
「嫌だ。悪いが俺はここを通らなきゃいけない。どうしても無事でいて欲しい奴らがいるんだ」
筋肉ムキムキでとても日本人とは思えない巨体をしている、フレンドリーな奴。
天然パーマで、声を聴くのも稀な人と関わるのが苦手で、でも嫌いじゃない不器用な奴。
そして、高慢ちきで、我儘で、暴力的で、上から目線で、本当は優しくて、かわいい奴。
そんな奴らに無事でいて欲しいから、俺は帰るわけには、ここを通らないわけにはいかない。
「だから、できない」
「I see. それは———」
美しいな。
フッと微笑を浮かべ男が言う。とても、残念そうに。
「だからこそ残念だ、お前のような奴を、最近ではどこの国でも見ないような奴を、俺は――殺さなければならない」
「え——」
今度は困惑ではない。
男がそう言った瞬間、男の体から緑色の粒子が大きく舞い上がり、俺は強く横に吹き飛ばされた。
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