第42話 ミッション5-4 その8
ボス 『ぐはっ!』
男4人で人工頭脳の攻撃を避けていたが、ボスが電撃攻撃から逃げた後、続けて襲ってきたサーバーラックを避け損ねた。
サーバーラックの直撃を受けたボスは弾き飛ばされると、サーバーの爆発に巻き込まれて追加のダメージを受けていた。
チビちゃん 『ボ……!』
チビちゃんが叫ぼうとするが、すぐに自分の状況を思い出し、慌ててサーバーラックに身を隠した。
そのチビちゃん達は、俺が何かがあると言った北東をミケが離れた場所から、チビちゃんは近くに移動して、そしてねえさんは北東以外の場所を探していた。
ボス 『まだ生きている。ぐっ……!』
サイボーグ化しているボスだから生きているが、俺やドラだったら間違いなく即死だっただろう。
しかし、生きていると言っても痛覚が増大している今だと、剛速球で投げられた冷蔵庫に直撃してから全身をやけどした状態が、リアルに襲って辛そうだった。
すぴねこ 『アンダーソン!』
アンダーソン『助けに行くぞ!』
ボスを救うべくインプラントを発動させると、アンダーソンも同じくインプラントを発動。
2人同時に倒れたボスへ走って、蹲るボスの右手を俺が、アンダーソンが左手を掴んだ。
「3人同時に死ね!」
人工頭脳が俺達を見下ろすろ、右手から電撃を放った。
ボス 『ぐあぁぁぁぁ!!』
強引にボスを引き摺って逃げたが、電撃がボスの足首に当たってボスが悲鳴を上げた。
すぴねこ 『ひでえ状況だな』
ボス 『残りのHPが1だ……くっ!』
ボスは笑おうとしたが、痛みでうめき声が出ていた。
アンダーソン『悪運が良いぜ』
すぴねこ 『妖怪1足りないに救われたな』
生き残った俺達の様子に人工頭脳は驚いた様子だったが、胸の前で腕を交差してソニックブームの発射体勢になった。
「今度こそ、本当に終わりだ」
ドラ 『させるかよ!!』
この攻撃は逃げられない! 諦めかけたその時、ドラが俺達の前に立って両手を広げた。
ドラ 『後は任せたぞ』
ドラが俺達に振り向いて笑みを浮かべる。
その瞬間、ドラの体がソニックブームで上下に切断された。
『『『ドラ!!』』』
ソニックブームはドラを切り裂いた時に軌道を変えると、俺達の上を通り過ぎた。
だけど、俺達の身代わりにドラが死んで、その死体が俺の前に転がっていた。
すぴねこ 『バカヤロウ。お前、格好良く死に過ぎだろ……』
身代わりで死ぬとか、どこぞの太陽に吠えてる殉職
だけど、これは別にデスゲームじゃないし、痛覚設定が高くなったと言っても現実でドラは生きている。だから、悲観するほど悲しくはない。
多分今は死亡者専用ロビールームで、1人痛みに苦しんでいると思うけど、落ち着いたら観戦モードで見ているだろう。
という事で、ドラの死体を持ち上げてパシャ。死んだ顔のドラと笑顔な俺の新たなツーショット写真を手に入れた。
「これでやっと1人か……結構時間が掛かったな」
ドラを殺した人工頭脳が呟いて左腕を上げると、サーバーラックを宙に浮かした。
まだこちらのピンチは継続中。ボスは未だに動けずに敵の攻撃を防ぐ手段はなかった。
次に死ぬのは俺かと覚悟を決めたその時、1発の銃声がドームの中に響いた。
そして、人工頭脳が動きを止めると、宙に浮いていたサーバーラックが床に落ちた。
白く光っていた人工頭脳の体から光が消える。ちなみに、乳首と陰部は規制で見えていない。
人工頭脳を見ていると、俺の耳元でインカムを通じてミケの声が聞こえて来た。
ミケ 『壁の1か所だけ赤く光っていたから、それを撃ち抜いたわ』
このドーム状の部屋は野球のグランドぐらいの広さがあり、その壁の全面に青い電飾が施されている。
その中からたった1つの赤い電飾を探すのは、広い野球場の観客席から1人の客を見つけるぐらい困難だろう。
だけどミケは、数十万の青い電飾の中から、たった1つだけあった赤い電飾を見つけて、それを撃ち抜いたらしい。
それが何を意味するのか分からない。だけど、人工頭脳の体は光を失い、青白い裸体を露出させていた。
「……何だと!?」
人工頭脳が驚いて自分の両手を見ながら呟く。
チビちゃん 『ドラ君の仇!』
隠れていたチビちゃんがグレネードを放ち、人工頭脳の足元で着弾した。
「キャアァァァァ!!」
グレネードの爆煙の中から人工頭脳の悲鳴が聞こえる。
そして、グレネードの煙が晴れて姿が見えると、彼女の体は傷を負って煤まみれになっていた。
その様子にアンダーソンと顔を見合わせて頷き、同時に銃を構えた。
すぴねこ 『撃てぇぇぇ!!』
俺の合図で、全員が人工頭脳に向かって攻撃を開始。
自動回復中だったボスも回復を中断させると、軽機関銃のトリガーを引いて弾丸を雨の様に浴びせていた。
「くっ! ……まさか、攻撃を喰らうとは……」
一方的に攻撃を受けていた人工頭脳は悔しそうに顔を歪めると、両手の掌をパンと叩く。
すると再び体から光を発して、こちらの攻撃が効かなくなった。
ボス 『ねえさん、ミケ、チビちゃんはもう一度赤い電飾を探せ。それが敵の弱点だ! すぴねこ、アンダーソンは相手を煽ってヘイトを高めろ!』
まだ半分も回復していないボスが立ち上がって、全員に指示を出す。
「油断した。次こそ殺す!」
人工頭脳はミケを狙ってソニックブームを放とうとするが、その前にKSGのトリガーを引いて人工頭脳の足元に催涙弾を落とした。
すぴねこ 『かくれんぼしようぜ。お前、永遠に鬼な』
「見えん……何所だ!?」
すぴねこ 『ここだブス!』
煙に包まれている人工頭脳に向かって叫ぶと、俺のすぐ脇をソニックブームが通り過ぎた。突然の事で背筋がぞっとする。
どうやら「ブス」という言葉は、どんな年齢の女性を相手にしても言ってはいけないらしい。
すぴねこ 『ひでえツラしてどこに撃ってる、ブス。外れてるぞ』
アンダーソン『すぴねこばかり攻撃していて良いのか? 俺はここに居るぞ』
すぴねこ 『そこの顔面クリーチャー。今すぐバグスって名前を止めて、ドブスに変えろ!!』
「ブスって言うな!!」
さらに煽ると、人工頭脳は声をした方へあらゆる攻撃を飛ばしてきた。特に俺の方へ。
ねえさん 『見つけたわ!』
ねえさんは1分で目当ての赤い電飾を見つけると、スナイパーライフルで電飾を撃ち抜いた。
こんな早く見つけて正確に撃ち抜けたのは、スナイパークラスとして経験を積んだ彼女だから出来る芸当だと思う。
アンダーソン『どうだ?』
煙幕弾の煙が晴れて人工頭脳を見れば、まだ彼女の体は光に包まれていた。
すぴねこ 『バカな!?』
「残念だっ……」
人工頭脳が最後まで言う前に1発の銃声が聞こえると、彼女の体から光が消えた。
ミケ 『もう1つ有ったわ。今度は2か所壊さないとダメだったみたい』
どうやら人工頭脳は攻撃を与える度に、防御に必要な電飾の数が増えるらしい。
ボス 『チャージ!!』
ボスの合図で、こちらの反撃が開始される。
人工頭脳は再び攻撃を受けて悲鳴を上げていた。
2度目の攻撃を耐えた人工頭脳が手を叩くと、再び体から光を放ち、攻撃が効かなくなった。
「よくもやってくれたな!」
すぴねこ 『ウルセエ、ブス』
先ほどと同じ様に煙幕弾を放つが、人工頭脳は宙に浮かんで煙から逃げた。
「同じ攻撃を喰らうか!」
ボス 『チビちゃん、敵が動き始めた。恐らくミケとねえさんが狙われる。チビちゃんはミケを守れ。俺はねえさんの方へ向かう』
チビちゃん 『了解!!』
ボスがねえさんの方へ走りながらチビちゃんに命令すると、彼女はミケに向かって走り出した。
「今から守ろうとしても、もう遅い!」
人工頭脳がミケを狙って右手を前に出す。
そのミケはスコープを覗いていて、人工頭脳の攻撃に気付くのが遅れていた。
すぴねこ 『フラッシュ!!』
フラッシュバンを人工頭脳に向かってぶん投げると、人工頭脳の体を通り越して顔の目の前で破裂した。
「キャアァァァァァァ!! 目が! 目があぁぁぁぁ!!」
目と耳を潰された人工頭脳が空中で目を押さえて叫んでいる間に、赤い電飾を全員で探す。
チビちゃん 『ミケちゃん、あっちにあるよ!』
ミケ 『了解!』
最初にチビちゃんが赤い電飾を1つ見つけて、ミケが撃ち抜いた。
ねえさん 『2つ目もオッケー』
ねえさんも見つけて、直ぐに電飾を撃ち抜く。
アンダーソン『もう1つあったぞ。ミケから見て11時の方向だ』
ミケ 『了解! チビちゃんも探して』
チビちゃん 『うん』
アンダーソンが見つけた電飾をミケとチビちゃんが探す。
「させるか!!」
フラッシュで苦しんでいた人工頭脳が、目が見えない状態にもかかわらずサーバーラックを浮かして、ミケ達が居る方へ投げ飛ばした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます