人狼ジャッチメント 「愛してる」
@tomomo520
第1話 ソフィア視点
「アーニーまだかなぁ……」
誰もいない部屋に独り言が響く。
ついさっきまで白熱した議論がされていたとが嘘のように静まり返っている。
ボーンボーン。
置き時計が12時を告げる。
『ソフィア、アーニーが「ここで待っていて」ですって。今日の噛みも私たちで行くわ。だから安心して』
にっこりと笑顔で背中を押してくれたミカの言葉を思い出す。
ミカの言葉の感じからすぐにくるものだと思っていたが、もう一時間ほど経っている。
アーニーは時間にルーズなところがあることはわかっていたがここまで待たされたことはない。
…やはり自分は手玉なのだろうか。いやそんなことはないはずだ、アーニーは「君だけを愛している」と言ってくれたではないか。
私もアーニーを愛している。ならば信じよう。
1人自問自答を繰り返し不安を払う。
「よし、アーニーの部屋行こう」
ソファーから立ち上がるとくるりと踵を返し、アーニーの部屋へ向かった。
アーニーの部屋に近づくにつれて心臓がどくどくと動く。
(やばい、緊張するっ……!!)
過去の自分が今の自分を見たらなんと思うだろう。異性の、しかも自分よりも年下の「少年」を意識しているだなんて。客観的に見てもどうかしていると思う。
けれども、どうしようもないのだ。年相応の幼さがありながらも堂々としたあの美しい目で見つめられると。
自分で自分を制御できない、そんな感覚に陥る。
「すぅ……はぁ……」
アーニーの部屋の前まで来た。
高鳴った胸を落ち付けようと深呼吸を試みるも、うまくいかない。
恋とはここまで自分を変えてしまうのか。
『ソフィアが幸せだとエマまで幸せになるの!!だからアーニーに会いにって!!』
『そうよ。貴方の幸せを私たちは誰より願っているわ。いってらっしゃい』
震える手を胸に仲間のエマとミカの応援を反芻する。
私がアーニーと恋人だと言ったのにも関わらず、軽蔑するどころか送り出してくれた2人の仲間。
ここでいかなければ2人に合わせる顔がない。
“ありがとう”心の中でお礼を言いつつ、ノブをゆっくり回した。
「え……」
開いてすぐ、目に飛び込んできたのは鮮やかな赤だった。
その次に散ったバラたち。アーニーが綺麗だから、と大事に大事に育てていた花なのに。
「どうして……」
なんとか絞り出そうとした声はとても聞き取れるようなものではなかっだと思う。
「おかえりなさい、ソフィア」
血に濡れた己の毛を舐め、何事もなかったような笑顔でミカは私を出迎えた。
「あぁ…あ」
ガクガクと震え、今にも倒れそうになるのを必死に抑える。
「ど、ぉして…アーニーがぁ?……なん、でミカが?」
血の匂いにむせ返りそうになる。今まで何度となく嗅いできたというのに。
「……ソフィア落ち着いて。貴方はアーニーに騙されていたのよ」
ミカは立ち上がると、落ち着き払った様子でソフィアに近づく。
まるで子供を諭す母親のように。
「な、にいって……」
「“悪女”を知っているわよね。人々を惑わし騙す存在。アーニーは悪女なのよ」
「……」
「貴方はアーニーに黙れされていたのよ」
嘘だ嘘だ、アーニーは悪女のわけがない。だってアーニーは私を誰よりも愛してるといってくれたし、愛おしそうに私の名前を呼んでくれた。そんなアーニーが悪女?絶対に違う。
「…アーニーをっ馬鹿にしないでっ!!」
悲鳴にも近い声を上げると同時にミカに襲いかかった。
どうしてどうして。信じていたのに。本気で応援してくれてると思ってたのに。どうしてなの、ミカ。
「……失望したわ」
ミカはソフィアの攻撃を避けもせず、短くそう告げると机の上のナイフを手に取ったーーー
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