第二章

第21話 逃亡系

「誰って……どういう……事……」

思わずそう聞き返した。


「お前は……誰だ……?私は……一体何故……こんな所に……」

ランスロットは頭を抱えその場にうずくまる。


「何言ってるんだよ……お前は……」

俺はランスロットに近付き手を差しのべる。


バシッ

「触るなッッ!」

ランスロットは俺の手を振り払い再びうずくまる。


「俺の事を忘れたのかよ!?何でだよ!何で!」


「貴様の事などは知らん……何も思い出せない……頼むから私に話し掛けないでくれ……」

声を震わせて怯えている。

こんな姿のランスロットは始めて見る。

いつもはクールで友思い、弱い所は全く見せない……のに……

何でこうやってこんな事ばかり……


「記憶が無いだとっ!!」

カヴェインの声が病室に響き渡る。


「……そう見たい……何だ……」


カヴェインは俺を指差して言葉を話す。

「原因は貴様だ小僧」


「はっ…!?何で俺何だよ!!」


「貴様は、あの裏切り者と手を組んだ猫にまんまと利用されていた。最初からランスロットの記憶を奪うのが目的だったんだろう」


ヘルタナ王国

円卓十二騎士団 団長 シー ランスロット

別名 【水龍の刃】

幾度となく、ヘルタナ王国を救ってきた王国最強の騎士で現段階では最もアーサー王に近い実力を持っている。

アーサー王はここ30年は病と戦っており王国から1歩も動けない。

アーサー王を封じた所で何も変わらない。

だから、現段階で全線に立っている最強の騎士の記憶を奪う事によりヘルタナ王国の円卓の騎士団の統率が保たれず王国を崩壊さしランスロットが居なくなった事によって魔法を現世に復活させるのだろう。


「クソ……全て貴様の責任だぞ小僧。」


「意味がわかんねぇよ……何で……俺の責任何だよ……何でだよ、何で……」


「俺はランスロット見たいにお人好しでは無い。貴様には王国を裏切った罰が必要だ。」


バンッ

後ろの病室の扉が開くとそこには数十名の傭兵が武装をして待機していた。

「この裏切り者を捕らえろ」


傭兵はたちまち信也を囲う。


「何でだよ……俺はただランスロットの為にっ!!」


「そのランスロットが貴様のおかげで記憶を失ったのだ。貴様は回りの足を引っ張り、尚まだ迷惑をかける気か?

おとなしく捕まったらどうだ」


「何で……何でだよ……何でいつも……」

手を握りしめ歯を噛み締める事しか出来なかった。

俺は突然この世界に呼び出されて、しかも魔法何か使えない。

使えるのは目の前で身内が死ぬタイムリープだけ。

やっと上手く行った思った。

真実にたどり着いたと思った……

やっぱりダメなのかな……


「じゃあな……裏切り者。」


次は処刑台でだ――



ガチャン

牢の鍵を閉められた。


冷たい地面にあぐらをかき、鎖に繋がれた手はかじかみ動かない。


どうせなら……早く……殺してくれ……


そんな思いが頭をよぎる。

逃げられない、苦しい、なら死ぬしか無い。

悔しい、辛い、何で……

いつもいつもはこんな事に……

俺が何したって言うんだよ……


トントントン

何者かがランタンを片手に階段を下りてくる音がした。


「信也君だよね……?」

年上のお姉さんの声が俺に聞こえる


少し顔を上げその女の顔を見る。

「貴方は……確か……」


「ベディヴィア。覚えててくれたんだね。」


「いつもそんな喋り方でしたっけ……」


「あれは仕事用でこっちが私の本心だから」


「それで……?何しに来たんですか……」


「貴方を助けに来たの」


「俺見たいな……裏切り者を……?」


「私は貴方が裏切ったとは考えてないの」

ベティヴィアは鍵をガシャリと開ける。

「さぁ、行きましょう。王国を東に抜ければ私の実家があるの。当分はそこに居ておけば安全よ。」


「もう……いいんです……俺何か…もう」


「何言ってるの!ランスロットが今の貴方を見れば何て声を掛けるか!人生なんか逃げたもの勝ちよ」

そう言いベティヴィアは俺の手を引っ張る。


俺は引っ張られるがままに牢屋を後にした。


牢屋を抜け、城下町の路地をひたすら走る。

「信也君……着いてこれてる…?」


「……はい……何とか……」


「元気出して!ランスロットなら王国を裏切ってでも友の事を助ける!私達は……」


そこまでだクズ共

大きな斧を肩に乗せ1人の男がそう言いこちらに歩いてくる。


「ボールス……」

ベティヴィアが息を飲む。


「裏切り者は殺しても構わないのでらしいからな。ぶっ殺してやるよゴミクズ共」


「信也君……無視して別の道から行きましょう」

そう言うとベティヴィアは俺の手を引っ張り走ってきた方とは逆方向に走り出した。

「無視出来るわけ……無いでしょ……」


「逃がすと思うかクズ」

ボールスは1歩前に出る。


するとボールスの後ろから何者かが斬りかかった。

ボールスは後ろを見ずともその瞬間に斧でガードをこなす。

鋼鉄の金属音が辺りに響く。

「あぁん?何だテメェ?」


「ランスロットさんならこうするハズっ!!」


はぁ……はぁ……はぁ…


「い、今のは……」


「パロミデスよ……あの子もランスロットの為、貴方の為に動いてるのよ……」


……後少しで……


はぁ……はぁ……はぁ……


何としても逃げ切らないと……信也くんを守らないと……ランスロットに怒こられちゃうから…


気付けば東の門前まで2人は走っていた。


「ここから真っ直ぐ行けば看板があるの。それを読めばきっと行けるわ。」


「ベティヴィアさんは……?」


「私はね……」

そう言い後ろを振り向く。

「出て来なさいよ。お姉さんが遊んで上げるから」


「えぇ……バレてたのぉ……はぁーい……」

子供の声がする。

突風が吹くとベティヴィアの前に1人の女の子が現れた。

「パーシヴァル……やっぱり……」

ベティヴィアはそう呟き信也に振り返る

「早く行って!!これは貴方の為何だから!無駄にしないで!!」


「……ッッ!!」


その場を振り返らずに全力で走った。

足がもげるかと思うくらいに

溢れでる汗をほとばしらせながら全力で……


走った。

逃げた。

逃げた。

逃げた



逃げた――

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