第4話 夢と現実の世界系
かつての呼び出された勇者達は皆魔王を殺すことなく自殺をしていった。
死の恐怖に怯えながら本来の力を発揮することもせずだ。
今回もそうなのか…
信也…
「お前が死んだ所で何も変わらない!頼むからその考えを…!」
「もうすぐ8時間が経つ。現実世界での朝が来る。俺は二度とこの世界に来ることは無い…!」
「この世界にだってッッ!死にたくない人は居る!!私は天使だ!何千年も生きてきた!この世界で何万人の死にも直面した!
家族…
友人…
悲しむ姿をたくさん見てきた!
もう…これ以上…見たく無いんだよ…
あの泣き声、叫び声、憎しみ、悲しみ、怒り
頼むから…私達の世界を救ってくれよ…」
そんな事…俺には出来ない
勇者として呼び出されたが俺には何の力も無い。何回も死んで何回も【タイムリープ】を使えばそれだけ身内が死ぬ事になる…!
誰がそんな事出来るんだよ…
世界の命運なんてそんな大きな事背負えるほど俺のリュックは大きくないよ…
どうしたら…いいんだよ…
「信也…頼むから死なないで…!私が何とかするから…もう一度…こっちに…戻ってきて…」
まぶたが重くなる。
ミーちゃんの声が途切れて良く聞こえなくなってきた。
現実世界に…戻るのか…
……
信也
現実世界に戻ったのか…
信也ッ!
起きなきゃ…
起きろ信也ッ!
今日で最後の朝か…
「信也起きろって!今何時だと思ってんの?土曜日だからって寝過ぎだろ」
布団をめくり上げられた。
「お母さん…お休み」
1度めくり上げられた布団をすかさずまたかぶった。
「おいこら信也ッ!」
どうすればいいんだよ…
現実世界での【大事な人の死】が条件って…
俺が死ねば解決だよな…
はぁ…
何か、この光景…昨日の朝みたいだな…
じーちゃんの事を思い出す…
ゴンッ!
「いってぇ!殴ること無いだろッ!」
「早く起きな。朝ごはん食べなよ。」
昨日もこんな感じで殴られたな…
俺はめくり上げられた布団をたたんで台所へと向かった。
現実世界に戻るとじーちゃんの事が思い出される。
俺に…自殺する勇気何てあるのだろうか…?
台所へと行く途中にも色々な事が頭に浮かんでいた。
向こうの世界のミーちゃんが言った事も頭には残っていた。
「頼むから…私達の世界を救ってくれよ…」
俺だってやれる事はやってやりたいよ…!
何の力も無い俺が何を出来るのかは知らないけど、それでもやってやりたいよ、、、
でも…無理だよ…
いつ死ぬか分からない向こうの世界で、生き返れるとはいえ大きすぎるリスクと代償を背負ってるんだよ…
やっぱり無理だ…
死なずにドラゴンを再度封印し魔王を倒すとか…
俺にはハードモード過ぎるんだよ…
何だろうこの感情…
ぐちゃぐちゃだよ…
「何ボーッとしてんの!早く食べなよ信也っ!」
「いただきます…」
目の前のホットケーキは何故か一口も喉に通らない…
あぁ…
今俺は酷い顔つきになってるんだろうな…
「どうしたんだい?そんな顔をして…体調でも悪いのかい…?」
「ちょっと…じーちゃんの事が…忘れられなくて…」
昨日亡くなったじーちゃんの事と向こうの世界の事が頭から離れない。
もし、このまま…向こうの世界に居続けて俺が死んでしまったら…
今、こうやって目の前に居る母も死んでしまうのだろう…
母はフォークで刺した食べかけのホットケーキを皿に戻して不思議そうな顔で言った。
「…?じーちゃんに何かあったのかい?」
母は俺を気遣っているのだろうか…?
そんな…
「そんな気遣い要らないよ…」
「気遣い…?何言ってんだ信也…?」
「何って!昨日じーちゃんが死んだだろ!?何で俺の口から言わせるんだよ…!」
俺は座っていた椅子から勢い良く立った。
「じーちゃんが死んだ…?夢でも見たんじゃねーの…?」
どうゆう事だ…?じーちゃんは昨日死んだ。
俺の目の前で。
「夢見てるのは母さんの方でしょ!?病院で息を引き取って…それで…」
パッとカレンダーの方に目をやった。
そこには「日曜日」と書かれていた。
「どうしたの…信也…?」
「ほら日曜日だって!昨日は土曜日でじーちゃんが死んで…」
母は笑いながら俺の方へと歩いて来た。
「あぁ…ごめんごめん、カレンダー間違えて1枚剥がしちまったんだよ」
「え…どうゆう事…?何を言ってるの…?」
母はポケットにあったスマートフォンを俺に向けて画面を見せながら言った。
「今日は」
目を疑った。
「そ…んな…何で…」
「土曜日だよ」
意味が分からない
意味が分からない
意味が分からない
どうゆう事だ
どうゆう事だ
昨日はじーちゃんが死んでそれで
でも母さんは今日は土曜だって…
何が…どうなって…
あぁ…
もう…
「訳わかんねぇ…」
バタッ
「ち、ちょっと!信也!?どうしたの!?」
――信也!!
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