第2話


「さてさて、自己紹介も済んだことだし」


「済んでねぇし、勝手に話しを進めんなって言ってんだろうが」

「コレで、とりあえず男の……ある意味ではどちらでも有効な優良物件を確保か」


 俺と同じなのか全身に寒気が走って、体が震えた。

「な、何考えてやがる」

 マコトは舌なめずりしなが「べつに」と答えるだけだった。


「しかし、こうも麗しき女性が多いというに…………彼ら二人だけとはな。人材を探すというのは一筋縄ではいかないようだな」

 大きくため息を吐き捨てる様に、マコトはワザとらしく肩を落とす仕草をした。


「おやおや、言うてくれるのぉ」


 幼い声ながらもババ臭い喋り方の、チビがやっと顔を出した。


「おせぇぞオババ」

「やっときた」


 空飛ぶ世界樹の根が張った大地、空挺園の管理者。

 ハイエルフ族で、名前はキキス。


 見た目はチビッなガキだが、なん前年と生きている。

 オババをチラッとマコトが盗み見た瞬間に、さらに落胆したため息をついた。


「お、お主。そうも露骨に」

 頬を引き攣らせながらも、笑顔を忘れずに誠に向き合っている。


「ロりババアは需要はあるだろうが……はぁ、額縁内に描かれた宝石ではな。アイドルには向かんな、今の貴方では此処の主が精いっぱいだろう」


「随分と上からモノを言うてくれるのぉ。年上に敬意を払わんのかえ?」

 オババは取り繕うのを止め、不機嫌だという感情むき出しにする。


「これは失礼、フロイライン」


 何故か鼻に付く感じが抜けないながらも、マコトがきちんと挨拶を返した。


「主の使う言葉は、アタシらには良く解らないモノが多い様だね」

 やれやれとオババが軽く頭を掻きながら、疲れた様子が見て取れる。


「それで、アンタは何もんさね」

「私はマコト。愛と言う名の世界的な野望を夢見ている若輩者でございますよ」


 なんでコイツは喋るたびに、大きな身振りをしながら喋る。


「す、少しは落ち着いて話しが出来んのかね」


「ははは、私の事を聞いたのは貴方ではありませんか。私が夢や野望を語るのに何一つ偽る事無く、ありのまま全力でお答えしているのに……随分と小さい心をお持ちの様ですね」


 バッバッ、クネクネと無駄な動きをして、最後は顔に手を当てワザとらしくため息をつきながら、無駄にポーズを決めてこちらをチラ見して言う。

 此処に居るであろう全員が、ちょっとだけイラッとしたと俺は思う。


「コホン、ではどういった用件で此処に来なすった」

「……此処に来た理由ですか」

「そうじゃ、此処は簡単に出入りできる場所じゃあないんでだよ」


 ここは過去に起きた世界大対戦の折に隔離された場所だ。

 住んでいる者達も、色々と普通じゃない種族の集まりでもある。


「ふふ、きっと神の導きでしょうね」

「なに?」


「別に此処を目指していた訳ではないので、理由を聞かれても困ってしまいます」


「では、いったい――」

「ただ、後付けで良い理由なら、きっと彼らに会うために此処へ召喚されたのでしょうね。たった二人だけですがすんばらしぃ~原石という名の可能性を秘めた子達に出会えたのですから、本当に神に感謝しなくては」


 俺達を無視して、天へ向かって感謝の念を込めて祈ってやがる。

 瞳からはキラキラと今にも光の柱が立ちそうなほどだ。



「さてさて、ではそろそろ本当に自己紹介といますか? 私という存在を見定めてくださって結構ですよ。私は、彼らに魅せなければならない『偶像』アイドルという新たなる可能性をね」



 いやに色っぽく、妖艶に微笑み今まで対話していたはずのオババではなく、俺達を真っすぐに見つめながら。



 ただ、普通に喋っているはずなのに妙に通る声と、心に響く声が周りの雑音をかき消した。





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