スカイアウトレインボー
楠木黒猫きな粉
星巡る銀河
空を飛んだ。一瞬の時であり永劫の時であった。大切なモノを抱きしめながら刹那の永遠に手を伸ばす。続け続けと願う手のひらは弧を描き身体と共に落下する。地を踏み締める足が愛おしい。空を眺める目が喜色に染まる。滲んだ意識はどこまでも飛翔を繰り返す。
雨が降りしきる空に傘もささず踊りまわる。子供のように無垢なフリをしてまわる。どうすればいいと心臓が問いただす。鼓動は身体中を巡り世界を伝う。命を紡ぐ音が雨をかき消し激しく叫ぶ。まだ足りない、まだ伸ばせ。すでに足はもつれもつれだった。だからなんだ。それは理由になり得るのか。そんなことはない。激情が無感動に突き放す。感動と羨望と事情と感情が星のように散らばっていく。そんなことだからと何度文句を言われただろうか。こんなもんだから理想を描いて手を伸ばすのだ。へし折れた熱情を太陽のように見上げることは悪だろうか。いいや違う。これで良いのだと言い張れる。星が星を見つめる様に俺が俺を照らすのに理由はないんだ。自分の道を自分で示すことに何ら恐怖はない。足下から崩れた自信が刃を持って自身を刺そうとも歩いて行ける。ガラスの天井で星が歌う様に雨は俺を見上げ落ちていく。焦点がすでに合っていない粒が無様に開いた手のひらを伝う。冷める。醒める。覚める。
夢からでも理想からでも現実からでもない。無情に見下げる馬鹿どもが草に落ちる雫を妬む。羨んだ。欠けらの情緒もない脈絡もないこの世界が一本の草を羨んだ。ざまぁみやがれと笑う。諦めた足はもつれたことも忘れて動き出す。愚かしくも望みであろうと動く。かくあれと理想を言う傀儡共め。口から吐かれる悪態はビルの合間を縫って影になり血に沈む。虹は未来への架け橋らしい。馬鹿が。そんなわけがあるか。あれは空からの爪弾き物の残骸だ。故に綺麗な物なんだ。それだけでアレに意味が生まれる。だから星が歌う。
俺はもう一度馬鹿を笑い手を伸ばす。
銀河は星という血潮を感じて生きている。
俺は心臓が歌う鼓動で生きている。
何一つ変わらない。どこもかしこも歪な存在だ。だから素晴らしい。
だから俺は雨に塗れて踊ってやったのさ。
スカイアウトレインボー 楠木黒猫きな粉 @sepuroeleven
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます