滑り込みアウト!! ~親父、どうして入院したのか分かるか?

ロックウェル・イワイ

第1話 真夜中の着信

 北海道の冬の夜はロマンチックではあるが、氷点下の入口でもある。

 今夜は珍しく晴れている。空気はひんやりして、どこまでも見渡せるほど澄み渡っていた。

 

 土曜日だったが、日中の除雪で疲労が溜まっていたので夜更かしせず、11時前に床に着いた。布団が冷たく、しばらく全身を抱きかかえて温めた。

 気が付けば眠りに落ちていた。


 深い眠りに身を委ね、その快楽に貪り浸っていたのも束の間、頭上でひかり電話の子機がけたたましく喚き始めた。


 右手で検討を付けてまさぐり、受話器を引き寄せた。ふと、左に視線をやると妻の真美子が心配そうにこっちを見ていた。

 通話ボタンを押し下げ、受話口を耳に当てるとお袋の震えた声が聞こえてきた。

 目覚まし時計の針は深夜1時過ぎを指していた。


「もしもし」

(兄ちゃん?)

「うん。どうした?」

 嫌な予感しかしなかったが、そうとしか訊きようがなかった。

(お父さんがね……)

「うん」

(交通事故に遭ってね……)

「うん」

(病院に運ばれたって、警察から連絡が来た)

「容態は?」

「意識不明の重体だって……」

 泣いていた。

「病院はどこだ?」

「道央病院の救命救急センターだって……」

 自宅から車で1時間ぐらいの所にある札幌の市立病院だ。

「分かった。これからすぐ向かう」

(私も二郎に連れて行ってもらうから……)

 弟の二郎は両親と同居していた。


 電話を切り、急いで寝室の隣にあるウォークインクローゼットに入り、着替えを始めた。

「私はうちの両親と病院へ向かうから先に行ってあげて」

 真美子が受話器を手にしながら俺に言った。

「迷惑かけて悪いな」

 それだけ言い残して、俺は寝ぼけまなこのまま自宅を後にした。

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