童話転生 シンデレラ・トワイライト
真偽ゆらり
灰被りはもうやめだ!
私達一家は、舞踏会には行かない。
私が転生したのは、童話シンデレラのような世界だった。
ような、なのは魔法が使えたりとか童話に無い設定があったから。
シンデレラのような世界って気づいたのは、母が亡くなって、継母が来て、父が亡くなって、継母や義姉妹が少し意地悪になった事。それに加えて、ある日暖炉の掃除を言いつけられて、灰被りになってもいいよう頭巾を渡された時だった。
灰被りって、シンデレラの意味だったはず。
前世で、自由研究に童話を題材にしたいたおかげで、知っていたからその結論に至った。
暖炉の掃除なんて魔法を使って、パパッと終わらせて継母に問い詰めた。
父が亡くなる以前に接してくれた時の優しさが嘘だとは思えなかったから。
私の真剣な目を見て観念した継母は、私にこの国のある伝承を教えてくれた。
それは、童話シンデレラだった。
この国の王妃は、舞踏会で選ばれる。
歴代の王妃の中には、童話シンデレラのように大逆転で王妃に選ばれた人が数多くいた。
それ故に、似たような境遇の娘ができた場合にはあえていじめる事で、王妃に選ばれ幸せになる事を願う暗黙の習慣があるのだとか……。
私の為だった。
でも、それは幸せの押し付けだ。
私の幸せは、私が決める。
私は継母も義姉も義妹も大好きだ。
最愛の家族だと思ってる。
たとえ、血が繋がってなくてもいい。
私の幸せには三人が必要だ。
会ったことも無い王子など、知った事ではない。
継母に私の想いをぶつけた。
彼女は目に大粒の涙を浮かべ、私を抱きしめてくれた。そっと抱き返すと、彼女は泣いてしまった。
彼女が泣き止むのを待って、一つ質問する。
歴代のシンデレラストーリーの階段を駆けた王妃達の家族の結末を。
私の知っている童話シンデレラの話では、王子と結婚後、虐めていたとされる継母や義姉妹は焼けた鉄の靴を履かされ死ぬまで踊り続けさせられ、カラスに目玉を突かれるという悲惨な結末を迎える。
帰ってきた答えは、『覚悟の上』だった。
やはり、悲惨な結末を迎えるようだ。
それを覚悟の上で私の幸せを願ってくれていたなんて、今度は私が泣いて、継母を——お母さんを抱きしめた。
いつの間にか来ていた義姉妹、いいえ私の姉妹達が私達を抱きしめて慰めてくれた。
私達は話し合った。
誰か一人を幸せにするのではない。
私達全員が幸せになる道を一緒に探そうと。
この日私達は真の家族になったのだと思う。
幸せの日々を送る私達のもとに城から舞踏会への招待状が届く。
王妃を決める舞踏会の招待状だった。
私達は不参加を決め、返事を出した。
何故なら、王子は私達全員の好みではないから。
顔は悪くないんだろうけど、生理的に受け付けないと家族全員が口を揃えて言った。
王子の成人記念パレードで、王子を見た時に家族全員が同じ感想を持ったのだ。
あれと結婚しても私達は幸せにはなれないと。
あの時、王子と目が合いウインクされたが、直ぐに路地裏に入って吐いた。あれは無い。
舞踏会は開催されたが王妃が決まることは無かったらしい。
再び我が家に招待状が届く。
当然、不参加だ。
それが、五、六回続いてから、また招待状が届いた。内容が少し変わっていた。
私以外の者全員が参加しなければ処罰すると書かれていた。
これでは招待状ではなく召喚状ではないか。
止むを得ず、参加することになった。私以外。
舞踏会の日がやってきた。
私は家族達の無事を願いながら見送る。
どうか王子の目に止まりませんように。
もうそろそろ舞踏会が始まる時間だろうか。
家で一人虚空を見つめながらぼーっとしていると人の気配がした。家族のものではない。
愛剣を背に隠し、気配のする方へ向かう。
「ああ、置いてきぼりにされたのかい? 可哀想なシンデレラ。出ておいで私が王子様のもとへ連れて行ってあげよう」
宮廷魔導士の制服を着た男がいた。
こいつ……何を言っているんだ。
理解できなかった。
置いてきぼりにされた、だと? こいつ、私が招待状を読んでないと思っているのは間違いない。
伝承にある魔法使いを模しているのだろう。
何かおかしい。
「ははは、私は王宮の人間だ。怪しくないから出ておいでシンデレラ」
男はそう言いながら玄関の扉へ近づいてくる。
男がドアノブに手を伸ばした瞬間に、扉を勢いよく開き男を怯ませる。
その隙を突き、抜剣。
男の杖を持つ腕を切り飛ばす。
両膝を貫き、逃げ道を断つ。
「ガァ……、貴様何を……」
男の喉元に剣を突きつけ要求する。
「全て話せ」
男は抵抗しようとするが、喉に剣を押し付け、血が流れるとアッサリと白状した。
王子が私を王妃に望んでいると。
そして、王子は伝承に則り、家族から私を助け出すようにして虜するつもりだと。
ふざけるな。
ふざけるな!
ふざけるな!!
私から幸せを奪うだと……。
これは、直接話をつける必要があるな。
複数の人の気配……新手か。
泣き喚く男の首を跳ね、周囲を探る。
数は六人。
「隠れているのは分かっている。出てこい! 出てこないならこちらから行くぞ!
隆起した地面が槍となり、潜む六人を串刺しにする。一人息があるな。
生き残りを拷問し、情報を得る。
まさか、そういうことだったとわな……。
「来い!
召喚魔法を使い、鎧ドレスに着替え、八本足の馬に跨り、街を駆け上がる。
「
城門を吹き飛ばし場内へ侵入、馬を飛び降り駆け上がる。
「十字烈波!」
舞踏会の会場の扉を十字に切り裂き、掌底で吹き飛ばす。
会場内で悲鳴があがる。
見つけた家族にアイコンタクトをとる。
「おお、シンデレラ! よくき……た……な?
なぜ鎧ドレス? 武闘会では無いぞ」
武闘会だと? まさかこいつも転生者か? だがどうでもいいことだ。こいつは——。
「聞いたぞ、クソ王子。いや、外道が……。伝承に則って私を手に入れようと企み、私の母を暗殺し、父も殺したんだってな……。テメェは絶対に許さない、輪廻転生もできないほどに消しとばす」
「おい、早く人質を連れてこい! 早くしろ!」
王子の声に応える兵士はいなかった。
「あら〜人質って私達のことかしら〜。私達は人質には適さないわよ〜。捉えられないんですから」
歩みよって来たのは私の家族達だった。捉えようとした兵士達を血祭りにあげながら歩いてくる。
良かった無事だった。
「何故だ、クソ! 俺は王子だぞ! どうして思い通りにならない! 第二の人生でハーレムを築くはずだったのに……」
転生者で間違いないようね、でも同郷のよしみとか無いわよ。人の幸せブチ壊したんだから、自分の幸せをブチ壊される覚悟はできてるはずよね。
「覚悟する必要は無いわ、覚悟しようとなかろうとあんたの運命は変わらないもの」
四肢を切り落とし、両肩を転がっていた槍で突き刺し壁に貼り付けにする。
王子は言葉にならない悲鳴あげ、顔をグシャグシャに歪めている。いい気味だ。
四肢を切り落とした際に回復魔法をかけているので、失血死で逃げることはできない。
あとは、輪廻転生できないよう止めを刺すだけ。
「みんな協力してくれる? 一緒にこのクズへ止めを刺しましょう」
家族はうなずいて答えてくれた。
「「「「
王子は消滅した。王子用の宮殿ごと。
まだできたばかりで中に人がいなかったので問題は無い。
後ろからは歓声が聞こえる。どうやら、相当な嫌われ者だったようだ。
「さぁ、帰ろっか」
家族を助け、ついでに復讐も果たした私はスッキリした気持ちで家に帰るのだった。
最愛の家族を連れて。
この国の今後はどうでもいいが、家族と平穏に暮らす為に荒れてもらっては困る。
超優秀だが女性故に、王位継承権の無い王女が王位を継げるようになんとかしました。
そしてこの国は女王を中心とした国家となり、長きにわたる繁栄を享受するのでした。
めでたしめでたし。
童話転生 シンデレラ・トワイライト 真偽ゆらり @Silvanote
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます