第12話 感情と予感
「うーん、好きな人ねー今は仕事で手一杯で考えたこともなかったわ。でも倉田さんの年の頃は恋してましたね」
(先生も恋してたんだ。いや、そうだよね!こんなに優しくて可愛ければ恋人の1人や2人いるよね)
私はなんだか清々しく答えてくれた先生に少し恥ずかしく、少し申し訳なく思えた。「まぁそんなこといいでしょ」と笑顔で答えた先生はなんだか少し悲しんでいるように思えた。
「夜は短し、恋せよ乙女!青春は短いぞ!若者よ!」
そう言い切った先生はあまりにも自分よりも沢山の経験をしてきたと思われた。
「ありがとう、先生」
私は最高の笑顔で答える。そんなに感謝しなくてもーと先生は少したじろいでいた。
*
その日の夜私はまた夢を見た。
(あぁ、温かい、穏やかな、心地よさ、)
「ちょっと!未来さん!何を寝ぼけているんですか?」
そこにいたのは黒髪のよく似合う可愛らしい女の子。
(そっか、私春の陽気に寝込んでいたんだ)
その女の子は手をスッと私に差し出すとニコリと笑った。
「さ、みんなのところにいきましょう?」
私はその手を掴み2人で野原をかけた。途中女の子が転びそうになりそれを助けようとした私が転けてしまったが2人は大きく笑いその痛みを吹き飛ばす。なんだか懐かしい思いが私を駆け巡った。
「未来さんは、未来さんは私の事どう、、」
最後の方がよく聞こえなかった。もう一度聞き返すと女の子は頬を赤らめ走りだす。その先には他の女の子たちがいた。
(いま、なんて言おうと、、)
私は気づいていたのかもしれない。でも私は何も言わなかった。いや、言えなかった。今も、昔も。
(昔も?これは夢、いや、記憶、、なのかな)
そこでけたたましく鳴り響くベルの音。朝の訪れを知らせる時計の音だった。
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