第2話『ここは』
「とまぁ、あんな事があったんだけど…」
目の前に広がる広大な草原をみて、私はため息をついた。
さっきまで夕暮れ時の商店街に居たはずなのに、目の前がフェードアウトしたと思ったら、次は太陽が高く登る草原に居たのだから。
「ここどこだろ。」
とりあえず、ポケットに入れっぱだったスマホを取り出し、時刻を確認してからマップアプリを開く。時刻は午後13時24分。
きっと、あの声は気のせいだったんだ。仮にレイとやらが言っていたことが本当ならば、私は状況的に俗に言う異世界転生というものをしたことになるだろう。だけど何も変わっていない。スマホも通じるし、マップアプリだって開けた。
「現在地、と。」
どうせ、無意識に近くにある自然公園にでも歩いて来てたのだろう。そう思い検索が終わったマップを見る。
『 』
そのマップには何も写っていなかった。
きっと、きっと…これは不具合、そう!不具合!
不具合だと思いもう一度検索し直す。
『 』
またもや何も出ない。
おかしい。
「…電波が悪いのかな。」
そう思い、他のネットを使うアプリを開く。
だが、その思いは虚しくそっちは普通に開けた。
「え…なんで…?」
もう一度マップアプリを開き、検索し直す。
『 』
何も出ない。
「…だ、黙ってここにいるのはよくないよね…うん…歩こう…」
そう言って顔を上げた瞬間、私は絶句した。
何故なら目の前に、さっきまでそこにいなかったはずの少女が居たからだ。
しかもその少女は普通とは異なり、猫のような耳が頭から生えており、規則正しく揺れる長い尻尾のようなものも生えていた。
「ねぇねぇ、あなた、だぁれ?♪」
少女はそう問いかけてきた。
先程の出来事で混乱して居たのだろう、私は少し上擦った声で、
「三端、空羽…」
と答えた。
すると彼女は、
「そらは?よく分かんないけどいいお名前だね♪あなたは人間なの?」
『人間なの?』とはどういう意味なのか。彼女は人間ではないのか。山ほど聞きたいことがあったけどとりあえず質問に答えることにした。
「うん。」
「へぇ、私ねサクラっていうの♪おばあちゃんがつけてくれたんだけどサクラってどんな意味か知らないんだ♪」
「サクラ…」
もし『仮に』ここが異世界だとしたら、この世界にも桜があるのか。少し興味が湧いた。でもサクラは桜のことを知らなそうだし、あるのか無いのか今は分からない。この話は一旦保留して、色々聞くことにした。
どうやらこの世界は私のことを嫌ってるようだ。 檸檬 @Remon_0406
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます