どんでん返しと先輩と後輩くん

ジュオミシキ

第1話

「後輩くん、君は“どんでん返し”を知っているかい?」

「えぇ、まぁ。“ま、まさかお前が真犯人だったのかー”ってやつですよね」

「恐ろしく棒読みだけど、確かにそのどんでん返しだよ」

「僕、あれをずっとでんどん返しだと思ってたんですよ」

「やっぱり後輩くんは後輩くんだね」

「それでどうしたんですか?ミステリー小説でも読んだんですか?」

「いや、別にそういうわけでもないんだけど……」

「?なんだか今日の先輩はいつもよりあれですね。あの……そう、もどかしいですね」

「大人しいと言いたいのかい?いや、もどかしいでも間違いではないかな?」

「結局どっちなんですか」

「まぁ、大人しいと言っておこうか」

「はぁ。それで、なぜ急にどんでん返しの話題が出たんですか?」

「それは……」

「もしかして何か言いにくいことなんですか?」

「そうだね。少し……」

「でもちゃっちゃと言ってください。僕も用事があるんで」

「後輩くんは鬼か。もう少し優しさというものを持ったらどうだい?」

「大丈夫です。こんな事先輩にしか言いませんよ」

「いやな特別扱いだね」

「すいません」

「でも自分が後輩くんにとって特別なんだと少し嬉しくなってしまう自分が情けないよ」

「先輩はたまにこっぱずかしい事を平気で言いますね」

「後輩くんにだけだよ」

「うわぁ……。確かにこれはちょっと嬉しいかもしれません」

「それは良かった」

「先輩」

「?」

「どうですか?少しは緊張も解れましたか?」

「…………後輩くん、君は本当にずるいね」

「先輩ほどじゃないですよ」

「はぁ………。じゃあ、もう言ってしまおうか」

「はい」

「後輩くん」

「はい」



「私たちはね……姉弟、らしいんだ」

「…………姉…、弟………?」





「驚くのも無理はない。私もつい先日知ったばかりなんだ」

「………」

「色々あってね、親からその事を伝えられたんだ」

「………」

「私と君の苗字は違うけれど、どうやら君は家から養子に出されたみたいなんだ」

「………」


「理由は……教えてくれなかったよ」

「私も驚いたよ。まさか君が弟だったなんてね」

「正直、もっと気持ちの整理がついてからにしたかったんだけれど」

「とても自分じゃ抱えきれなくてね……」

「もういっそ言ってしまおうかと思ってしまったんだ」

「本当にすまない」




「僕も、先輩に言おうと思っていたことがあるんです」

「君も……?」

「はい。実は僕、親から聞いてたんです。僕には姉がいるって」

「そうか、後輩くんも………」

「……血の繋がっていない姉が」

「え……⁉︎………血の、繋がっていない……?」

「前から気になってはいたんです。誰なんだろうって。でも、先輩の話を聞いて分かりました。先輩が、僕の姉だってことが」

「そ、そんな……でも、そんな……」

「詳しくは僕も聞いてはいません。なんだか複雑そうだったので」

「血が、繋がっていない?」

「はい」

「じゃ、じゃあ……」

「?」

「これまで私が悩んでいたのはなんだったんだーーーーー!」

「えぇ………?」

「はぁ、そうか。でも、それなら……」

「姉さんって呼んだほうがいいですか?」

「ははっ、冗談を」

「じゃあ、彼女さんって呼んだほうがいいですか?」

「……先輩のままでいいよ」




「でもまぁ、実の姉弟じゃなくて良かったですね」

「そうだね、おかげでこうしてくっついていられるよ」

「先輩はなんだか妙に機嫌がいいですね」

「そりゃあ、なんの気兼ねもなく後輩くんと一緒にいられるからね」

「……それは、良かったです」

「あ、後輩くん照れてる」

「うるさいですよ、姉さん」

「あ、姉さんって言ったね。じゃあ私も弟くんって呼ぼうかな」

「やめてください」

「いいじゃないかいいじゃないか………」







「たのもーーー!」

「「⁉︎」」

「「え〜と、どちら様で?」」

「僕?僕は、君のお姉さんだよ!」

「「え」」

「会いたかったぞ!弟よーー!」

「「ええええーーーーー!!」」

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