ワケあり専業自宅警備員と平行世界
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第1話 「これから、質問を始めます。」
目が覚めるといつも通りの日常だった。旦那の
十五時四十二分。タバコを吸いにベランダに出た、ふと、おかしなことに気がついた。
「誰も、いない……」
いつもこの時間、ベランダに出ると近所の公園とスーパーが見えるので、子供たちが遊んでいたり夕食の食材を買うためにスーパーに来た客の車が沢山見えるのだが……。
今日は人は一人も見かけないどころか車も見当たらない。
珍しいこともあるものだと思い、もう夕方近いが朝の薬を飲んだ。よし、これで運転できる。
今日は
ある。よし、今日は
とりあえず隣の市の峠道でも走りに行こうと思った。
あたしは着替えて髪を束ね、お気に入りのコートを羽織り、愛車であるラテちゃん(黄緑色のムーブラテ)の鍵を持って外に出た。
なんだかやけに静かな気がした。いつも家から県道に出る細道は、信号がないため五分で出れたらマシな方だと言うのに、全く車がいない。
寝ている間に災害があったのならもっと街は崩壊しているだろうし、スマホに警告が鳴るようになってあるから違う。なんなんだ?
そうして一時間程ドライブを楽しんで、今から帰ったら外に出ていたのがバレると気付き、信号待ちの時間に誤魔化さずに謝ろうと
「ようこそ、これからいくつかの質問をします。あなたの平行世界を作る大事な質問です、しっかりと考えて答えてください。」
こんなゲームダウンロードしたか?と疑問に思ったが、とりあえず近くのコンビニに駐車し、もう一度スマホを見てみた。
それより気になるのはコンビニは明るく、商品もあるのに店員が一人も見当たらないこと。疑問に思いながらも、スマホの画面の方が気になるので操作する。
「まず、あなたは
はい、いいえの表示がある。
どうしてあたしの名前を知っているんだろう、疑問は増えていくばかりだが、【はい】を選択した。
「次に、平行世界では現実と同じ人物、地名、団体を存在させますか?この選択で後の質問内容は変わってきます。」
またもや、はい、いいえの表示が出た。
この、「平行世界」というのが何かわからないが、人がいないのは寂しい。理由があってあたしは人と関わること、一人で外に出ることを禁じられている。
しかし今みたいに旦那の
「それでは、少し説明をさせていただきます。この平行世界には現在あなた、
意味がわからない、わからなすさぎてこれは夢だと分かった気になった。明晰夢と言っただろうか、自分の思い通りに夢を操れる。そんなことができる人が存在すると聞いたことはあるし、実際夢を見ている時に、これは夢だ、と気付くことはある。
しかし今回の夢は妙にリアル過ぎてなかなか気づかなかったな……そう思いながらスマホの画面に目を戻し、【次へ】をタップした。
「では質問です。平行世界には、先程説明しました人物、仲間は必要ですか?」
うーん、明晰夢ってこうやって自分で夢を決めれるものなのだろうか?あたしはこの平行世界と呼ばれる空間を明晰夢だと思って回答する。
回答は【はい】にした。理由は簡単で、夢の中でファンタジーな出来事があったのなら仲間がいなければ楽しくないと思ったからだ。
「それでは次です。
あたしは驚きを隠せなかった。自分の障害と病気のことを知っている、やはりこれは自分の作り出した夢だ。そう思うしか無かった。
あたしは十五歳の時に発達障害が診断されてから、自分を責める性格が酷くなり双極性障害と重度の不眠症になった。
しかし、この障害や病気がなくなった自分は自分なのか?そう思うと怖くなり【はい】を選択していた。
「では平行世界についての質問は終わりになります。今後はこちらから連絡をすることは出来ますが、
【終了】を押すと驚いた、さっきまでの静けさが嘘のように、コンビニの駐車場には車がとまっている。
中で飲食をしている人もいる、店員もいれば、目の前の県道も車が行き交う、夢の中が現実そのもののようになっていたのだ。
呆然としている時、遊兎ゆうとにメールを送るのを忘れていたことに気付いて急いで文字を打っていた。直ぐに返事は来て、以外にも今日の
「暗くならないうちに帰っておいでよ」
そうメールが返ってきた。夢の中だからだろうか?
そのまま少しドライブを続けて自分の住む
前はよく
喫煙席は人が多い、最近はどこも禁煙ばかりだからこうやって喫煙できるお店を探してる人をよく見かける。
あずきのコーヒーというなんとも味の想像出来ないドリンクを頼むと、ふとこちらをじっと見つめている赤い髪が特徴的なお姉さんと目が合った。
すぐに目を逸らしたが向こうはいつまでもこっちを見ていて怖くなってきた。あすきのコーヒーが届いた時、そのお姉さんは自分のドリンクを持ってこちらの席に座った。
「あ、えっと……あの、あなたも……平行世界の人ですよね?」
一瞬頭がフリーズしたが、そういえばここは夢の中だったと思い出して「そうと言えばそうなのかもしれません」と答えると、赤い髪のお姉さんは嬉しそうな顔をしていた。
「あ、私は
仲間、そういえば自分も【はい】を選択したことを思い出した。
数日前と言っていたので話を聞くと、その日から眠るとリアルすぎて気味の悪いくらいの夢を見るようになって、スマホをみたら例の【質問】が始まったらしい。
なんと回答したのかと聞くと、あたしと全く同じ回答だった。
そしてこの平行世界と呼ばれる空間、ここで使ったお金は現実世界では減らないけれど、次の日また眠って平行世界に来たらきちんと減っているという。
同様に、現実世界で使ったものが平行世界で減る、無くなるということは無いようだ。
「要するに……ここはあたしの明晰夢じゃなくて、パラレルワールド、ってこと……?」
少し黙り込んでから、
加波
「あ、そういえば、私のこと
特に危害を加えてくる様子もないので、せっかくだしと家に招待することにした。名前を教えると
家に着くと、
確かにもう時間は六時二十八分、遅くなったことと、外に出たことを謝ったが
晩御飯の用意をしていたんだけど、お客さんが来てくれたなら買い足しに行かなきゃ。
そう言って出かけようとするので、着いていくことにした、
時刻は既に九時をまわっていた。
なので
「現実に戻る時間だよ!ただ仲間がいる時に、仲間だけが戻るなんてこと初めてだからどうしよう、わからない……そうだ!これ持っていって!」
手に握りしめられた1枚のメモ、そこであたしの記憶は途絶え、真っ暗闇の中にいた。
布団に入っていることがわかると、ゆっくりと目を開けた。いつも通りの家の中だ、そりゃそうだ、この布団で寝ていたのだから、ただ、
でも手には初春に渡された1枚のメモがあった。広げてみると電話番号が書かれており、ショートメール送ってね!と、走り書きされていた。
キッチンから物音がして、
「あ、おはよ。
現実、なのだろうか。
自分ではそんな記憶ないのだが、時々自分のことを
自分はあたしは
この時時刻は十九時五十八分、ご飯を食べたら十時までテレビをみるか動画サイトをみてダラダラ過ごし、布団に入る。
だが、元々不眠症で眠りにつくのが遅いうえに今日はついさっきまで寝ていたのだから、寝れずにまた嫌な事ばかり考えて、思い出して、泣いているうちに朝が来るのかと思うと憂鬱だった。
だが、睡眠前の薬を飲んで布団に入ると、あたしはすぐに眠りについていた。そしてまた、平行世界で
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