4話 令嬢は……!?
今、私は何を言ったのだろうか?
なぜだか知らないけれども、全身が燃え上がったかのように熱い。
アルベルンが驚いたような表情でこちらを見ている。落ち着け、私!
「ちょっとした、冗談の話ですのよ?少し痩せたからって私をだしぬこうなんて、そうは、いきませんからね?」
口の中がカラカラになってしまっている。これ以上の話し合いはやめておきたい。もう枯れたような声しか出せそうにないからだ。
「……まったくもって、前の私はどれだけ阿呆だったんでしょうかね。この話は、円満破断ということにしておいてください。でも……」
でも?突然にアルベルンが口をつぐんでしまうため、ついその言葉の続きを聞きたくなってしまう。
だが、運が良いのか悪いのかカラカラになってしまった喉はこれ以上の詮索を一切させないほどの渇きだったために、黙ってアルベルンを見ているしかなかった。
「すみません、忘れてください。今日はわざわざお時間をありがとうございました」
爽やかに微笑みかけたアルベルンにはもう昔の名残なんてものは残っていなかった。
ただ、そこから回れ右をして去っていくのは、私好みのイケメンだったということ。後ろ姿すら、かっこよく私の目には映ってしまうのだった。
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「それで、ずっと黙って見ていたっていうの?」
「仕方がないじゃないですか!あの状況、あの雰囲気でリュリス様だったら声を掛けられましたか?」
「それは……!」
アルベルン侯爵よりもワンテンポ遅れて私を発見したサミヤはどうやら事の一部始終をしっかりと目撃していたらしい。
絶対に婚約破棄してやる!と意気揚々に挑んでいった相手に惑わされ、たじろぐ私を見てサミヤはどう思っただろうか……。
「そりゃぁ、メシウマーくらいには思いましたけど……」
「サミヤ、あなたそんな性格でよく周りからウザいって言われたりしてない?」
「十年もリュリス様の従者をやらせていただいていますが、そうおっしゃられたのは初めてかと……」
確かに私も初めてウザいと思ったよサミヤには……。
それにしたって、十年も主従関係で以心伝心しているとはいえ、まさか言葉にすらしていない疑問をそのまま伝わっているとは思っていなかった……。
「そりゃぁ、伊達にリュリス様の従者を十年やってきた訳ではないですから……」
「今は考えを読み取るなぁ!!」
まったく、ひやひやするメイドである。
おかげでだいぶリラックスは出来たのだが、そうするとまた本題に戻ってしまう。
私は、どうしてアルベルンの事を考えてしまっているのだろう?
大っ嫌いだったはずなのに……。
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