婚約破棄しようとした屑侯爵がやたらとイケメンなのですが。
夏樹
1話 令嬢は婚約を破棄したい!
私は大きく深くため息をついた。
なぜ私がこんな目に合わなければならないのだろうか。
あの屑侯爵さえいなければ、もっと自由な暮らしができたはずなのに……。
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事の発端は、唐突に親から伝えられた婚約の話だった。
「リュリス、あなたはアルベルン侯爵と結婚することになるわ。まだまだ先の話だけれども、あなたにとっても悪い話じゃないはずよ」
まるでおめでたいことのように話す母親だったが、私にとってはとってもとっても悪い話だった。
もちろん、こういった婚約の話というのはよくある話であり、17歳にもなって彼氏の一人も見つけられない私にとっては婚約の話自体は悪いものではない。
だが、その相手がアルベルン侯爵ともなると話は別だ。
相手の噂は様々なところから聞く。
権力を使って一般市民の女の子をとっかえひっかえして遊んでいたとか、お金に関しても意地汚くだまし取られたとか、ダメ男を極めた人間とか。
私個人としてもできるだけ関わり合いをしないようにしてきたが、顔はどう見たって豚にしか見えないしとても不潔な感じがする。当然のごとくの上から目線だったので一蹴してやったのだが、こうかはいまひとつのようだ……。
そんな噂があるのを知っていて婚約してくるのかはたまた知らずに婚約したのかは分からないが、とりあえず親が超無責任なことは分かった。
親の前で「アルベルンは嫌だ!」と言ってもおそらく何も進展がない気がしたので親には言わなかったが、自分の部屋でメイドに思いっきり泣きついた。
「あの侯爵は良い噂は聞きませんからね……。なぜ婚約の矛先がリュリス様に向いてしまったのかは分かりませんが、私としても婚約は破棄していただきたいですね」
このメイドの名前はサミヤ。歳は六つしか違わないが、十年以上私のお世話をしてくれている頼れるメイドであった。
そもそもあまり人を信用しない私が心を開いている数少ない人間のうちの一人である。
「この際、スパッと婚約破棄してみてはいかがですか?あの侯爵の事です、生半可な覚悟では破棄できないでしょうけど、リュリス様ならおそらく大丈夫でしょう」
「それは、褒められていると捉えていいの?」
「当然です。はっきりとものが言えることはとてもいいことだと思いますよ」
私についているメイドがサミヤでよかったと心から思う。
次にアルベルンが来たときは、しっかりはっきりと婚約破棄する旨を伝えよう。
私だったら大丈夫……。アルベルンの悪い噂をかき集め、婚約破棄する理由を着々とまとめていった。
そして、遂に私とアルベルン侯爵が対面して話をする日がやってくる。
絶対にやってやる、婚約破棄はすぐそこだ……。
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