キョンシーって死語なんだろうか、世代じゃないけどテ○テ○が死ぬほど可愛いので似たような話を書く。

小鳥 薊

さあ、道をあけろ

 中国湖南フーナン湘西シャンシーの片田舎。

 食事を終えた宵闇で、涼みに歩く人もあり。

 火の用心の警告を、無視する大人は博打に興じ、子どもは庭で遊んでいる。

 そんな中、どこからともなく鈴の音が聞こえてくる。


――チリーン、チリーン。


 高い音の鈴が鳴る。


――トン。


――トン。


――トン。



 月が照らした青白い壁には、丸太が跳ねるように動く影が映し出される。


――チリーン、チリーン。


 その音を聞いた大人達は慌てて荷物をまとめ、遊ぶ子どもを抱えて家に錠を掛け閉じ籠った。



「さあ、道をあけろー」


――トン、トン、トン。


「キョンシー様のお通りだー」


――トン、トン、トン。


「生きてる者は、道を開けろー」


――トン、トン、トン。


「邪魔する者は、道連れにするぞー」 





 高い鈴の音と低い地ならしが、どんどん大きく聞こえてくる。

 この地域では、夜な夜な道士が遺体を先導する。その遺体は奇妙で、独特の死装束を纏い、額には札が貼られ、腰紐で繋がれている。

 死者は祖先と同じ土地に埋葬しないと子孫が繁栄しないという言い伝えがあり、故郷から遠く離れた場所で死んだり、貧しくて棺を用意できない場合、道士が遺体に呪術を施し、遺体を自分の故郷まで歩かせるという風習があった。



――チリーン、チリーン。



――トン、トン。



 鈴の音が合わせて、遺体は跳ねながら移動する。この呪術は昼間には解けてしまうため、死者の行進は夜に限られる。




 この一行が向かったのは、とある術士の道場だった。

 そして、この物語の主人公である俺、ジンとユーユーの出会った場所。

 俺の大事な人との別れの場所でも、ある――。


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