姚興42 対赫連勃勃3  

姚興ようこう貳城じじょうに到着し、

赫連勃勃かくれんぼつぼつ討伐の軍容を展開する。

先鋒は姚詳ようしょう斂曼嵬れんまんかい

そこへ彭白狼ほうはくろうに輜重運搬をさせる形だ。

だが、赫連勃勃は先手を打ってくる。

後秦こうしん軍の準備が整うよりも前に、

強襲をしかけてきたのだ。


それを聞いた姚興、歩兵を切り離し、

騎兵のみで救援に駆けつけねば、

と言い出す。

いやいやアンタ、何ゆってんですか!?

臣下たち、大混乱の上大反対である。

無論姚興は聞く耳を持とうとしない。


加えて韋宗いそうという人物が、

姚興を囃し立てるのだからたまらない。


姜楞きょうろうという人物が、

上役のはずの韋宗を押しのけて、言う。


「韋宗は不忠にもほどがあります!

 その言葉は国事の転覆にも等しきこと!

 まずはこやつを腰斬に処されませ!


 ここで陛下が戦死でもなされなさい!

 軍は仰ぐものを失って混乱し、

 人々は守るべきものを失うのです!

 そのような危地になぞ、陛下を

 お出しするわけには参りません!


 ここは別のものを遣わせ、

 姚詳どのらへの助けとなされませ!」


ストレート、

言い回しがあまりにもストレート。

なので姚興もむぐっとなる。


さらに韋華いからが進み出て、言う。


「下手に陛下が軽々に動かれれば、

 決戦の前に軍は自壊致しましょう。

 赫連勃勃めが迫っているとはいえ、

 まだ衝突した、という報はございません。


 陛下におかれては、深く姜楞どのの

 進言をご検討頂きたく存じます」


そこで姚興は姚文宗ようぶんそうに中央軍を率いさせ、

その後続に齊莫さいばくの率いるてい人兵をつけた。


姚文宗と齊莫はともに勇将である。

姚詳らとともに死力を尽くして戦い、

赫連勃勃を退けることに成功した。


中央軍をそのまま姚詳に引き渡し、

貳城守備の任につける。

そして姚興は長安に帰還した。




興如貳城,將討赫連勃勃,遣安遠姚詳及斂曼嵬、鎮軍彭白狼分督租運。諸軍未集而勃勃騎大至,興欲留步軍,輕如嵬營。眾咸惶懼,群臣固以為不可,興弗納。尚書郎韋宗希旨勸興行。蘭台侍御史姜楞越次而進曰:「韋宗傾險不忠,沮敗國計,宜先腰斬以謝天下。脫車駕動軫,六軍駭懼,人無守志,取危之道也,宜遣單使以征詳等。」興默然。右僕射韋華等諫曰:「若車騎輕動,必不戰自潰,嵬營亦未必可至,惟陛下圖之。」興乃遣左將軍姚文宗率禁兵距戰,中壘齊莫統氐兵以繼之。文宗與莫皆勇果兼人,以死力戰,勃勃乃退。留禁兵五千配姚詳守貳城,興還長安。


興は貳城に如き、將に赫連勃勃を討たんとせば、安遠の姚詳、及び斂曼嵬、鎮軍の彭白狼を遣り、督を分け租を運ばしむ。諸軍の未だ集まらざるに勃勃が騎は大いに至り、興は步軍を留め、輕に嵬が營に如かんと欲す。眾は咸な惶懼し、群臣は固く不可なるを以為えど、興は納むる弗し。尚書郎の韋宗は旨を希い興に行きたるを勸む。蘭台侍御史の姜楞は次を越え進みて曰く:「韋宗は傾險不忠にして、國計を沮敗す。宜しく先に腰斬なるを以て天下に謝すべし。車駕の脫し動軫せるに、六軍は駭懼し、人に志を守りたる無く、危を取りたるの道なれば、宜しく單使を遣わせ以て詳らを征せしむべし」と。興は默然とす。右僕射の韋華らは諫めて曰く:「若し車騎の輕に動かば、必ずや戰わすして自潰せん。嵬が營に亦た未だ必ず至るべからず、惟だ陛下にては之を圖りたるべし」と。興は乃ち左將軍の姚文宗を遣り禁兵を率い距戰せしめ、中壘の齊莫は氐兵を統い以て之に繼ぐ。文宗と莫は皆な勇果兼人なれば、死力を以て戰い、勃勃は乃ち退く。禁兵五千を留め姚詳に配し貳城を守らしめ、興は長安に還ず。


(晋書118-4_規箴)




韋宗さん腰斬てwww実際にされたわけじゃないでしょうけど。


ちなみに腰斬は、有名なところでは始皇帝の参謀として知られる李斯が受けています。激烈に痛いわ、なかなか死ねないわで、最も残虐な処刑方法なのだそうです。「それくらいに罪深いふるまい」なのはわかりますが、なんつーかw


そしてここにも韋華さんが登場。結構中央近くにいたんですね……どんな思いで劉裕に寝返ったのかな。


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