姚興28 特別褒賞と狩猟癖

姚興ようこうは書面にて指令を下す。

内容は馬嵬ばかい戰、

つまり苻登ふとうとの最終決戦に参加した

将兵官吏への特別褒賞。

その上で二十年間の納税、賦役を免除。

うーんご機嫌取りにすぎる。


とはいえ姚興は質素倹約を旨としていた。

かれがのる車や馬には余計な装飾もなく、

自然と配下も姚興のふるまいに感化され、

誰もが質素倹約を旨としていた。


一方で、狩猟癖がひどかった。

田畑を馬で駆け回る。

お陰で農作物が踏み荒らされる。


本来であれば、姚興のふるまいを

尚書左僕射の齊難さいなんが諫めるべきである。

が、一向にその気配がない。


なので杜挻とていというひとは

齊難に宰相の才覚なしと、

豐草詩ほうそうし」という詩を執筆、批判した。

また相雲そううんという人も

德獵賦とくりょうふ」にて間接的に批判。


これらの詩を読み、姚興は素晴らしい、

と褒め称え、金品による褒美をなす。


なお肝心の狩猟癖は改まらなかった。




興下書,錄馬嵬戰時將吏,盡擢敘之,其堡戶給復二十年。興性儉約,車馬無金玉之飾,自下化之,莫不敦尚清素。然好游田,頗損農要。京兆杜挻以僕射齊難無匡輔之益,著『豐草詩』以箴之,馮翊相雲作『德獵賦』以諷焉。興皆覽而善之,賜以金帛,然終弗能改。


興は書を下し、馬嵬戰の時の將吏を錄し、盡く之を擢敘し、其の堡戶を二十年給復す。興が性は儉約にして、車馬に金玉の飾無く、自下は之に化し、清素を尚せること敦からざる莫し。然れど游田を好み、農要を頗損す。京兆の杜挻は僕射の齊難の匡輔の益無かりたるを以て、豐草詩を著し以て之を箴じ、馮翊の相雲は德獵賦を作して以て諷ず。興は皆な覽じ之を善しとし、金帛を以て賜うも、然れど終には改む能う弗し。


(晋書117-21_規箴)




ちなみにこのふるまいは 404 年のことのよう。苻登討伐から十一年後です。劉裕のところ読んでいても、戦時褒賞って色々整理することが多いみたいで、普通に年単位の時間がかかるみたいなんですよね。ずいぶんな大盤振る舞いだから古参優遇を狙って色を付けた、ってのもあるんでしょうけど、基本はそれほど大幅な遅れ、ってことでもなさそう。とは言え正直なんでここまでのタイムラグなのか、って疑問そのものはぬぐいがたく。この辺についてはもうちょい裏を探りたいもんですが、なかなかとっかかりが見えません。うーむ。

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