苻堅5  外部情勢    

前秦ぜんしんの崩壊にともない、しんも動き出す。

名が上がるのは、桓温かんおんの甥、桓石虔かんせきけん

謝安しゃあんの甥、謝玄しゃげん。そして劉牢之りゅうろうしだ。


桓石虔は魯陽ろようを拠点とし、

高茂こうもという将軍を洛陽らくように派遣した。


謝玄が下邳かひにまで出てくると、

前秦の徐州刺史となっていた趙遷ちょうせん

彭城ほうじょうを捨て、逃亡。

謝玄は張願ちょうがんに追撃させ、

碭山しゃくざんで交戦したが、結局逃がしてしまう。

とりあえず謝玄は彭城に拠点を移した。


ところで淝水ひすいに先立ち、苻堅ふけん

配下将の呂光りょこうに西方討伐を命じていた。

結果呂光は西域三十六国を制圧。

獲得した財宝は膨大な量だった。

苻堅は書にて呂光に

使持節、散騎常侍、都督玉門ぎょくもん以西諸軍事、

安西將軍、西域校尉、順鄉侯とさせた。

つまり、すごく昇進させた。


とはいえ、前秦は更に追い詰められる。

劉牢之が兗州えんしゅうに進撃。すると

前秦の兗州刺史、張崇ちょうすうは駐屯していた

鄄城けんじょうを放棄、慕容垂ぼようすい率いる後燕こうえんに逃亡。

劉牢之は配下将の劉襲りゅうしゅうに追撃させ、

河南かなんで張崇の配下、楊光ようこうを討ち取り撤収。

劉牢之は鄄城入りし、拠点とした。




晉西中郎將桓石虔進據魯陽,遣河南太守高茂北戍洛陽。晉冠軍謝玄次於下邳,徐州刺史趙遷棄彭城奔還。玄前鋒張願追遷及於碭山,轉戰而免。玄進據彭城。時呂光討平西域三十六國,所獲珍寶以萬萬計。堅下書以光為使持節、散騎常侍、都督玉門以西諸軍事、安西將軍、西域校尉,進封順鄉侯,增邑一千戶。劉牢之伐兗州,堅刺史張崇棄鄄城奔于慕容垂。牢之遣將軍劉襲追崇,戰于河南,斬其東平太守楊光而退。牢之遂據鄄城。


晉の西中郎將の桓石虔は進みて魯陽に據し、河南太守の高茂を遣りて洛陽に北戍せしむ。晉の冠軍の謝玄は下邳に次し、徐州刺史の趙遷は彭城を棄て奔還す。玄が前鋒の張願は遷を追いて碭山に及び轉戰せど免る。玄は進みて彭城に據す。時に呂光は西域三十六國を討平し、獲たる所の珍寶は以て萬萬を計う。堅は書を下し光を以て使持節、散騎常侍、都督玉門以西諸軍事、安西將軍、西域校尉と為し、順鄉侯に進封し、一千戶を增邑す。劉牢之は兗州を伐ち、堅が刺史の張崇は鄄城を棄て慕容垂に奔る。牢之は將軍の劉襲を遣わせ崇を追い、河南にて戰い、其の東平太守の楊光を斬りて退く。牢之は遂に鄄城に據す。


(晋書114-4_仇隟)




淝水後の東晋というと謝安が苻堅の救援に向かおうとした、ってのが印象に残ってますが、これ見るとガチで削りに来てますね。西府北府が誇る勇将ぶっこんできてるじゃないですか。


あと気になるのが、張崇と楊光の関係でしょうか。刺史→太守の関係が上司→部下的な感じになってる。ちなみにもともと刺史ってのは太守の働きに対する監視役であり、上役そのものではありません。前秦では、このあたりがやや違った形で運用されていたのかもしれないですね。

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