慕容暐2 苻堅に背く   

慕容暐ぼよういの政治はだらしのないものであり、

誰もが慕容暐の代で前燕ぜんえんは滅ぶだろう、

と予期していたようである。


苻堅ふけん王猛おうもうを前燕討伐に派遣。

あっさりぎょうは陥落し、

慕容暐は囚われの身となった。

ただし、殺しはしない。

新興しんこう侯に封爵の上、尚書に任命した。

「もと敵国の主を厚遇する」

寛容さを示したわけである。


383 年、淝水ひすいで苻堅が大敗すると、

慕容垂ぼようすいが離反して、鄴の苻丕ふひを攻撃。


慕容暐の弟の慕容泓ぼようおうは、

北地ほくちと言う地に赴任していたが、

慕容垂の動きを知り、離反。

はじめ洛陽らくよう辺りにまで脱出したが、

そこで旧前燕勢力を取りまとめ、

数千もの軍勢となり、再び西へ。

長安のすぐ東にある町、華陰かいんに陣取る。


長安でこのニュースを聞いた慕容暐。

長安周辺にいた前燕系の皇族、宗族に

密かに便りを飛ばし、

慕容泓に呼応させるようにした。


苻堅も黙って見ていたわけではない。

張永ちょうえいと言う武将に攻撃させたが、

惨敗した。


この勝利に勢いづいた慕容泓は、

使持節、大都督陝西諸軍事、

大將軍、雍州牧、濟北王を自称。


あわせて慕容垂には

丞相、都督陝東諸軍事、

領大司馬、冀州牧、吳王

の官位を送った。


苻堅、今度は息子の苻叡ふえいを派遣。

この軍も、やはり慕容泓に敗れた。

その上、苻叡は殺されてしまう。



一方、慕容暐、慕容泓の更に弟である

慕容沖ぼようちゅうも河東で決起した。

もっともこちらは苻堅が派遣した

竇衝とうしょうと言う将軍に

打ち破られてしまうのだが。


慕容沖は歩兵を捨て、

騎兵八千のみを引き連れ

慕容泓のもとに駆け込む。


この頃にもなると慕容泓軍は、

十万を超える規模となっていた。




暐,字景茂,儁之第三子也。暐政無綱紀,時人知其將滅。苻堅遣將王猛伐鄴,擒暐,封新興侯,後拜尚書。太祖之七年,苻堅敗於淮南,垂叛,攻苻丕於鄴。暐弟濟北王泓,先為北地長史,聞垂攻鄴,亡奔關東,收諸馬牧鮮卑,眾至數千,還屯華陰。暐乃潛使諸弟及宗人起兵於外。堅遣將軍張永步騎五千擊之,為泓所敗。泓眾遂盛,自稱使持節、大都督、陝西諸軍事、大將軍、雍州牧、濟北王,推垂為丞相、都督陝東諸軍事、領大司馬、冀州牧、吳王。堅遣子鉅鹿公叡伐泓。泓弟中山王沖,先為平陽太守,亦起兵河東,有眾二萬。泓大破叡軍,斬叡。沖為堅將竇衝所破,棄其步眾,率鮮卑騎八千奔於泓軍。泓眾至十餘萬。


暐は字を景茂、儁の第三子なり。暐が政に綱紀無く、時の人は其の將に滅さんとせるを知る。苻堅は將の王猛を遣わせ鄴を伐たしめ、暐を擒え、新興侯に封じ、後に尚書を拜す。太祖の七年、苻堅の淮南に敗せるに、垂は叛し、苻丕を鄴に攻む。暐が弟の濟北王の泓は先に北地長史為れど、垂の鄴を攻むを聞き、關東に亡奔し、諸馬牧の鮮卑を收め、眾は數千に至り、還じ華陰に屯ず。暐は乃ち潛かに諸弟、及び宗人をして外にて起兵せしむ。堅は將軍の張永を步騎五千にて遣わせ之を擊たしむるも、泓に敗せる所と為る。泓が眾は遂に盛んにして、自ら使持節、大都督、陝西諸軍事、大將軍、雍州牧、濟北王を稱し、垂を推して丞相、都督陝東諸軍事、領大司馬、冀州牧、吳王と為す。堅は子の鉅鹿公の叡を遣わせ泓を伐たせしむ。泓が弟の中山王の沖は、先に平陽太守と為りたれど、亦た河東にて起兵し、眾二萬を有す。泓は叡が軍を大破し、叡を斬る。沖は堅が將の竇衝に破らる所と為り、其の步眾を棄て、鮮卑騎八千を率い泓が軍に奔る。泓が眾は十餘萬に至る。


(魏書95-21_仇隟)



ここからは魏書の記述です。魏書には慕容永ぼようえい伝もあるので、そのまま慕容永伝にも突っ込んでいきます。晋書だとこの辺は苻堅伝に収斂させてるんですよね。こっちで既に紹介してあるエピソードは、ザクザク苻堅伝では削る予定。


と言うわけで、慕容泓、慕容垂を中心とした旧前燕勢力の苻堅からの離反が描かれています。いやあ、改めて読むと、ほんにズタボロで笑うよねこの頃の苻堅。

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