明日の君に会いたい

姫宮未調

淡い恋心

見上げるといつもあなたがいて、当たり前のような一瞬一瞬が眩しかった。



「……残念ですが、もって半年でしょう。発作の度合いによってはいつその日が来てもおかしくありません」

「に、入院したら希望はありますか? 」


やつれた母が隣で必死に聞いている中、わたしはやけに冷静にやり取りを見ていた。


「状態の維持はし易いかと思われますが、現代医学では何ともし難い状況です。申し訳ありません」


方法があるならば真っ先に伝えてくれているはずだ。

母も無駄だと分かっていて縋りたいのだ。

無謀なやり取りなんてやめて欲しいという気持ちもある。

若くしてガンなんて信じたくない気持ちはわたしが一番抱いている。

なくなってしまうのなら、情報量がいくらあっても無意味なのだから。




「……なせ、雛夕ひなせ! 」

「あ、ごめん。ぼーっとしてた。なに? 」

「大丈夫か? 最近休みがちだし。……芳しくないのか? 」

「……ううん。発作が重なっただけ」

「逆に心配になるだろ」

「ありがとう、健翔たける


小さい頃からずっと一緒にいる幼馴染。

病気であることも知っている。

……だけど、ガンとは告げていない。

淡白に、冷静に受け止めながらも、健翔に言うのが怖い。

いつも優しくて、ちゃんと叱ってくれて、本気で心配してくれる、そんな彼が好きだから。



「佐伯くん! 」


大切な時間に亀裂が入った。


「高木? 」

「……誰? 」

「ああ、俺のクラスの……」

「カノジョよ! あなたこそ誰? 」

「ちょ! 佐伯! 俺は……」

「待ってたんだからね! 行くわよ! 」


半ば強引に高木と言ういきなりカノジョだという女に連れて行かれてしまった。


───ドクンドクンドクンドクン。


何だか苦しい。発作じゃない、発作じゃ。

カノジョがいるなら絶対言ってくれるはずだ。

だからきっと……。

でも、それがいいのかも。

だってわたしは……───。

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