18.アーティアの新しい生活 入浴編
アーティアがジジ達と暮らす様になって、最大の楽しみは入浴である。
しかし、アーティアの入浴の裏で激しい攻防が日々繰り広げられていることをアーティアは知らない。
アーティアの中でジジは温厚で紳士な好々爺なのである。
正に『知らぬが仏』真実を知らないのは幸福なのかも知れない。
今日のジジイは一味違っていた。
燃え上がるエロ魂がその頭脳をキレッキレに冴えさせた。
そしてついに新しい魔法を生み出す事に成功したのである。
ジジイは自室でエロい笑みを浮かべていた。
「ぐふふふふふふ。儂って天才。アーティアのあんな所やこんな所をたっぷり堪能じゃ」
今までアーティアの入浴を覗くべく、あらゆる努力を惜しまなかったジジ。
しかしその悉くをカロンに防がれてきた。
自称『ガーディアン』のカロンの防御は正に鉄壁。
その高い防御力を今までジジは突破出来ずにいたのだ。
だがそれも過去のこと。
今日こそ初勝利を掴むのだ。
そんなジジだが、実はジジには譲る事が出来ないポリシーがある。
そのポリシー故にカロンの分厚い防御を破れずにいたのだ。
ジジイの譲れないポリシー、それは
入浴は直接覗かない!
であった。
当然理由もある。
それはバレた時のリスクが高すぎるからだった。
故にエロジジイは如何に安全に覗くかに異様な拘りがあり、むしろプライドとなっていたのだ。(迷惑な話である)
そのジジイの果てしなき野望が生み出したのが光属性魔法『遠見』である。
これは魔法名の通りの効果があり、水晶に遠くの光景を移す魔法である。
しかしながらジジイにとっては残念なことに自由自在に遠くを見れる訳では無かった。
ジジの持つ水晶は言わば受信機であり、送信機から送られてくる映像をキャッチして映すというものだった。
初日に猫の像の目に魔法の水晶を仕込んで浴室に置いたが直ぐにカロンに見破られた。
ベストポジションを探すのに何度も調整したのに大変残念な結果になったのは悔しい記憶である。
その後も水晶を隠して置いたり、大量のダミー水晶を設置してみたり、むしろ逆に堂々と置いてみたりいろいろ試してきた。
しかし、その悉くをカロンによって防がれてきた。
因みに水晶を堂々と置いた時は、カロンに『ジジイついに狂ったか』と水晶を割られる結果になった。
そして昨日、浴槽内に水晶を入れてみるという暴挙に出た。
勿論事前にカロンによって水晶は捨てられたのだが、その時ジジは閃いてしまったのだ。
そうか!水晶だからバレるんじゃ
むしろ今頃気付いたのかよ!と言いたい。
気付いてしまったジジは徹夜で頑張った。
そしてたった今、新たな送信媒体が完成したのだ。
新開発の魔法によって生み出された送信媒体。
それはズバリ 水(お湯でも可)だった。
水の中の映像を送ってくれる魔法の水を作り出す魔法、それがジジが徹夜で作り出した魔法である。
液体を水晶に変わりにするのはこの世界では画期的な発想だった。
とは言え、ジジが水を送信媒体にする発想を得たのはある理由により、自然な発想と言えるのかもしれない。
それについては後で述べることもあるだろう。
そして当たり前だが魔法は一晩で開発出来るものではない。
しかし、ジジのエロい情熱が不可能を可能に変えたのだった。
(むふふふふ。試験の結果は良好じゃ。こりゃ今晩が楽しみじゃー)
すこし眠った方がいいのかも知れないが、ジジイの頭の中はムフフ状態だったので寝れなかった。
楽しい夕食タイムは和やかに過ぎていった。
「お姉ちゃん、お風呂はいろー」
なにも知らないカロンがいつもの様にアーティアをお風呂に誘う。
「ええ、でもいつも私達が先に入ってしまうのがジジ様に申し訳なくて」
「えー、このジジイに遠慮は要らないって」
「ジジ様お先にお風呂お入り下さい」
この日に限りアーティアが遠慮してきたのだ。
覗く以外でもアーティアの入った後のお湯に浸かるのがジジの楽しみの一つである。
ジジはアーティアの入った後の湯を『乙女湯』と名付けていて、今日は覗きも乙女湯もダブルで堪能できるのだ。
この優しい申し出は嬉しかったが、ここは一つエロの為に断固断らなければならないと、ジジは心を鬼にする。
「ティアや、ありがとう。でも年寄りには沸かしたてのお湯はきつくてのう。後湯の方が却っていいのじゃ。それに儂は長湯で湯はぬるい方が好みなんじゃよ」
どこかの書物で読んだ気がする適当な情報を言い訳に角が立たないように断るジジ。
さすが年の甲である。
カロンもジジの真の意図に気付いていない。
つまり勝利目前である。
実際ジジはいつも長湯なので、ジジが先に入るとカロンやアーティアにはぬるくなり過ぎる。
ジジの言い分に不自然な点は無く、アーティアも素直に納得してしまった。
「ジジイもああ言ってるし、先に入ろー」
「ええ、カロンちゃん。ジジ様それではお先に入らさせて頂きますね」
「うむうむ、
カロンは口が悪いが、アーティアは丁寧過ぎる。
二人は足して2で割った位がちょうどいい。
とジジは思う。
そしてジジは二人が食堂を出て行くのを見送った後、いそいそと自室に向かうのだった。
数分後、ジジの自室にて。
机の上に置かれた水晶が光っていて、何か映像を移している様だ。
ジジはその映像を必死に覗き込んで……
いなかった。
ジジは気を失っていた。
もう真っ白に燃え尽きた感じがする、そんな哀愁が漂う気絶っぷりだった。
一体何が起こったのか。
少しだけ時を遡り、アーティア達の入浴シーンを覗いてみよう。
アーティアとカロンが浴室に入っていた。
お互い一糸纏わぬ姿である。
いつもは先にお互いの体を洗い合うのだが、この日に限りカロンの行動が違った。
「お姉ちゃん、入浴剤って知ってる?」
「お湯に入れるハーブや薬草、アロマオイルとかかしら」
「うん。そういうのだけど、面白い入浴剤があるんだ。入れていい?」
「ええ。私に遠慮は要らないわ。どういう風に面白いの?」
カロンが持っている入浴剤は普通に考えればジジが与えた物、それならジジの許可は要らないのかなとアーティアは思った。
「ふふーん。それは見てのお楽しみ」
カロンは一旦浴室から出ると、なにか袋を持って戻ってきた。
中にはカロンの言っていた入浴剤が入っているのだろう。
「じゃあ入れるねー」
そう言ってカロンは袋の中身を浴槽にぶちまける。
袋から大量の白い粉が浴槽に向かって落ちていく。
白い粉はお湯に触れるとあっと言う間に、それはもう気持ちいいくらいに溶けて広がっていく。
そして真っ白なにごり湯が完成した。
「カロンちゃん凄いわ。白いお湯なんて初めて。それにいい香り」
初めて見た白いお湯にテンションが上がるアーティア。
「凄いでしょ。お姉ちゃんが喜んでくれて嬉しいよ。このお湯に入ればお肌も今以上にスベスベになるよー」
二人はキャッキャキャッキャと楽しい時間を過ごしたのだった。
場所はジジに自室に戻る。
エロジジイは燃え尽きて絶賛気絶中。
白いにごり湯は全くもって白かった。
透明度は限りなく低い。
だから、受信側の水晶に映っていたのは、一面の白だった。
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