11、結果発表そしてこれからの俺たち。その2

 佐倉さんが化学室を去ってからほどなくして宝生先輩が化学室に来た。

 宝生先輩はぎこちない足取りで向かいの席に座った。

 俺が緊張しているせいか全て動きがぎこちなく感じる。

 そして……沈黙が訪れる。

 告白前に一位を獲れてうれしいみたいなことを話した方がいいのか、それとの第一声で告白した方がいいのか悩んでいるうちに、話し始めるのが気まずくなってしまった。

 だが、ここで告白しないなんて選択肢はない。

 一緒に居ていい理由を探したくない。

 部活でしか会えないなんて嫌だ。

 部活仲間という弱い関係では満足できない。

 俺は宝生先輩のたった一人の恋人になりたい。

 弱気な心の甘言を振り払い、勇気を振り絞る。


「「あの!」」


 二人の声が重なった。


「宝生先輩、お先にどうぞ」


 出鼻をくじかれた感じはするが告白前に大人げないところを見せるでは本末転倒だ。


「な、なら、私から」


 宝生先輩は大きく深呼吸し服の上からでも存在感を放つ胸の上に手を添えると艶やかな唇をひらいた。



「朱然君、あなたのことが好きです」


 一瞬、思考が停止する。

 宝生先輩は朱色に染まった顔を隠す素ぶりも見せずまっすぐ俺の顔を見つめながら続ける。


「本当はずっと前からすきだったの、でも言い出せなかった、これ以上深く関わったら私のめんどくさい部分をもっとみせちゃう……そしたら嫌われて遠くに行ってしまうかもしれない。離れてしまうのが本当に怖かった」


 宝生先輩は目元に涙を溜めながらそれでも自分の本当の気持ちを伝えるために唇を動かした。


「でもね、全校集会の時気づいたの、このままじゃ一生近づけないまま二度と会えないほど遠くに行ってしまうってことに。廃部もそうだし私はあと一年もしないうちに卒業しちゃう。嫌われるも怖いけど何も伝えないまま二度と会えなくなっちゃうのはもっと怖い。だから……あなたのことが好きです」


 肩が震えている。

 顔を染める朱色が刻一刻と濃くなっていく。

 あぁ、そうか。宝生先輩も俺と同じ気持ちだったのか。

 宝生先輩は眼から涙を流しながらも俺のことをまっすぐ見つめている。

 なら、ここはいつものような自虐で返してはいけない。たとえ言葉の意味が同じであろうと宝生先輩の気持ちに真摯に向き合わなければならない。

 今度の言葉は口から自然と出た。


「俺も好きですよ。宝生先輩」


 二人で照れたように笑い合った。

 ぎこちなく、それでも心から笑いあった。

 


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