縁側。君のとなり。アイスを添えて。

深谷田 壮

アイスならなんでも。それは、嘘だ。きっと。

「ねぇ、朋樹ともき。アイス取ってきてよ」

「なんでさ。杏奈あんなの方が近いだろ」

「いいでしょ。そんなので寿命縮むわけじゃないのに」

「それにさ、うちのキッチン、涼しいことで有名だしさ、こんなとこに居てないで、休んできたら?」

「ふーん。で、誰に有名なの?」

「我が家の人」

「それだと、あんまり信用できないなぁ」

「……じゃんけんだ。じゃんけんで決めよう」

「あたしはいいよ。でも、朋樹はホントにいいの?」

「なんでさ」

「だってあたし、強いよ。じゃんけん。勝率三割三分三厘だし」

「それって只の確率だし。ていうか俺だって三割……」

「じゃーんけーんぽい!」慌てて俺はグーを出した。

「ほら。言ったじゃん。あたしの方が強いって」執拗にパーを見せつける。

「……分かった。じゃあ俺はちょっと涼んでくるよ」

「縁側に座ってるほうが楽しいのになぁ」

「そもそも俺はじゃんけんに負けてるしさ、強制的に行かされるわけだしさ」上げた腰が少し重かった。

「あ、あと、ホントに涼しいからな。うちのキッチン」

「そんなに強調されても、あたしは行かないけど。ここだって充分涼しいし」

「……そうだ、うちの冷凍庫。有名なんだよ。どんなアイスでも出てくる四次元ポケットとして名が」

「あたしは朋樹の選んでだアイスがいい」

「でもさ、アレルギーとかあったりしたら大変だしs」

「アレルギーなんかないし、そもそもあたしには好きな食べ物も嫌いな食べ物もないんだよ。この暑さで脳みそ溶け」

「あーはいはいわかったわかった。テキトーに取ってくるよ」



「あ、母さん」

「朋樹も来たの?」

「うん。あそこはいつまでも居るところじゃないし」

「そう、よね……」

「なんか飲み物いる?」

「大丈夫よ。自分でやるから」ここで会話は途切れた。

「あれ?アイスってこれだけしかないの?」少し気まずかったので、俺は話しかけた。

「急だから、あんまり用意できなかったの」

「そっか……」また途切れた。

「朋樹にとって、杏奈ちゃんって可愛い?」母さんから会話は再開した。

「もちろん。まさかブサイクだとか思ってない?」

「ブスってほどではないけど、朋樹ならもっと美人な子を見つけられたのにね、って思っただけ」

「……もっとマシな言い方ない?杏奈も傷ついてるよ」

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