第34話:待ち時間発生
昼食前に麻採取の女性らを迎えに行くと──
「凄いな。こんなに採れたのか」
「ふっふっふ。頑張ったのだよ、妾らは」
持参していた籠に収まり切れない大量の麻。蔓草で縛ってあるので、空間倉庫にも入れやすい。
それを全部収納して村へと戻ると、昼からさっそく繊維を取り出す作業をするのだという。その時に種をちゃんと取って、後日また植えに行く。
「麻は一年草の草だ。種を撒かなければ来年は咲かないからな」
「へぇ、そうなのか。クローディアは森には詳しいな。君がいてくれて助かるよ」
「んなっ!? べ、べべべべ、別に、おお、お前のためなんかじゃないんだからなっ」
「さぁて、昼飯を食おう」
「うぐぅ」
ん? どうしたんだろうな、クローディアは。
喜んだり落ち込んだり、忙しい人だ。
昼から俺は風車造りに必要な木材切りをしなきゃならない。
ジョンじーさんや他の村人が知恵を出し合い、風車小屋の大きさが決まった。そこから必要な木材のサイズが算出されたので、俺がその通りに木を切る。
それが終わってから壁の拡張に取り掛かりたい。
食後に材木置き場に引き籠り。
ジョンじーさんに貰った、絵と寸法の書かれた木片を片手に唸る。
「イルク、どうだ?」
『ほぉー。まぁ余裕だな』
「そうか! いやぁ、流石風の大精霊だな」
『ふっ──ぴえぇーっ!』
白フクロウが翼を広げると、風が舞い、木材も舞い、そしてシュパパシュパパと切れていく。
サイズもまちまち。複数の木材も同時に切断していくのは、見事としか思えない。
さ、俺も手伝うか。
翌日からさっそく風車小屋の建設が始まった。建設は何人もの人手を借りて作ることになる。
風車を建てる場所も重要だ。
小麦畑の近くにするべきか、それとも村の近くにするべきか。
だがフクロウイルクに助言を貰い、結局村の裏手にある崖の上に作ることになった。
「まぁ確かに風が良く吹くのはこっちだものな」
『ほっほー』
『しかしここでは主以外が上がってこれぬのだろう。どれ、階段でも作ってやるか。きゅっきゅー』
崖の上にフクロウとハムスターと俺。
ハムスターベヒモスの一声で、崖の上までの階段があっと言う間に出来上がった。
「小麦や、引いた粉を運ぶために、滑車があると便利なんだろうな」
その辺りの予定も含め、まずは小麦を引く小屋造りからだ。
東の集落から運んできた木材と、クロイス村の住民が元々使っていた小屋を解体して出た木材。
これを利用して小麦引き用の小屋を建設。
これには流石に村人の知恵を借りることになった。
高さのある小屋。当然だが羽は上の方に取り付けるので、修理のことなども考えて螺旋階段が必要だ。
歯車も相当な数が必要になる。
正直俺には何がなんだか分からない。
仕組みを知っているという村人に、頼まれた大きさと数の歯車を作って揃えるだけだ。
あとはそれを魔法で浮かせれば、村人が協力して組み立ててくれる。
一日頑張ると、風車小屋の外観が完成。
「いやぁ、何もないところから何かを作るって、楽しいなぁ」
「はっはっは。まるで職人みてーなことを言ってるなケンジ」
「オッズさんだって楽しそうじゃないですか」
「そりゃあお前、これが完成したらパンが食えるんだぜ? これが喜ばずにいられるかって」
確かにそうだ。
パンが食べられる。そう思っただけで明日も頑張ろうという気になるものな。
さぁ、明日は翼の部分だ。それと中のカラクリを組み立てないとな。
ベヒモスが作ってくれた土階段を下りて、汚れと疲れを取るため銭湯へと向かう。
するとどうだ……。
「待ち時間発生……」
銭湯の入口には、いつの間に置かれたのかベンチがあって、五人の村人がいた。
「いやぁ、暑くなってくると毎日風呂に入らなきゃ、体がベトついていけねぇ」
「ケンジさんのおかげで体も清潔に保てるようになったが、考えてることはみな一緒。だからこうなってんのさ」
これは早急に銭湯の拡張をせねば。
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