からくり師シャーロットと銀の竜

第1話

 魔法使いは睨み合っていた。

 ここは魔法使いの工房の上である。魔法の研究なんぞをこなすための研究室のようなものだ。街のはずれの石壁の川の縁の無理矢理作った木の階段を下りたところにある。その川縁の石壁にこれまた無理矢理引っ付くように建てられているのがこの工房だ。上から見ると川に浮いているように見える。

 町外れとはいえここは第二王都で大都会でありそこそこ人は住んでいる。というかぶっちゃけ住宅街の外れなので普通に周囲には人がたくさん居るのである。

 そして、近所では偏屈な魔法使いがあそこに住んでいるというのは周知の事実なのだった。 なので、実験に失敗して工房が爆発しようが雷が落ちようが住民はさほど驚かないのである。

 しかし、この状況はさすがに住民も肝を潰したらしく全員が固唾を飲んで魔法使いを見ていた。その視線の先を見ていた。

 魔法使いはにらみ合っていた。魔法使いが睨んでいるのは竜だった。白銀の綺麗な鱗に覆われた巨大な竜だった。住宅街と川を分かつ路地に降り立ち、ぼろ小屋のような工房見下ろしている。魔法使いは屋根に上りそれを睨んでいる。

 魔法使いの額を一筋の汗が伝った。はっきり言って絶体絶命である。

 竜とはこの世界の生態系の頂点に君臨する存在であり、名の轟く英雄でも、高名な魔法使いでも相手にするのは難しく、軍隊を動かしてようやく対処するようなそんな恐ろしいものなのだ。国を滅ぼしたという伝説も数知れない。

 ひとたび暴れれば被害は甚大だ。それが今魔法使いの目の前に居るのだ。今暴れ始めれば自分が死ぬのはもちろんのこと、周囲もただでは済まない。下手を打てばこの第二王都そのものが崩壊しかねないものが今魔法使いの目の前に居るのである。その胸中押して図るべしといったところなのである。

「ハァー...ハァー....」

 魔法使いはか細い息を吐きながら杖を竜にかざしていた。近所のじいさんに二日前に借りた杖。元々あった魔法使いの杖は先日事故でへし折れ、代わりに靴屋のじいさんの杖を借りたのである。魔法の加工がほどこされておらずとも無いよりはましだという話だった。

 じいさんが使い込み持ち手が磨り減り変色した杖を竜にかざす。

「ハァー....ハァー....」

 竜の次のアクションを待つ。竜は本当に巨大で間違いなく一般家屋程度の大きさはある。そして、その身から放たれる魔力が尋常では無い。魔法使いは魔法使いなのでそれをより鮮明に感じるのだ。勝てるはずが無い、それが魔法使いの感想。ざっと図っても波の魔法使い1万人分くらいの魔力は持っていると思われた。

 魔法使いは睨んだ。そして、待った。竜の次のアクションを。もし、攻撃を始めたならただちに退避しなくてはならない。というか、本当は周囲の住民にとっとと逃げろと叫びたいところなのだが目を離した瞬間殺されそうでそれが出来ないのである。

 竜が下りたって数分。もうじき憲兵が押し寄せてくるはずだ。そうすれば住民の避難が始まる。それまでなんとか。

 そう思った魔法使いだ。しかしその時、竜がゆっくりとその長い尾を波打たせた。

 住民、そして魔法使いも恐怖で全身を震わせる。

 そして、竜はその長い首をゆっくりと下ろし、その鼻先が魔法使いに届くほどの距離まで近づけた。

「ハァー....! ハァー....!!」

 魔法使いはもうそれだけで失神しそうだった。

 このまま殺される。そう思う魔法使いだ。その鋭い牙が並んだ顎が魔法使いの全身を無残に引き裂くのか、尾を叩きつけられて体が弾け飛ぶのか、噂に名高い火の息で蒸発させられるのか。とにかく、人の死に方では無いものが次々と魔法使いの頭を過っていった。そして、気の早い走馬灯が始まろうとしていた。

 が、

「ごめんください」

 声が聞こえた。はて、と魔法使いは思う。誰の声かと。

「あなたは魔道からくり製作で有名なシャーロット・グランデさんで間違いないですか」

「ハァー......ハァー....?」

 魔法使いは、シャーロットは疑問符だった。状況は理解不能だった。とにかく間違いないのは今の声は明らかに自分と鼻を突き合わせている竜から放たれたということだった。

 シャーロットはウェーブのかかった黒髪で包まれた頭の中を疑問符で満たした。学校の卒業祝いで貰ったローブは汗でじっとりとしていた。シャーロットは荒い息で竜の次の言葉を待った。

「あの、僕に魔導からくりを作っていただけないでしょうか」

「ハァー...? ハァー....?」

 シャーロットはますます訳が分からなかった。




 第二王都の辺境に住む偏屈魔法使いことシャーロット・グランデは魔法使い業界内ではそれなりに名の知れた魔法使いである。彼女は魔導からくりと呼ばれる魔力で動くからくり製作の第一人者なのである。魔法学校在学中から注目されていた彼女の技術。在学中からいろんなからくりを造りまくり、それはもちろん各方面が猛烈に欲しがりシャーロットの将来は約束されていたも同然だった。

 しかし、残念ながら彼女は有名になり過ぎた。そして、得意げに自分の魔法について語りすぎた。なにが起きたかと言えばシャーロットの魔導からくりを丸パクリして製造するものが次々と現れたのである。そして、彼らはその丸パクリをさらに改良し製品としての完成度を高めていった。そして、シャーロットが卒業するころにはもうシャーロットが造るものを上回る模造品が巷にあふれてしまっていたのである。だから、シャーロットがなにを造ってももはや見向きもされなくなってしまったのである。残念ながら、シャーロットの約束された将来はもろく崩れさってしまったのであった。

 まぁ、それでもシャーロットの腕は確かなので細々と食っていく分にはなんとかはなっているが、しかしどうにもこうにも義憤しているシャーロットなのだった。なので、この町外れのボロ工房で再起を狙って日夜研究にいそしんでいるのである。



「.........」

 シャーロットは脂汗を浮かべながら窓を見ていた。窓は開け放たれ、そしてその向こうには竜の顔があった。

「あの、話を聞いていただけないでしょうか」

 そうやって竜が声を発すると同時、シャーロットはさっと身をかがめ窓の下に入ってしまった。

「あの、お願いします」

 シャーロットは恐る恐る顔を上げる。その顔には微塵の油断も無い。目の前の存在を脅威として認識している。

「さっきからお話している通り。僕はあなたに魔導からくりを造って欲しいだけなんです。お願いですから話を聞いてください」

 竜はさっきから、シャーロットになぜここに来たのかをとくとくと話していた。

 自分は遙か東、岩の国から来た竜であること。

 故郷でシャーロットの噂を聞いたこと。

 そして、その腕を見込んで魔導からくりの製作をお願いしたこと。

 なにより、自分にはまったく敵意は無いということ。

 それらを洗いざらいシャーロットに話したのだ。

 竜が言葉を話せるのはその知能の高さからすればごく当たり前のことだ。しかし、一般人からしたらたまげる話しだろう。そもそも、竜なんてものに会うこと自体が稀も稀だ。竜は超が付く希少生物であり、多くは人間が入らない秘境に住んでいるのだ。この世界で最強の生物とはいえそれが実際に世の中に影響をもたらすことは多くない。人間と関わりを持つことそのものが何十年に一度というようなものなのだ。

 それが街の中に下りてきて、言葉をしゃべって仕事を依頼してきたのだからシャーロットは訳が分からないわけである。

 シャーロットはギラギラした目で竜を睨んでいる。

「あり得ないわ。絶対にあり得ないわよ。人間の客でさえ少ないのに突然竜が来るなんてあるわけ無い」

 シャーロットは震えて奥歯を鳴らしていた。

「なにかの間違いだわ。やっぱり私はこのボロ工房ごと消し炭にされるのね。ああ、悲しい。今日が命日だったとは。こんなことなら昨日のうちに大好きな七面鳥の香草詰めを一匹丸々食べとくんだった」

「そんなことはしません。僕はただ仕事をお願いに来たんです」

「ふふふ....」

 シャーロットは力無く笑うだけだった。

「困ったなこれは」

 竜は首を上げて頭をぽりぽり掻いた。その動きだけでシャーロットは耳をつんざくような叫び声を上げてひっくり返り、遠巻きに眺める周りの野次馬たちも叫んだ。ちなみに憲兵たちも大勢来たが手を出すに出せず剣や槍を構えて経過観察に止まっている。

 とにかく、竜が仕事の依頼をシャーロットにしに来たのは本当のことだった。そのために遙かな距離を飛んできたのだ。だが、シャーロットは完全に恐怖で正気を失っている。まずは、シャーロットをしっかり会話出来る状態にしなくてはならない。

「仕方が無い。変化はあんまり好きじゃ無いんだけども」

 そう言うと竜の足下から煙が上がった。淡い紫色の煙。どよめきとシャーロットの悲鳴が響く。それはみるみる竜の全身を包んでいった。そして、その煙がゆっくり晴れると中に居たのは竜では無かった。ハンチング帽にオーバーオールを来た農夫のような姿の12歳くらいの少年だった。

 これは竜が変化した姿だった。竜は魔物の中でも最上位だ。たくさんの魔法も使うことが出来るのだった。

「これで良し」

 そして、少年はシャーロットの工房に階段を使って下りていき入った。

「失礼します、シャーロットさん」

「ひぇ....」

 シャーロットは恐怖と意味不明なのとで力無い声を漏らした。

「これで少しは話しやすいでしょう。とにかく僕の話を聞いてください」

「くっ.......」

 シャーロットは苦々しい顔でうめき声を上げながら部屋の隅を恐る恐る動いていた。もぞもぞとどこへ向かうでも無く。

 竜はそんな部屋の中に目を向ける。そこには用途の分からない機械、犬の形のからくり、小人のからくり、鳥のからくり、とにかく色々な魔導からくりでごった返していた。

 これが、シャーロット・グランデの工房だった。魔導からくりの第一人者の肩書きは伊達では無いのだろう。

「すごい量ですね」

 竜は素直に感想を述べた。魔導からくり自体がまだまだ珍しいものなのにこれだけ並んでいるのは壮観だ。人間と関わりの薄い竜でもそれは感じたのだ。

「動物の形のものが多いんですね。人里で見かけるのは人の形か、本当に機械のものばかりなのに」

「ふぬぅ.....」

 シャーロットは歯を食いしばり何かを決断しようとしていた。

「私が好きだからよ。動物の形のが」

 そして、決断しとうとう竜と会話をした。人間の姿になり少しだけ警戒度が落ちたらしい。

「造るのはいつも動物のからくりが多いけど、パクる連中は合理性を重視して形をつまらない箱形に変えたがるのよ。だから、巷には美しさの欠片も無い魔導からくりが溢れかえっているの」

「そうだったんですか。からくりの大本はあなただとはうかがっていましたがそういう裏話があったんですね」

「私のからくりをむちゃくちゃに魔改造した連中を私は許さないわ」

「なるほど」

 シャーロットはなんとか竜と会話を行うことに成功していた。未だ恐怖は消えないようだが。竜は第一関門を突破した実感を得ていた。あとは、自分の要望をしっかりと伝えるだけだ。

 相手の心を開くには相手の好きなモノに興味を示すのが良いように竜には思われた。

 なのでからくりを見回し、そしてその中のとかげのからくりの前まで行った。精巧な作りでとかげながら迫力がある。

「このからくりが好きですね。自分が竜だからっていうのもありますけど、とかげはかっこいい」

「!!!」

 シャーロットはぱっと顔を明るくした。

「そう! そうなのよ! 分かるそのアレハンドロの良さが! 製作日数3ヶ月、使った魔法も仕込んだからくり機構も過去最高なの。その子が動いたときの嬉しさと来たらどれほどだったことか。間違いなくマイフェイバリットからくりトップ3のひとつなのよ。いやぁ、どうやら悪い竜では無さそうね」

 シャーロットはすさまじい早口で言ったのだった。もはや笑顔だ。

 実にあっという間にシャーロットの心を開くことに成功し竜の方が若干ビビるほどだった。

 とにかく問題は解決した。

 シャーロットは早口で自分のからくりについて語りながら椅子に座ったので竜もその向かえに座った。

「だから、からくりは根本的な骨格が命なわけなのよ。外装とかかかってる魔法とかは二の次なの。骨格、最初の最初が大事なわけなのよ」

「分かりました。分かりましたシャーロットさん。とにかく話しを聞いてください」

「でも、その骨格っていうのはさぁ。やっぱり最後はセンスなのよねぇ。でも、実のとこセンスに優劣って無いと思うのよ。ある程度知識があればもはや上とか下とかいうよりもデザインの違いでしか無いわ。だから」

「シャーロットさん、どうか話を聞いてください」

「え? あ、ああ」

 怖がっていたさっきとは逆に好意的過ぎるために話を聞かなくなったシャーロットだった。

「ええと。仕事を持ってきたんだったかしら」

「そうです」

「ふぅん。竜が人間になにを造って欲しいっていうのよ」

「ああ、良かった。ようやく本題に入れる」

 竜は長い道のりを越え胸を撫で下ろした。

 まぁ、実際のところシャーロットでなくても同じような反応ではあっただろうが。いきなり竜に頼み事をされてすぐに聞く人間は希有だ。

 とにかくようやく竜は話したいことを話せるというわけだった。

「僕が造って欲しいのはコーヒーメーカーです」

「ははぁ」

 シャーロットはぼんやり声を漏らした。あまりに庶民的な要望だったので拍子抜けしたのだ。伝説の生物の要望にしては正直に言えばしょぼすぎたのだ。

「その辺に売ってるわよ。私が造ったのを丸パクリしたのが」

「ダメです。小さすぎます」

「その姿なら使えるんじゃないの」

 竜は今人間の姿だ。そのままなら人間の使う道具は問題なく使えそうだった。

「ダメです」

「なんでさ」

「この姿はものすごく窮屈なんです」

 竜はため息をついた。

「さっきまでの大きさの僕がこの人間のサイズに変化してるんですよ。どれだけ無理矢理この大きさになってると思うんです。正直今だってすごく我慢してます」

「そ、それは申し訳ないわねなんだか」

「いえ、仕方の無いことです。とにかく、この姿は窮屈なんです。そして、コーヒーを飲むという時間はリラックスするための時間です。そんな時間にどうしてこの窮屈な姿飲めるでしょうか。嫌です。飲むならありのままの姿でゆっくりくつろぎながら飲みたい」

「なるほどぉ」

 シャーロットはうなずいた。竜の言い分は最もだった。少なくともシャーロットが同じ立場でも同じことを思ったはずだった。納得である。人間とはまったく違う超生物だったがシャーロットはここで種族を越えた共感を感じた。

「じゃあ、造るしかないわねぇ」

「でしょう」

 竜はしたりといった調子だった。

「僕は正直コーヒーが大好きです。世界各地を廻っていろんなコーヒーを集めるほどです」

「それは、世界各地のコーヒー農家は驚いたでしょうねぇ」

「ええ。大体の場所でさっきまでのあなたと同じ状況になりました。まぁ、それはそれとして。僕はとにかくコーヒーを飲むのが好きです。悠久の時を生きる僕たち竜は何か趣味が無いと暇で暇でたまりません。それで、僕が見つけた趣味がコーヒーで、これが僕の生きがいなんです」

「そ、そんなもんなのねぇ」

「でも、今まで豆を挽くのがとにかく大変で。やっぱり人間の姿で挽いて、たくさん挽いて、それで大量の水を使って何回にも分けてドリップして、それから大きな岩の器に淹れて飲んでいたんです。でも、もうそんなのは我慢できないんですよ!」

 竜は突然語気を荒げた。シャーロットは驚き肩を震わせる。

「コーヒーを飲むのが大変過ぎる。心の癒やしを得るのに労力がかかりすぎる。魔法でどうにかしようとも思いましたが、人間がやるような精緻な魔法は僕は不得手です。コーヒーメーカーが面倒ならそれを使わないで大きな器とドリッパーでなんとか飲んだりもしてみますがやはり面倒な上にあまりおいしくないんです。手は尽くしました。なんとかならないのかと、50年悩んでいました。しかしあなたが生まれ、そしてからくりを造った。僕はこれほどの幸運があるものかと思いましたよ」

 竜はさっきまでのシャーロットに負けないほどの早口であった。

「はるばる彼方からいくつもの丘を越え海を越えこうしてやってきました。シャーロットさん。どうか僕に僕がストレス無く使えるコーヒーメーカーを作ってください」

「お、おう」

 シャーロットはとにかく頭の中で話をまとめた。ようするに、竜は竜の姿で使える大きな竜用のコーヒーメーカーを造って欲しいと言っているのだ。そして、ストレス無くリラックスしてコーヒーを飲みたいと言っているらしかった。

「どうして欲しいかは大体承ったわね」

「どうかお願いします」

「報酬はちゃんともらえるのかしら」

「なるほど、大事なことです」

 これが仕事である以上、依頼人が竜であってもマージンというものは必要なわけである。ここは人の世の理に従ってもらわなくてはならない。

「僕の鱗を20枚ほど差し上げます」

「ふぅん。それってどれくらいの価値なの」

「城が買えます」

「城が!?」

 シャーロットは驚愕だった。

「コーヒーメーカーひとつ造るだけで城が買えるの!?」

「僕にとってはそれほど重要なものなんですよ」

「城と同じくらいコーヒーメーカーが大事なの!? 逆にどうなのよそれは」

「城より大事なくらいですよ。だから、とにかくしっかりとした出来のものを造って欲しいんです」

「まぁ、そんだけ貰えるならそりゃあ相応の出来にはするけども」

 若干の罪悪感が沸くシャーロットだった。

「では、依頼は受けて頂けるんですね」

「まぁ、良いわよ。うん。期日はいつまで見て貰えるの」

「出来るまでで結構です。代わりにしっかりと造ってもらいたい」

「なるほどそういう感じね」

 シャーロットはぽりぽりと頬を掻いた。

 つまり時間の許す限りで城一個分の予算の中で竜に見合ったコーヒーメーカーを造るというわけだ。なにからなにまでシャーロットには初めての依頼だったが彼女の腕ならこなせないことはない。

 どう考えても儲かりに儲かる仕事であるように思われた。この上ない大チャンスである。

 シャーロットはぼんやりと完成図をイメージした。

「分かったわ。やってみる」

「あ、ありがとうございます!」

「とにかく、まずはサイズを決めなくちゃならない。外で計りましょう」

「ああ、なるほど! 竜の僕のサイズを計るんですね!」

「そういうことよ」

 シャーロットは立ち上がりごそごそと道具類の棚を探り計測するための縄を引き出した。

「しっかりお願いしますね」

「もらう分はちゃんと働くわよ」

 そうして、二人はとりあえず、ボロ工房を出た。

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