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「おい、クロクレスを知らないか?」
「いいや、知らないな。例のマジックアイテムを売ってもらおうと朝から探しているんだが……」
「俺達もだ。また売り場を変えたのか? 最近よく冒険者達に追い回されていたからな」
ある日エ・ランテルの冒険者達が一人の男を探しながら以上の会話をしていた。
クロクレス。
突然エ・ランテルに現れたと思ったら「忌まわしき狩人シリーズ」という、石や木で作られた矢や投げナイフに強力な魔法や毒をいくつも加えた使い捨てのマジックアイテムを、路上販売で少数だが安値で売り捌く正体不明の男。最近ではこの「忌まわしき狩人シリーズ」を求める冒険者達がクロクレスを追いかけ回す姿がエ・ランテルの名物になりつつあった。
しかしそのクロクレスが急にエ・ランテルから姿を消した。
最初は単に路上販売の場所を変えただけだと思っていた。だがクロクレスがエ・ランテルから姿を消して数日が経つと、冒険者達から困惑と焦りの声が上がってくる。
「クロクレスの奴、何処にもいねぇ……! まさかこのエ・ランテルから出て行ったんじゃ……!?」
「嘘だろ? じゃあ、あのマジックアイテムは手に入らないのか?」
「お、おい。誰かクロクレスのマジックアイテムを持っている奴はいないか? 矢でも投げナイフでもどっちでもいい、売ってくれ!」
クロクレスの「忌まわしき狩人シリーズ」は、この世界の住人からすればこの上なく強力な、それこそ神話に出てくるマジックアイテムを超える存在であった。
相手に当てるという意思を持って放てば必ず相手に当たり、当たれば魔法や毒の効果で必ず相手を倒す。これによって格上のモンスターですら容易く倒せるようになった冒険者達は、自分達の力よりもクロクレスの「忌まわしき狩人シリーズ」に頼るようになってしまい、その結果クロクレスがいなくなったと知ったエ・ランテルの冒険者達は大いに混乱した。
クロクレスが現れる前のように、自分達の力だけでモンスターを倒せるようにと、戦いの勘を取り戻そうとする冒険者達。
まだ少数だが残っている「忌まわしき狩人シリーズ」を求め、持ち主である同業の冒険者に金を渡して交渉しようとする冒険者達。
一人の男とその男が作ったマジックアイテムが原因で起こった冒険者達の混乱。これによってエ・ランテルの冒険者組合の任務達成率が下がることになる。
そしてこの混乱は「漆黒の全身鎧を着た双剣の剣士と、それが率いる六人の冒険者達」という、七人組の新たな冒険者のチームがエ・ランテルの冒険者組合に現れるまで続いた。
漆黒の全身鎧を着た双剣の剣士をリーダーとする七人組の冒険者チームは、自分達の先輩と言える他の冒険者達が浮き足立っている横で多くの高位のモンスターを倒し、また数々の高難度の依頼を達成して瞬く間に冒険者としてのランクを上げていき、エ・ランテルだけでなく国中に自分達の名声を上げていった。
混乱するエ・ランテルに彗星のように現れた、全員が「英雄」と呼ばれる実力を持つ七人組の冒険者チーム。
その冒険者チームの名は「アインズ・ウール・ゴウン」。
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