070

すずが食べ始めたのを見届けて、私もカルボナーラを口に運ぶ。


「ん、美味しい。」


「そう?よかった。」


想像以上に美味しくて私は目を丸くした。すずもおしゃべりせずに一生懸命フォークでパスタをすくっている。


「柴原さん料理上手なんだ。」


「いや、美咲には負ける。いつもご飯作ってくれてありがとう。」


「…うん。」


躊躇いもなく言われると素直に受け取るのが恥ずかしい。


柴原さんは最近よく感謝の気持ちを伝えてくるようになった。事あるごとに“ありがとう”と言ってくれる。それに対して私は何も言えていない。私だって柴原さんに“ありがとう”という気持ちはあるのに、だ。


そしてその前に、私にはひとつ謝りたいことがあった。自分で言っておきながら、ちょっと言い過ぎたなと思うことがあるのだ。そろそろ勇気を出して謝っておくのがベストかもしれない。


私は一旦フォークを置くと、きちんと座り直した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る