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すずの通う保育園と柴原さんの住むマンションは意外なほど近かった。

私が入院中は柴原さんが保育園に送ってくれるらしい。あの冷徹非道な印象の柴原さんからのまさかの協力体制に、まったく頭がついていかない。けれどこれはとんでもなくありがたい話で、遠慮なくお願いすることにした。


すずが嫌がって大泣きするのではないかと懸念したが、お昼寝から起きたすずはあっさりと柴原さんと打ち解けてしまい、こちらは拍子抜けだ。


柴原さんはすずにはほとんど会ったことはないと言っていた。だけどやはり親子の絆というのだろうか、二人は波長が合った。それに、お姉ちゃんが頻繁にすずの写真を柴原さんに送っていたらしく、柴原さんも大きな抵抗なくすずを受け入れてくれた。


よかったはずなのになぜだかちょっぴり疎外感を感じてしまい、私はそれを振り払うかのように頭をブンブンと振った。

それを見ていたすずが、真似をして頭をブンブンと振って大笑いをした。


何が笑えるのかさっぱりわからない。

二歳児は意味不明だ。

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