第507話 諸々(もろもろ)のこと
陛下の
御者のサージェントさんには、少し早めだが八時頃迎えに来てくれと言っておいたので、俺たちが
「楽しかったー」
と、帰り道の馬車の中でのラッティー。もう少し会場にいても良かったかもしれないが、これから先も何度も機会はあるだろうから今日は我慢してもらおう。
「うー、何だか疲れたー」
こっちは、シャーリー。
結局シャーリーの男装の麗人?の件は誰も何も言い出せないまま、うやむやになってしまった。
ラッティーが来るときの馬車の中で言っていた、『今の時代は女同士でも男同士でもぜーんぜん平気』を思い出してしまった。大切なことでも忘れることのできる健忘術が今日は働かなかったようだ。
新年の王宮主催のダンスパーティーも終わり、日常が戻ってきた。
今俺は一日が終わり、アスカと居間のソファーで
「だいたい、順調だな」
「そうですね。鉄道の方も、商業ギルドの使っている工房で何とか自前で機関車を完成したそうですから、これからは大量の鋼鉄を必要とするレールを始めとした軌条部品を提供するだけで済むと思います」
「そうだな。ちゃんと機関車が作れるようになったのなら、これから先自分たちでどんどん改良も進めていくだろうし、こっちも助かるな。
話は変わるがエルザたち六人の勉強の方はどうだ?」
「月並みですが順調です。マーサの授業の関係か、六人とも将来は理数系の学科に進みたいようです。付属校だと、文官養成部付属校と技術部付属校になります」
「理数系の学科で技術部付属校はわかるけど、文官養成部付属校は?」
「セントラル大学の文官養成部のなかには文化科という学科があり、そこでは、数学や天文学が学べます」
「そうなのか。いずれにせよ、将来を自分で考えて選べることは、いいことだな。俺なんか、ただ高校に入ることだけを目的に中学の時勉強してただけだもの。きっとあのまま高校に通っていたら、何も考えず大学に行くことだけを目標に勉強していたろうな」
「目的はどうあれ、そうして得た知識は無駄ではないでしょうし、やればできるいう自信は貴重だと思います」
「確かに無駄ではないと思うが、どれほど意味があるかは正直わからないな。歳をとって自分のことを振り返った時、後悔がなければアスカの言う通りだろうけど、後悔することも十分あり得るよな」
「それはもしもの話ですから。いまのマスターが
「俺にはアスカがいるからもちろん十分満足だ」
「ありがとうございます」
「それとありがとう」
「はい」
「トンネル東口の寮の建設も順調だし、来月には完成だろ?」
「工事は順調のようですので、予定通り完成すると思います。
寮程度だと用水は井戸だけで問題はありませんが、この夏にはベビーコアも
「そうすると、またどこかにちゃんと届けて工事しないといけないよな?」
「私たちで勝手に工事を進めてしまう訳にはいきませんので、また商業ギルドを通して国と調整してもらいますか?」
「工事そのものを商業ギルドに頼んだら、どのくらいの工事になると思う?」
「それほど大きな水路を作る必要はないでしょうが、ちゃんとしたものを作るとなると水門なども必要でしょうし、それ相応の大工事になると思います」
「だよな。俺たちで工事を進めてしまうとあっという間に工事を終えてしまうだろうけど、この世界の人で可能な仕事はなるべくこの世界の人を使った方がいいと思うんだよ」
「マスターのおっしゃる通りだと思います」
「うちには、もう使いきれないほどの金もあるしな」
「それでは、商業ギルドに工事を頼みましょう」
「もしも人手では手に負えないような問題が起こったら、手を貸す方向でいくか」
「了解しました」
翌日。午後から俺とアスカは商業ギルドに顔を出して、用水路の話をしておいた。
うちの担当のポーラさんに話をしたところ、
「了解いたしました。測量だけはすぐに取り掛かります。その後設計して見積もりをお出しします。役所への届け出はこちらの方で処理しますが、ショウタさまのお名前を使いますので
やはり、伯爵やら、宰相付き政務官なる肩書は有用だったようだ。誰だって上を目指すなら立場の上の人物に対して
商業ギルドに水路工事を依頼して、一週間ほどで設計図と見積書が上がってきた。工事代金は思ったほど高くなかった。
ギルドでの説明によると、水路を作るうえで最も大切な
アスカに見積書を見てもらい、問題がないようだったので、設計に修正を入れることなく工事に取り掛かってもらうことにした。完成は着工後、六カ月から七カ月だそうで、今からだと九月の半ば頃には完成するらしい。
[あとがき]
本作も、一応先が見えてきました。ここまで読んでいただきありがとうございます。もうすこしだけお付き合いお願いします。
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