第354話 アリシア殿下、ご新居
ダンス教室はアスカにダメ出しされたことで実質解放された。応接室の隅に置いた
気持ちは付き人だかアシスタント。二人のためなら俺のできることなら何でもやってやるつもりだったのだが、タンゴ以外のダンスは俺のできないことだったようだ。
第一回ダンス教室のあった翌日。
「ショウタさまとアスカさまにお手紙が届いています」
そういって差し出されたトレイの上から、俺
俺宛の二通の内の一通は王宮からのもので、いつぞや見つけた石油の埋蔵地点周辺の優先使用許可だった。もう一通はかなり立派な封筒に赤い
「少なくとも私の机の中には封印と封蝋が入っています」
それならいいや。なければアスカに借りればいいものな。それはそれとして、この封印はどこのものなのだろう?
「この、封印の丸に六角形の星はどこの
「丸に
「なんだろう?」
「開けてみましょう」
封筒を開けてみると中から現れたのは、アリシア殿下の新居のお披露目式への招待状だった。
『ショウタ・コダマ伯爵殿
このたび、王都内に新居を構えましたので、ぜひお越しください。
その際、できれば
アリシア・パルゴール』
アスカにも同じ文面での招待で、お披露目式の日時は今週末の10時からだった。
封筒の中にもう一枚入っていた紙は、新居周辺の地図だった。
「やはり、帝国ともなると、招待客は正装でなくちゃいけないんだな」
「そう書いてある以上、そうなんでしょう」
「この前
「そうですね。正月前に私が作ったドラゴンの置物はどうでしょう?」
「まだ、二、三体残っているからそれでいいな。どういった新居なのかは分からないけれど、あれなら、
「新居の場所は、アルマさんの屋敷の近くですから屋敷街ですね」
「それはそうだろうな。なにせ皇女殿下だもの。
あれ? アルマさんの屋敷がおそらく、これだから、この場所は?」
地図を見ていたら、気が付いてしまった。
アリシア殿下の新居の場所は、俺が屋敷の
「マスター、差出人ですが」
「アリシアさんがどうかしたか?」
「通常ならなにがしかの肩書などが名前の前に付くと思いますが、この招待状には何も肩書がありません。本来なら第三皇女とか付いていると思いますがそれがありません」
「うん、それが?」
「あの国で肩書のないのは、平民と」
「平民と?」
「皇帝だけだったと思います」
「で?」
「アリシア殿下は、パルゴールの皇帝に即位されたのではないでしょうか? 今は亡命中ですから『亡命中の』と付きますが」
「そうだとすると、名前だけとはいえ、皇帝陛下ということか。えらいことになったな」
どのくらいえらいことなのかは全く分からないが、知ってる人が皇帝陛下だか女帝陛下だ。凄くえらいことになった気がする。
「パルゴールへの帰還のための準備をされているのかもしれません。その一環での即位ではないでしょうか?」
「帰還というと、今のクーデター政権から政権を取り戻すということか?」
「そういうことになります」
「だとすると?」
「ただの新居
招待された以上行かざるを得ないが、なんか変なことを頼まれたりでもしたら嫌だな。
「いずれにせよ、『魔界ゲート』問題が落ち着くまでは大きな動きはないでしょうから今回はそこまで警戒する必要はないと思います」
「だといいな」
「それより、シャーリーとラッティーの衣装はどうしますか?」
「ラッティーにはこの前、エメルダさんから貰った服があるからそれでいいんじゃないか? シャーリーの方はどうしようか? いっそのこと学生と言うことで今の学生服で済ませてしまうか?」
「それはいくら何でも
「だったら、二人を呼んですぐにでも仕立て屋に行こう。いつもうちに来てくれている仕立て屋さんの店はわかるかい?」
「わかります。シャーリーとラッティーを呼んできます」
「それじゃあ、俺はサージェントさんに言って馬車を用意してもらっておく」
仕立て屋さんのお店はサージェントさんも知っている有名な店だったらしく、アスカに頼ることなく大通りに面した店の前に馬車は到着することができた。
われわれの昼食は不要であると厨房に伝えてくれるようサージェントさんに頼んで、馬車は屋敷に帰した。帰りは近くの馬車駅からタクシー代わりの箱馬車で屋敷に帰ればいいだろう。
お店の中に入ると、広い店内にマネキンがずらりと並んでいた。マネキンと言っても、麻袋をそれっぽくして中に
衣装の基本形をこのマネキンが着ている衣装から大まかに選ぶようだ。マネキンの着ている衣装からすると、この一階は男性用らしい。
すぐに係りの人がやって来たので、連れの二人の女の子に服を
「いつもお世話になっております。お嬢さま方のダンスパーティー用のご衣裳ですね。かしこまりました。さっそく
前回採寸してから半年以上たっているから、成長中の二人はもう一度採寸の必要があるようだ。俺なんか、16歳の時から全然成長していないんですけど。
店長さんと係りの人にくっ付いて二階に上がると、またマネキンが並んでいた。マネキンを見るに、ここは女性用のフロアーのようだ。一階には数人お客さんがいたが、二階にはお客さんは今のところ見当たらない。
採寸室は奥の方にあるらしく、そこに案内されたが、俺が採寸作業を見ていても仕方がないので、シャーリーとラッティーのことはアスカに任せて、俺はほかのお客がいないのをいいことに、ぶらぶらとその
[あとがき]
異世界ファンタジー、バトルもの完結作『闇の眷属、俺。-進化の階梯を駆けあがれ-』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896322020
ですが、先週(2020年12月5日)にカクヨムコンに応募してみたんですが、翌日の順位が1380位くらいでした。本日(2020年12月13日)は685位まで躍進?していました。前回の宣伝で律義にあっちを呼んでいただいた方もいらっしゃると思います。ありがとうございます。
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