第322話 ダンジョン実習2
[まえがき]
320話の運賃で修正をしました。大銅貨5枚→銀貨5枚
大金貨=金貨10枚、金貨=小金貨10枚、小金貨=銀貨10枚、銀貨=大銅貨10枚、大銅貨=銅貨10枚となっています。
◇◇◇◇◇◇
生徒たちが、アスカ製メイスを構えて前進する。ゴーレムとの距離は約20メートル。やはりモンスターの正体は
「第1パーティー、敵は一体だけなので訓練通り、四方から囲んで死角から攻撃だ」
ペラから第1パーティーに指示が飛んだ。
「はい!」
第1パーティー四名が横に広がりながら前進し、ゴーレムを素早く囲んだ。ゴーレムの前方に位置する二名はメイスを構え、ゴーレムの間合いのやや外側から
ドゴッ! ズゴッ! と、こちらまで痛さが伝わってくるような音がして、メイスの膨らんだ打撃部分がゴーレムの脇腹の左右に半分ほどめり込んで、胴体にひび割れが走った。すぐにメイスを引いた二人は素早く一歩、二歩と後退してゴーレムの間合いから離れている。
後方からの攻撃に、ゴーレムは先ほど振り上げた腕を降ろしながら後ろに振り向いたのだが、相手がすでに間合いの外だったため何もできなかった。
改めて正面に振り向いたときには、前方左右から先ほどできた左右の亀裂付近にメイスをたたき込まれ、胴体のひび割れはさらに大きく広がってしまった。
そこから先のゴーレムは動きが悪くなり、後は赤い点が消えてからもボロボロになるまでタコ殴りされて、手で持ち上げやすい大きさにまでそのまま砕かれてしまった。まさに容赦なしの攻撃だった。
「魔石がありました!」
かけらに砕かれたゴーレムの中から、魔石が見つかったようだ。
「見つかった魔石は各パーティーで大事に保管しておくように」
鉄鉱石のかけらでも生徒たちの戦果なので、今回は俺が収納しておいてやった。今日の実戦訓練は午前中だけを考えているので、昼食時にでも買取価格について説明してやろう。
「ペラ、今回は俺が収納しておいてやったが、四輪車を持ってきた時には、各自でゴーレムの残骸を積み込ませてくれ。その時、大きな塊は手で積み込むにせよ、小さなかけらは、先の平たいスコップのようなものがあればを積み込むのに便利だから、次の実戦訓練までに人数分ペラが作ってやってくれ。形はだいたい見当つくだろ? 材料は学校の物置に入れておいてやる」
「了解しました」
その後は、第2パーティーが最前列になって前進を続ける。五分ほど、警戒しながら前進していったところで、こちらに近寄ってくる赤い点をミニマップ上に見つけた。こいつも一点だけでこちらに近づいて来る。
すぐに、ペラも視界に捉えたようで、
「次来たぞ、第2パーティー、構え」
「はい!」
第2パーティーも危なげなくヘマタイトゴーレムを粉々にして魔石を回収した。
思った以上に生徒たちの動きも良ければ、一撃一撃の威力も高い。明らかにうちのイエロー四人娘を越えている。これは、ここにいる生徒たちが新人とはいえ本職の冒険者たちだからという一言では片付けられないな。
結局はペラの指導と、本人たちのやる気がかみ合ったということなんだろう。こういった成果を目の当たりにすると、ペラをこの迷宮で見つけ出したことは
次は注目の女子四人組の第3パーティー。
今度は、通路の分岐を直角に折れて進んでいく。
すぐに前方にゴーレムが一体現れ、第3パーティーが臨戦態勢に入った。
「行くわよ!」「はい!」
リーダー格と思しき女の子の掛け声に合わせて残りの三人が気合を入れた返事をするのだが、どこか、女子バレーボールチームの気合の入れように似ている気がしてしまう。
第3パーティーはこれまでの二パーティーと同じように横に広がりながら、ヘマタイトゴーレムを囲み、前方でかく乱しつつ、後方から攻撃をたたき込んでいくのだが、これまでの男子パーティーと比べさらに動きが良い上、一撃が重いようだ。後方二人の攻撃が一度ずつ当たっただけでゴーレムは沈んでしまい、あとは前の二パーティー同様滅多打ちで砕かれてしまった。
続いてアスカの方を向くと、
「アスカ、今の第3パーティーの動きはどうだった?」
「良かったんじゃないですか」
何だかすごくおざなりな返事が返って来た。
「どうも出てくるモンスターが弱すぎて、訓練にならないように感じがします」
確かにモンスターは弱いんだが、冒険者学校で訓練していなかったらおそらく今のような動きはできていないだろうし、苦戦はしたんじゃないだろうか。
「とはいっても、このダンジョンにゴーレム以外のモンスターが出てきても逆に処置に困るしな。もう少し先に進めば、ペアでゴーレムも出てくるんじゃないか?」
先ほどまでの生徒達の動きから考えても、ヘマタイトゴーレムが二体一緒に出てこようが、あまり変わり映えはしないだろう。
うーん。さらに問題が複雑化してしまった。生徒たちがここまで強くなってしまったことに
このダンジョンで、ある程度
俺の心配とは
もしものためにと投擲弾まで作って用意したが、過剰装備となってしまった。
その後も生徒たちは順調に実戦をこなしていき、昼食まであと30分くらいになったところで、
「みんなよくやった。それでは撤収する。周囲の警戒を
「はい!」
この程度の実戦では、生徒たちは全く疲れないらしい。生徒たちがここまで育ってしまった。困ったー。
帰る前に、俺はコアに指示をしていかなくてはならないので、
「ペラ、生徒たちを誘導して先に帰っておいてくれ」
そう言っておいた。
俺とアスカを置いて、ペラたちはやって来た道中を引き返していく。
引き返す間に、ペラたちはゴーレムに遭遇するかもしれないが、ゴーレムの残骸は持って帰れないため魔石だけの回収になる。それは仕方がない。
それじゃあ、俺も、俺の仕事を済ませてしまおう。
「コア、俺だ」
『はい、マスター』
「石炭でできたゴーレムって作れるか?」
『特に問題はありません』
「それなら、十日後くらいからヘマタイトゴーレム1体に対して、石炭ゴーレム2体を作って1層で動き回らせてくれるか?」
『了解しました』
「あとは、出入り口近辺のゴーレムの密度をもう少し下げてくれ」
『冒険者が入り口付近からゴーレムと
「それなら今のままでいい。それで、一層の拡張の方はどうなってる?」
『進んでいます。
「ずいぶん広がっているな」
『深くするより、浅層の拡張の方が簡単ですので、ここまで広げることができました』
「実際どこまで拡張できるんだ?」
『
なるほど、ここには土地問題なんかはないようだ。
そうだ、いいことを思いついたぞ!
「今から1層で拡張する部分については、内部を500メートル四方くらいで区分けして、その区域への出入り口を二カ所、一ヵ所は一つ前の区画、もう一ヵ所は一つ後の区画へ
『ある程度時間はかかりますが、特に問題ありません』
「ダンジョンの出入り口の近くに最初の区画への連絡路を一ヵ所だけ作ってくれ。
そこを冒険者学校の生徒専用の区画にしてしまうおう」
500メーター四方のダンジョン区画が直列につながっていれば四輪車の走行が楽だし、奥の区画ほど難易度を高めておけば十分だろう。そして、訓練区画の一番奥の区画の先にも2層への階段を作っておけば万々歳だ。
「コア、そんな感じで頼む。区画作成は進めてもらっていいが、俺が指示するまで新しく作る第一区画は塞いでおいてくれ」
『了解しました』
第二期生が入学したら、新しい区画を解放してそこで訓練しよう。こっちのダンジョンは一般冒険者と一般冒険者になる卒業生がここで仕事をしたいと言ったら使わせよう。
意外とダンジョンマスターとしてあれこれ考えるのもけっこう面白いじゃないか。
「マスター、訓練用の区画づくりはなかなかいい改造だと思います。一般冒険者と差別化できますし、
実際にやってみれば不都合は起こってくるだろうが、少なくともベターな改造のような気がする。
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