第307話 ブレト城2


 無事、エメルダさんをブレト城に送り届けたわれわれは、その一室で、グリフォンの二羽のヒナともどもくつろいでいる。


「アスカ、今何時だ?」


「4時半です」


「ショウタさん、わたしはお城の中って初めてなのでちょっと怖いような感じがする」


 確かに、部屋の外にトイレが有ったら夜一人では部屋の外には出たくはないな。幸いこの部屋にはトイレや風呂などは付属しているようで、城の中をうろつく必要はないみたいだ。


「俺もお城は初めてだけど、確かに少し暗いし、いかめしい感じはするな。とはいえ、俺もアスカもいるんだからラッティーは安心してていいぞ」


 これで安心してくれたかどうかは分からないが、実際俺はともかくアスカがいる以上安全であることは確かだ。



「マスター、隣にお風呂があるようですから、先に入ってしまいませんか? もうお湯は湯舟に入っているようです」


 ここから見えない風呂のお湯までよくわかるものだ。


 グリフォンのヒナたちはまた眠ってしまったので、何もすることが無くなってしまった。しかたないのでアスカに勧められた風呂に入ることにした。俺が先に入って、あとでアスカとラッティーが一緒に入るようだ。


 今回の旅行?用に用意した二人の着替えなどの入ったカバンを収納から出してやり、自分の着替えも持って


「お先に」


 服を脱いで、浴室に入ると、そこは新しい設備に新調されたのか、内装も少し明るめで、蛇口をひねるとお湯が出てくる最新式の設備のようだ。広めの湯舟にはアスカが言った通りすでにお湯が張られていた。


 特に疲れが溜まっているとは思っていなかったのだが、湯舟に入って足を伸ばして伸びをしたら、非常に気持ちが良い。すこし気持ちのうえだけだけれど緊張したのかもしれない。まあ、たかだか高2の俺が、えらそうによその国の王城まで来ているんだからな。無意識にでも緊張したのだろう。


 すこし風呂場でゆっくりしたかったが、アスカとラッティーを待たせては悪いので早々に風呂から上がった。


「いいお湯でした」


「それでは、私たちもお風呂をいただきます」


 何だか話している内容が、どこかの日本の一般家庭のようだ。


 アスカとラッティーが用意した着替えなどを持って風呂に入りに行った。


 ラッティーをブレゾの風呂屋で初めて風呂に入れた時は大騒動だっようだが、今ではラッティーも風呂に慣れている。



 俺は、一人になってしまったので、またグリフォンの二羽のヒナのところに行き寝顔を見て満足していた。しかし、ドラゴンの肉はこの二羽にも腹持はらもちがかなりいいようで、さっき水を飲んだきり、今もぐっすり眠っている。


 二人もそんなに遅くなることもなく風呂から上がって着替えて出てきたので、明日のことについて話し合う。まだ寝るわけでもないので、俺も含め、それなりの服装に着替えている。


「マスター、明日の予定はどうします?」


「もう何も用事はないから、エメルダさんに、迎えはいつ来てほしいか聞いて、今日一晩ここで厄介やっかいになって、明日の朝には帰っていいんじゃないか」


「街は見学しなくていいですか?」


「そうだなー、明日あした挨拶あいさつしてお城を出たら、午前中街を見物して、街の外から『スカイ・レイ』でセントラルに帰ろうか。アスカはここで何か見るべきものを知ってるか?」


「今のところ何も情報を得ていませんのでわかりません」


 それはそうか。



 そんな話をしていたらドアがノックされた。


「エメルダです」


「開いてると思いますから、どうぞ」


 風呂上がりでマッタリしていた俺たち三人を見て、なにかを思ったのかは分からないが、


「あと、一時間ほどで夕食になりますから、その時には誰かが迎えに来るのでよろしくお願いします。夕食の時は父と母もご一緒しますからそちらの方もよろしくお願いします」


「了解しました。おばあさまはいかがでしたか?」


「まだ何とか意識はしっかりしていまして、私の顔を見て泣いて喜んでくれました。私もですが、本人も私とはもう会えないと覚悟はしていたようです」


「そうでしたか、それは良かった。こういったことをお聞きするのは良くないことなのでしょうが、おばあさまはおとしで?」


「それもあるんですが、今年の年明けに歩いている途中転んでしまったそうで、そのとき打ち所が悪かったようで、それから寝込んでしまい急に衰えたようです」


「そうでしたか。教えてくれて、ありがとうございます」



『アスカ、「万能薬」はどう思う?』


『転倒して以来、具合が悪いということでしたら、どこかの大切な骨を骨折している可能性がありますから、「万能薬」が効く可能性が高いと思います。「エリクシール」を使えばもちろん全快するのでしょうが、加齢が解消できるわけではありませんし、使われた側も負担に思うこともあり得ますから、「万能薬」を使ってみて様子ようすを見てはどうでしょう。万が一「万能薬」の投与により容態が悪化したとしても「エリクシール」がありますから最悪の事態にはならないでしょう』


『それもそうだな。だけど、これまで高ランクのヒールポーションか治癒ちゆ魔法くらいは試してるだろうが、それで治っていないとなると少し厄介やっかいなのか?』


『それも含めて、「万能薬」の薬効やくこうに期待しましょう』



「エメルダさん、まだ食事には時間があるようですから、もしよろしければ、おばあさまの容態をさせていただけませんか? 実は、先日『万能薬』なるものを作ったもので、おばあさまに飲んでいただければ、少しは症状が改善できるかと思うんですが」


「すでに、本人も周りも覚悟はしているようですので、少しでも祖母が楽になるならお願いします」


 なんとなくお城を怖がっているラッティーを一人だけで部屋に置いておくわけにもいかないので、ラッティーも一緒だ。


 ブラッキーとホワイティーを部屋に置いておくのも心配ではあるが、これは仕方ないな。まあ、ミニマップでたまに確認しておけば問題ないだろう。





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