第288話 騎士団訓練場
今日は第3騎士団の方で、午後から外部から招いた
ギリガンは、
そういった事情で、第3騎士団の訓練場に
「なんだ、ここは?」
訓練場の真ん中にはあの女、普段着のスカート姿のエンダー子爵が二本の木刀を持って真ん中に
第3騎士団の騎士や従兵たちはというと団長のレスターを除いて訓練場の隅の方で、座り込んでいるのだが、人数が人数なので隅の方といってもかなりの場所をとっている。
彼女は一応面識のあるコダマ子爵に
「レスター、どう見ても訓練にはなっていないようだな」
「申し訳ありません。今日お招きしたエンダー子爵の腕前について、子爵の元で操縦士訓練を受けている若い者たちが総長並みだとか、それ以上だとか言っていたのを冗談だと思っていました。どうもそうではなかったようで、いまだに子爵に一撃も与えることもできず、すでにコダマ子爵からいただいたヒールポーションは500本を越えて使っています」
ギリガンにとっても
「世の中には上には上がいるということが分かってよかったじゃないか」
「そうおっしゃっていただけて、団員たちも
と、訳の分からないような受け答えをするレスター団長。
ギリガンは、第3騎士団が招いた武術講師があのエンダー子爵だとは知らなかったので、もし武術講師による訓練に効果があるようなら、その講師を勇者の訓練相手に招いてみようかと思っていただけに、今日、ここにきて確認した自分をほめたい気分だ。
そう思っていたのだが、
「そこにいらっしゃるのは、騎士団総長のギリガン子爵殿ではありませんか?」
「えっ?」
なぜか、
アスカが先ほど、4隊、二十四名をまとめて転がしたところで、以前商業ギルドの倉庫の前で会った騎士団総長のギリガンさんが訓練場にやってきた。お互い軽く
「そこにいらっしゃるのは、騎士団総長のギリガン子爵殿ではありませんか?」
アスカもギリガンさんを知っていたらしい。ギリガンさんも有名人なので知っていても不思議ではないな。
ギリガンさんの方は、アスカに急に呼び止められてかなりびっくりしたようだ。
びっくりするほどのことでもないと思うが。はて、どうしたのだろう?
「はい。うちの第3騎士団がお世話になっているようで、ありがとうございます」
妙に
「いえ、私の方は楽しい時間を過ごさせていただいていますのでお気になさらず。よろしければ、私と
ほう、これは珍しい。というか初めてじゃないか、アスカが俺以外に手合わせを求めるのは。こういった展開は予想外だ。おらぁワクワクするぜ。
アスカに急に手合わせを求められたギリガンさんが、額を大きなハンカチで拭きながら、
「申し訳ありません。今から
そう言って、そのまま
どうみても、目上の人に対するようなギリガンさんのアスカに対する態度に俺も少し
『騎士団総長にも断られてしまいましたし、騎士団の団員たちもかなりお疲れのようですから、マスター、このあたりで、私と
『ほえっ?』
なに? この超展開。今日は高みの見物モードでやってきただけなので、心の準備などできていませんヨ。
『試合って何だよ。俺がアスカとまともな試合なんてできるわけないだろ』
『騎士団のみなさんも、ただ転んだだけでは訓練になりませんから、なにがしかの有益なアドバイスとしての模範試合です。それでは、こうしましょう。マスターが適当に八角棒を私に繰り出す。それを私が
『アスカ、それはいままで俺たちがさんざんやって来た
『そんなことはありません』
「それでは、ここで私と、コダマ子爵が
「おおおーー!」「それは興味がある」「どんな試合になるんだ?」「あのエンダー子爵とそもそも試合になるのか?」
アスカのヤツ勝手なことを。ご主人さまはこの俺なんだが。まあいい。ここまできたら恥をかかない程度は頑張ってやるか。俺には、『吸い出しくん』もあるしな。
『マスターにもその気になっていただけたようで何よりです。ここは騎士団のみなさんの訓練の一環ですから、先日の収納を使った技は無しということにしましょう』
収納を使うなというアスカの言いたいことも理解できるしもっともだ、とも思うが、俺から言わせるとちょっと
ここまできたらもうヤケになってしまうぞ。
収納から、八角棒を取り出して両手で構える。アスカとの距離は今のところ20メートル。先ほどまでそこらに転がっていた連中も、みんなのところに戻ったようでポーションを飲んだり、腰をおろしたりしている。
訓練場は、一気にお
あれ、そう言えば乗合馬車で見学に来ると言っていたうちの四人はどこにいるんだ。訓練場を見回したら、ちゃんと訓練場の隅の方に固まって立っていました。
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