第216話 新迷宮
兵隊アリのあとについて入った穴は真っ暗だったが、アスカの持ったカンテラの明かりで周りが照らされて良く見えるようになった。穴の壁は真っ赤な岩石でできていて、これが鉄鉱石なのだろう。ところどころ黒い縞が入って、その部分は石炭のように見える。さらにその一本道を進んで行くと天井の高い広い場所に出た。そこには、数十匹の兵隊アリがたむろしていた。
その広場の周りには俺たちが通って来たような穴がいくつか空いているようだった。広場の正面には、ダンジョンの出入り口のあの黒い渦が渦巻いている。おそらく、兵隊アリたちは渦から出てくるモンスターを
「なんでこんなところにダンジョンの出入り口ができたのかな? それに、ダンジョンからモンスターが出てきたって聞いたこともないが」
「今はほとんどのダンジョンが管理されていますので、表層部でもそこそこモンスターを狩っていれば、ダンジョンの中からモンスターは湧いてこないんでしょうが、ここは誰も中に入ってモンスターを
「そういうこともあるのか。それじゃあ、中に入ってある程度のモンスターを間引いてやればいいのかな?」
「それでもある一定の期間、ここから湧き出てこなくなるでしょうが、放っておいたらまた出てくるでしょうから、最深部まで行ってコアを破壊するか、キルンダンジョンのようにマスターがこのダンジョンのダンジョンマスターになってしまうかでしょうか」
「最深部の深さ
「
「そうだな。ここで話していても
「はい。マスター。それでは、私が先に入ります」
先にたって渦に入ったアスカに続き俺も渦の中に入って行った。
渦から出た先は、いつものダンジョンと同じで薄暗いながらも、行動には十分な光量があった。ただ、ここのダンジョンは洞窟型ではなく石積みされたような直線的で人工的なダンジョンだった。使われている石の色が赤茶けたもののため一種異様な
先に立つアスカの方を見ると、さらにその先に割れた石の大きな塊が何個か転がっていた。空気に触れていた表面部分は赤茶けていたが、壊れて新しくできた断面はそれなりに黒くてつるつるしているように見える。
「マスター、ゴーレムがいました。鉄鉱石でできたゴーレムです。このゴーレムならそれなりに硬いようでしたので、マスターの
転がっていた石の塊はゴーレムの
「よし。久方ぶりだけど、頑張ってみるか。最深部までたどり着けなくても間引きになればいいからな」
「マスター、います。ゴーレムが二体、こちらに気づいたようです」
100メートルほどの先の通路の分岐のようなところから丸太を組み合わせて作ったような
近づいた二体は、赤茶けた体で身長は2メートルあまり、どちらものっぺらぼうだった。魔石は胸の奥にあるようだし、たおす気になれば魔石奪取アンド収納のコンボで一発だが、ここはアスカの言うように訓練のつもりで行こう。
いままで、右手だけで持っていた八角棒を、両手でしっかり持ち、腰を落とし気味にして、ゴーレムの接近を待つ。
先に八角棒の間合いに入った右のゴーレムに対し、どの程度の硬さなのかを試す意味で、
ドゴッ! 鈍い音を立て、八角棒の先端がめり込み、そこから亀裂が四方に入ってしまった。思った以上に柔らかい。そのゴーレムが今の一撃で一歩後ろにさがったので、今度は、左のゴーレムの頭の部分、位置が高いので額に向かっていったん振り上げた八角棒をたたきつけた。
ゴーレムの頭部はその一撃で跡形もなく粉砕されてしまい、その場で足をついて動かなくなってしまった。
残ったゴーレムに対し、もう一度先ほどと同じ個所に突きを入れてやったら、胴体が割れてしまい、そいつも動かなくなった。もったいないので、こいつらの残骸も魔石と一緒に収納してやった。
「マスター、ちょっと相手が弱すぎて、あまりいい練習相手にはなりませんでしたね。しかし、今のマスターの動きは良かったです」
最後の申し訳の付けたしは話半分にとっておくとしても、アスカのいう通り今の二体では練習にもならない。まあ、アスカがいるからそう思うのであって、いなければ、もっと弱くても十分だと思っていただろう。
「どんどん、進んで行こう。それで、下に
「その線で行ってみましょう」
そういうことで、俺たちは、渦からまっすぐ続く通路をそのまま進んで行った。何回かゴーレムに出会ったが、杖術の練習にもなりそうにないので、魔石奪取アンド収納のコンボでたおしていった。
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