第169話 ラッティー2、風呂屋
ラッティーを連れてアスカに案内された風呂屋にやって来た。
考えたら、俺もこの世界で
中に入ると、そこそこ広いロビーになっていて、
その受付のおねえさんはうす汚れたラッティーを見て少し嫌そうな顔をしたが何も言わなかった。そこに免じて、かなり汚れているラッティーの追加料金のつもりで四人分の料金を支払ったら、おねえさんがはっきりとうれしそうな顔をした。
世の中そういうものだ。いちいち気にせず出すものを出しておけば世の中は丸く収まる。などと、分かったようなことを考えてしまった。
「それじゃあ、アスカ、ラッティーをよろしくな」
「はい、マスター」
「ラッティー、アスカの言うことをちゃんと聞くんだぞ」
「分かってるよ。早いとこ風呂ってところに行こうぜ。楽しみだなー」
アスカにさきほどの包みとアスカの着替え、それにタオルなどの入浴用品を持たせ、その先の脱衣場の入り口で二人と別れた。
俺は脱衣場で、裸になり、タオル一本を持って、浴室に入った。
浴室の中はかなり広く、中央部分が人がつかる浴槽になっていて、そのわきに2メートル×3メートルほどの浴槽というかお湯をためた
軽く鼻歌を歌いながら、
「ふぃー。いい湯だなー」
ひーーー
やっぱり、今何か聴こえた。まあ、何かあれば、アスカが俺を呼びに来るだろ。最悪、エリクシールがあるから、死んでなけりゃどうとでもなる。
いやー、いい湯だ。100まで数えてから出るようか。
ひーーー、……ひっひーー
1、2、3、……、99、100。よし、
風呂からあがり、新しい着替えに着替えてから、入り口のロビーに出た。
受付の反対側に置いてあった長椅子に座り、二人が出てくるのを待つ。
収納庫の中から適当にジュースの入ったコップを取り出し、一気に飲んだ。グレープジュースだったようだ。
ブファー。
うまい。そんなに冷えたジュースではなかったが、そのぶん実に甘くておいしい。向かいのカウンターに座っているおねえさんがこっちを見ている。これだけおいしそうに飲んでいたら、そりゃ欲しくなるよな。ちょっと悪いことをしたか? さっき、ラッティーを嫌そうに見ていたんだから
なんだか、自分で言うのも変だが、もはや俺の中でラッティーが身内になっている。ここまで、見ず知らずの少女にしてやったことは、俺の自己満足で
結局、アスカに読まれていた行動だったわけだ。フッ、フフフ。さすがは、アスカ。さすアスだ。ついニヤニヤしてしまった。
ジュースを飲み終わってすることもなく椅子に座って二人待っていると、やっとアスカがラッティーを連れて女性用更衣室から出てきた。ラッティーがなぜかアスカの後ろから顔を半分だけ出して俺の方をのぞいている。何かあったか? あれ、受付のおねえさんもアスカたちを見て目をむいている。
「マスター、お待たせしました。ラッティーの体を洗うのと
「あれだけ体が汚れてたら、時間もかかるのも当然だ。ラッティー、初めての風呂はどうだった? 気持ち良かったろう?」
「アスカが怖かった」
「アスカじゃないだろ、私のことはアスカさんだ」
「はい、すみません、アスカさん」
どうしたラッティー? 野生児があの短時間でアスカに
状況はだいたい察しがついた。だけど、ラッティーがアスカの後ろから出てこないのはどうしてだ?
[あとがき]
「山口遊子」へのフォローありがとうございます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます