第143話 マスカレードイエロー始動2


 日用品と衣料品がそろったので、最後に新しい四人のベッドと寝具を買い、屋敷に戻った。


「ただいま」


「お帰りなさいませ。ショウタさま」


 メイドのミラが迎えてくれた。


「ただいま。ハウゼンさんを居間の方に呼んでくれる?」


「かしこまりました」


 ミラにハウゼンさんを呼んでもらって俺たちは居間に移動する。


「みんな座っててくれ。家令かれいのハウゼンさんに先に四人を紹介するから。夕食の時にほかのみんなに紹介しよう」


 そういっているとハウゼンさんがやって来た。


「お帰りなさいませ。ショウタさま。して、こちらの方々は?」


「いま新しい飛空艇をボルツさんのところで作ってるんですが、それを扱う人間を雇ってかってきたんです。みんな孤児奴隷ですが、今日からうちで暮らすことになるんでよろしくお願いします。

 先に四人の部屋を決めてください。決まったら俺の方で荷物を置いてきますから。あと、ゴーメイさんに今日の夕食から四人増えると伝えておいてください」


「かしこまりました。皆さんかわいらしいお嬢さんでよろしいですな。部屋の方は、四人で一部屋で大丈夫でしょうから、二階に上がって、シャーリーさんの部屋の隣で空いてる方でよろしいでしょう」


「分かりました。それじゃあ、四人とも俺について来てくれるかい? 四人の部屋に案内しよう」


 二階に上がって、四人に割り振られた部屋に行き、そこにさっき買ったベッド四つとそれぞれの寝具を並べ、預かってた荷物はまとめてベッドの上に出しておいた。なかなか慣れないようで、俺が収納で物を出し入れするたびに四人ともすごく驚いている。


 がたがたと俺たちが作業をしていると、プープー音が近づいて来てシローが現れた。知らない人が四人もいたら少しは人見知りするのかと思ったが、全く気にしないようだ。俺を見つけて、しっぽを振りながら足にじゃれついてきたので、魔石を一つ食べさせたら、それを口にくわえたまま、ボールをプープーいわせて部屋の外に走って行ってしまった。


 シローは魔石がほしいときだけ俺にまとわりついてくるようだ。モンスターのくせに妙な知恵がついたらしい。


 それを見ていた四人も驚いたようだったが、驚いてばかりだとこれから先困ると思うぞ。


「いまボールで遊んでたのが、シローって名前の、スノー・ハスキーの幼体ようたいだ。一応モンスターだけど、テイム済みなんで人を襲うことはないから安心してくれ。撫でてやると喜ぶからたまに撫でてやればいい」


 四人ともうなずいているけど、モンスターと言われればやっぱり怖いか。



「今日買った普段着に着がえたら、夕食まで部屋で休んでて構わないから」 


 四人にトイレの場所を教えた後、アスカと俺は下のリビングに下りてメイドのソフィアにお茶を頼んだ。ミラはゴーメイさんの夕食の仕込しこみを手伝っているらしい。


「アスカ、今日の四人はどうだい?」


「そうですね。鍛えればそこそこいけるんじゃないでしょうか。今の『スカイ・レイ』の操縦装置は一人用で私しか使えない仕様しようですので、今度の新しい飛空艇の操縦装置と見た目だけ同じものをボルツさんに作ってもらいましょう。それで、訓練していけば、飛空艇の操縦自体はできるようになると思います」


「それだと、ただレバーを動かして、カチャカチャやってるだけで訓練になるか?」


「私が、木で飛空艇の模型を作ります。レバーの動きに合わせて、その模型を私の髪で操作しますからある程度の操作と飛空艇の動きをつかめると思います。操作を失敗して模型が壊れれば、インパクトもあるでしょうし、覚えも良くなると思います」

 

 アスカ式フライトシミュレーターか。面白そうだな。 


「余った材木が納屋の方にありましたから飛空艇の模型を一隻作ってしまいましょう」


「アスカは新しい飛空艇の図面をボルツさんから見せてもらってるの?」


「はい。簡単な下絵のようなものですが」


 ふーん。俺はまだ見せてもらってないぞ。



「お茶がはいりました」 


 ソフィアがワゴンで、アスカと俺のお茶を運んできたくれたが、アスカは今いないので、


「アスカはすぐ戻ってくるからお茶は、そこに出しておいてくれていいよ」


 そう言ったが、そこに立ってアスカの戻るのを待つようだ。


 すぐにアスカが戻って来たが、持って来たのはずいぶん大きな飛空艇の模型だった。形は、『スカイ・レイ』によく似たエイ型だが、しっぽの部分がかなり太くなったようだ。今までと違い、しっぽの中にも人が入れそうに見える。整備性せいびせいは格段に上がりそうだ。


「アスカ様、お茶の用意が出来ています」


「ソフィア、ありがとう。そこに置いてくれる」


「マスター、どうです?」


 そういって、飛空艇を髪の毛で操作して見せるのだが、縦横一メートル近くある木製の模型が、居間の中を縦横無尽じゅうおうむじんに飛び回るものだから、ソフィアは頭を抱えてうずくまってしまった。



 さすがのアスカも、悪いと思ったのか、すぐに模型の操作をやめ、珍しいことにソフィアに謝っていた。


「アスカ、その模型はなかなかいいと思うが、操作練習は外でするようにしよう」


「壊れてもいいよう、あとで、もう二、三隻作っておきます」


 本人も気に入っているようだ。


 その後、れてもらったお茶を飲んでいたら、シローが玄関の方に飛んで行った。すぐに玄関のドアが開きシャーリーが帰って来た。シャーリーを居間に呼んで、今日から新しく四人の仲間が加わったこととその四人がいずれも孤児奴隷であることを伝えたところ、わがことのように喜んでくれた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る