第133話 シロー
シローを育てるにあたって足りないものを買おうと、近くの店屋に行くつもりだったが、アスカに連れられたやって来た最初の店は女性用
店の外から見てみると、女性用の下着なんかも売ってる店のようだ。
俺としては少し入りづらいが、シローのためだ、
店に入るにあたって、シローを歩かせたままにするのはマナー違反なのでシローを両手で抱きかかえたところ、
「マスターとシローは外で待っててください。私が中でブラシを買ってきます」
そう言って、アスカ一人で店の中に入って行った。俺の決意を返せ! 大した決意ではないがな。
すぐに買い物を済ませたアスカが店の中から包みを持って出てきた。
「マスター、シロー用にブラシと、シロー専用の
「ご苦労さん」
そう言っていったん抱いていたシローを道に降ろして、アスカから包みを受け取って中身を確認して収納し、次の店に向かった。
次の店は、この前マスカレード仮面の
今度こそと思いシローを抱き上げ店に入る。
ここで買ったのは、魔導ボール。ゴムのような柔らかい材質でできたボールで、魔道具らしく、押すとプップッーと音がする。さすが魔道具
この店は実によい店である。顧客のニーズに即した品ぞろえが実に
「マスター、こんなところでしょうか」
「そうだな、後はおやつだな。
とりあえずの買い物も終わり、魔道具屋を出てアスカと話しながら歩いている。
「シローは、
「そうか、シローもこのまま小さいままだと、かわいいけど
「さっきの魔道具屋ならあると思います。その時気付かず申し訳ありません」
何だかアスカが
「気にするなよ、戻って買えばいいだけじゃないか」
そういうことでもう一度、先ほどの魔道具屋に取って返し、レベル1の魔石を店にあるだけ買ってしまった。ついでに目に付いた黄色のシルクハットと仮面もセットで何個か買っておいた。誰に着けさせるかは今は
「マスター、そろそろお昼ですから食事にしましょう」
「もうそんな時間か。シローと一緒に食事できるところが近くにあるかい?」
「軽食ですが、道路わきにテーブルを出して、そこで食事できるカフェが有ります。そこですと、シローを連れて食事ができます」
「じゃあそこに行って食事にしよう」
「この子を連れて、このテーブル席いいですか?」
確認は必要だ。
「どうぞ、お二人さまですね。あら、可愛いワンちゃんですね」
「可愛いでしょう?」
ついシローを
「ご注文は、いかがしましょう?」
「私は、チキンのオープンサンドとコーヒーで」
「ローストビーフのクラブサンドとオレンジジュース」
「かしこまりました。そちらのワンちゃんでも食べられるメニューもございますが?」
「いえ、この子はテイムしたスノー・ハスキーの
「そうだったんですか。モンスターでもテイムするとこんなに
お
頼んでいた注文が来たので、食べながらシローにさっき買ってきたレベル1の魔石を食べさせてやる。ほう、嬉しそうになめてるな。ガリッ! 噛んじゃった。もう一個やろ。
「マスター、あまりあげすぎるとよくありませんよ」
アスカに注意されたので、もう一個で最後にした。健康のため食べすぎには注意しないとな。
サンドを食べ終わって、しばらくくつろいでいたところ、アスカに
「マスター、そろそろ帰りましょう。シローがどれぐらい走れるか試してみませんか?」
「それは面白そうだな。それじゃ『ナイツオブダイヤモンド』まで走って帰ろう。いいか、シロー、ちゃんと走るんだぞ」
シローが俺の言ったことを理解したかどうかは分からないが、しっぽを立てて小さく振ってるから喜んでるんだろう。
急に駆けだした俺に驚いたものの、すぐに俺に追いついて、追い越していく。リードがあまり張らないように気を付けてシローの後に付いて走るのだが、さすがに手足の短いシローではそんなにスピードは出ないようだ。それでも体全体のばねを使って、
モンスターだけあってスタミナは結構あるらしい。普通の大人の
『ナイツオブダイヤモンド』の最上階スイートのリビングでシャーリーの帰りを待っていると、四時ちょうどにシャーリーが帰宅してリビングにやって来た。
「ただいま、ショウタさん、ただいまアスカさん」
「お帰り、シャーリー」「お帰り」
「何ですか、そのかわいい生き物は?」
シャーリーがリビングに入ってきたところで、シローがシャーリーに向かって
「
「へー、モンスターにも子どもがいて人に
そう言いながらカバンを置いたシャーリーがシローを抱き上げて、ほおずりしている。
「シローは何食べるんですか?」
「この魔石だ」
そう言って今日買ってきた、シロー用の魔石をシャーリーに見せる。
「本来、シローにはエサは不要らしいが、魔石はおやつ代わりなんだ」
「そうなんですか。私がこれを上げてもいいですか?」
「ああ、いいよ。でも一つだけな。上げすぎるとよくないからな」
アスカに言われたことをそのままシャーリーに告げながら、今日買った魔石を一つシャーリーに渡す。
抱いていたシローをいったん床に降ろしてシャーリーがその魔石をシローに食べさせる。一度シローの頭をなでてからカバンを持って自室に入って行ったシャーリーに、シローがくっ付いて行ってしまった。
既に、シローは俺よりもシャーリーに懐いてしまったようだ。
俺の努力を返せ! でもまあこれはこれでいいか。
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