第130話 キルン再び
機上で飲み物を配ったり、軽食を配ったりとスチュワーデス?の仕事もひと段落したので、副操縦士の座席へ戻る。みんなも自分の座席に戻ってくつろいでいる。
「マスター、そろそろキルンの上空です。このまま通過して、南門から二百メートルほど先の空き地に着陸します。降下開始まで十分です」
「了解。
みなさん、間もなく当飛空艇は、キルンへ到着します。着陸動作中は危ないですから飛空艇が停止するまで座席から立ち上がらないようお願いします」
お約束はちゃんと言わなくてはいけないからね。
飛空艇は五分ほどかけて北向きになるよう百八十度旋回しながら降下した。着陸脚が接地したところで軽い振動が床から伝わってきた。
「『スカイ・レイ』無事着陸しました。加速器停止します」
「アスカ、ご苦労さん。いったん『スカイ・レイ』は収納するから、みんな外へ出よう」
タラップを下し、みんなでぞろぞろと飛空艇から外に出ると、キルンにいた時いつも
「後ろの二人は、ショタアスの二人じゃないか。お嬢ちゃんが、渋いローブを着てなかったからすぐには分かんなかったぜ。走ってなかったし」
「お
そりゃ、飛空艇から二人そろって時速四十キロで走って出てきたら異常だろ!
「これが王都でうわさの飛空艇っていう空飛ぶ船か? なんだか形はモンスターぽいけど、空から降りて来たときの動きは全然モンスターとは違うな。そうじゃなきゃ、俺たちもこんなに
「アハハ、間違いなくモンスターじゃありませんから安心してください。テスト飛行も兼ねて、
「
「はい、王都からここまで二時間で到着しました」
「ほんとならすごいと思うが、そりゃうそだろう? 王都まで馬車で二週間かかるのに二時間はないだろ。早馬でさえ何日もかかるのに、俺たちを
「今は証明できませんが、本当なんですよ」
「それじゃあ、そういうことにしといてやるよ。もうちょっと飛空艇を見ていたい気もするが、門を
「キルンが初めての人もいるでしょうから、われわれも街に入りましょう」
『スカイ・レイ』を収納してみんなを促す。エメルダさん以外は俺の収納はいまさらなので誰も驚かないが、彼女一人大いに驚いていた。それでシャーリーが小声で、この程度で驚いてちゃいけない。とか何とか言っていた。
「アスカ、もう昼だから南門の近くで食事できるところはあるかい?」
「はい。マスター。王都にあったテラスで食事のできる店を覚えてますか? その店がキルンに支店を出したのが、南門の近くだったはずです」
ほんとに何でも知ってるな。
「何でもは知りません。知っていることだけです」
はいはい。わかりました。
「それじゃ、みんなでその店に行きましょう。それで、アスカは店の場所は分かるの?」
「はい。先ほど『スカイ・レイ』を降下中、テラスのある店を確認しました。問題ありません」
それでわざわざ、降下中にキルンの街が見えるように北向きに方向を変えたのか。こいつ、計画的だな。
南門を抜けて十分ほどでその店に着いた。あいかわらず、店の人の案内も待たずにアスカがさっさとテラスのある方へ歩いていき、空いてるテーブルを二つ確保して、それをくっつけて八人席にしてしまった。当然店の人も見ていたが、アスカのあまりに自然な動きに見とれてるうちに何も言えなくなったのだろう。
アスカは遅れて来た俺たちに、勝手に
俺たちが座ったのを見て店の人が注文を聞きにやって来た。
「食後にデザートを食べなくてはいけませんから、昼食で満腹にならないよう注意してください」
アスカが仕切り始めた。
「それでは、私は鶏肉のパイ包み焼とパスタ、それに季節のサラダをお願いします。それとパンは多めに。飲み物はリンゴジュースで」
アスカのヤツしっかり量を頼んでるよ。
「わたしは、同じくパスタと茸のクリーム煮、飲み物は、オレンジジュースをお願いします」
シャーリーの注文も少ないとはいえないな。
他のみんなは
一品しか頼んでいない俺たちと同じくらいに食べ終わったアスカがすぐに店の人を呼び、デザートの注文を始めた。当然アスカの頼んだのはデザート二品と飲み物だ。
アスカに言われていたせいか、俺以外、みんなデザートを二品と飲み物を頼んでいた。注文が終わったようなので、俺は一人席を立ち、会計を済ませておいた。みんなに気を
キルンは迷宮都市で観光地ではないため、ちゃんとしたお
商業ギルドキルン支部のある商業会館の中に入ると、以前と変わらず受付に二人の女性が座っており、俺を見つけると二人とも立ち上がってあいさつしてくれた。
「これはショウタさま、お久しぶりです」
「どうもお久しぶりです。リストさんはいらっしゃいますか? キルンに来たのであいさつにうかがいました」
「わざわざありがとうございます。いま呼んで参りますので二階の応接室でお待ちください。こちらにどうぞ」
左側の女性に二階の応接室に案内され、ソファーに腰をおろしてしばらくしたとことで、リストさんとお茶のお盆を持った秘書のカーラさんが現れた。
「ご
「いえいえ、
「よしてくださいよ。ショウタとアスカで十分ですよ。アスカはいまシャーリーたちと一緒に商店街の方で買い物をしています」
「シャーリーさんたちというと、ほかにもショウタさまと一緒にキルンへお越しだったんですか?」
「ええ、ご存じかもしれませんが、空を飛ぶ船、飛空艇に乗って王都からキルンまでやって来たんですが、今回は飛空艇を開発した人たちと一緒でしたのでキルン観光をしてるんです」
「なるほど、なるほど。飛空艇のことは
「いえ、飛空艇は、今日一緒にやって来たボルツさんて言う人が作ったものですけどね。たまたま、私が援助したまでです」
「ほう、あの発明家のボルツさんでしたか。私もその飛空艇に乗ってみたいものです」
「もう少し大きな飛空艇を作る計画を今進めているところなんですが、それが完成したら、もう一度キルンに飛んできますので、ご招待しますよ」
「ありがとうございます。期待させていただきます。カーラさん、ショウタさまの借りていらっしゃる例の家の件、お願いします」
「はい。ショウタさまが借りていらっしゃる家のことなのですが、どうも、点検してみたところ、屋根の傷みが激しく、雨漏りもするようなのです。現在、ショウタさまたちも住んでいらっしゃらないので、この際取り壊し、新しく建て替えたいと思っています。
「もちろん、問題ありません。私の方も王都に屋敷を建てていますので、あの家は引き払おうと思っていたところです。ご存じと思いますが何も家の中には残していませんので、そちらの方もよろしくお願いします」
「それでしたら、契約
「よろしくお願いします」
とりあえず、あいさつと借家のことが片付いたので、俺はアスカたちと合流するため商業ギルドを後にした。
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