第117話 夜間飛行、帰還
『魔界ゲート』が、変な方向に向いちゃったのは、俺のせいのような気もする。いや、正直になろう。確かに俺のせいだ。とりあえず確認はしなくてはと思い、アスカと『魔界ゲート』を見にいった。砦の方では、たまに二、三匹で砦にやってくるサンド・リザードを余裕をもって
『魔界ゲート』に来てはみたものの、何だか傾いているようにも見えるが、俺ではどっちが表側だか分からないので何の意味もなかった。ゲートの北側に回ると砦からは死角になるので、そこに『スカイ・レイ』を出して、乗り込むことにした。
『スカイ・レイ』を秘密兵器にしているわけではないが、説明も面倒なので見えないところから飛び立つことにしたわけだ。死角といっても、飛び上がってしまえばどこからでも見えるので、意味はないのだが気持ちの問題だ。
「マスター。『スカイ・レイ』発進準備完了しました」
何の準備があったのかは知らないが、ノリのいい奴だ。
「『スカイ・レイ』発進!」
「『スカイ・レイ』発進します」
やっぱり復唱されると気持ちいいなー。
ゆっくり上昇する飛空艇。ミニマップを見ると、やっぱり砦の人達が北側の外壁に集まって来ている。驚かせたかな?
今回飛空艇は、旋回しながら上昇している。アスカが気を利かせて、砦が見える方向に飛空艇を向けてくれたようだ。砦の中の人が大勢手を振ってるよ。何を言っているのかはわからないけど、俺も飛空艇の中から手を振ってやった。意味ねー。
「着陸脚、収納完了。高度千。巡航速度まで加速します」
「アスカ、時刻は?」
「午後三時三十分です」
五時間後は八時半か。今回もうまくいって良かった。
だいぶ陽が傾いてきたようだ。来る前は考えてなかったけど、夜間飛行はどうなんだ? 飛行は何とかなっても着陸は?
「アスカ、夜間の飛行はどうなんだ?」
「帰りは街道沿いに南下しますから山に衝突するような危険はありません。もしも夜行性の飛行型モンスターが襲ってきた場合は、降下して着陸してから
「モンスターはそれでいけばいいな。それで、セントラル到着は夜間になるけど着陸の方は
「地面に近づけば、マスターのミニマップで地形の詳細が分かりますから、着陸は可能です」
アスカに任せておけば間違いないってことか。
『スカイ・レイ』の上面に丸いキャノピーを付けて、周囲が見えるようにした方がいいな。今度、ボルツさんに頼んでみよう。
そういえば、ボルツさん達もシャーリーも、まだ『スカイ・レイ』に乗ってないよな。今度みんなを乗せて
「アスカ。今回は急ぎでキャノピーをガラスで作ったけど、これって、
「それでしたら、ドラゴンの
「それなら、この前のドラゴンの目ん玉か?」
「あれほどの大きさの一枚物は、ほかに使いでがありますので、もう少し小さいドラゴンを見つけて、
ドラゴン
「たしか、王都の南西にヤシマダンジョンというダンジョンがあって、そこの五十層当たりのボスモンスターがドラゴンだという噂を聞いたことがあります。そのあたりのドラゴンですと、知能の低いザコドラゴンでしょうから逃げずに向かってきてくれます。周回して四、五匹ストックしておけば何かと便利ですよ」
まさに山菜採りだった。
「アスカ。俺も一応はキルンダンジョンのダンジョンマスターなんだけど、
「何か問題でも? マスターと私なら時間さえあれば、コアルームまで降りて行ってヤシマダンジョンのダンジョンマスターに簡単に成れます」
そういうことらしい。
西の山並みに陽は沈み、
「マスター、地球では月が地球の周りをまわって、夜空に輝いて見えるんですよね?」
この世界には月がない。アスカは俺の知識から月を知ってはいるが見たことはない。
「もし俺が元いた世界に戻ることができたら、アスカもついて来るか? 一緒に月が見れるぞ」
「マスター、私はこれから先何千年も生き続けるのでしょうが、マスターが生きている間は常にマスターと一緒です」
「ありがとう。アスカ」
その後、軽く軽食を
「前方に光の点がいくつも見える場所が王都じゃないか?」
夜間の光はかなり遠くまで届くようだ。
「はい、セントラルです」
「アスカ、今何時?」
「午後八時十分です」
帰りは妙なフラグを回収することもなく順調だったようだ。
「最後まで、気を抜かずに行こう」
「はい。マスター」
アスカが気を抜くことができるかどうかは知らんよ。おそらく気を抜くことはできないんじゃなかろうか。
『スカイ・レイ』が接地した軽い振動を足元で感じた。着陸成功。
「アスカ、ご苦労さん」
アスカは疲れないから、『お疲れさん』は変だものな。アスカが苦労したかどうかもわからないけどね。
ボルツさんが気を利かせて、ガレージの前の広場に灯りの魔道具を何個所か置いていてくれたので、狭い場所への着陸でも支障なくできたようだ。
出迎えに出てきてくれたボルツさん達に礼を言って、
「ボルツさん、往復二千五百キロ。問題なく飛行出来ました」
「あんがとな。ショウタさんのおかげや」
「それで、そのうち皆で遊覧飛行をしませんか」
「それはええな。あたしも一度くらいは乗ってみんとな」
「『スカイ・レイ』には、展望用の窓がないでしょう? 窓を付けたいんですよね」
「窓はどうしてもガラスになるやろ、正面のキャノピーは仕方なくガラスをつこうたけど、窓を増やすとなるとな」
「それで、いい素材を思いついたんで、採ってきますから期待しててください」
「そうなんか、ならあんじょう頼むで」
ボルツさんのところを辞して、シャーリーの待つ『ナイツオブダイヤモンド』に帰った。人通りの少ない夜道だったので二人で高速で駆けたのは言うまでもない。
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