第93話 収納士、最強!!
砦から二百メートルほど先に、
「近づいてみると思った以上にでかいな。しかも真っ黒い門。
「もし私の攻撃でこのゲートが壊れたらどうしますか?」
「別にどうもしないけど。この世界にとって、それはいいことじゃないの?」
「壊してしまうと、マスターが元いた世界へ戻る
「そういう可能性もあるちゃーあるけど。今はこの世界にアスカやシャーリーがいるから、特に帰りたいとは思ってないんで平気だ。貴族になって屋敷も建てているところだし生活も安定してるからな」
まあ、親には
「それでは、マスターが元の世界に戻らないためにも全力でこの門を破壊します」
俺にこの世界に残っていてもらいたいのか? 初めてのツンデレなのか? デレてないからただのツン?
「ありがとう、アスカ。まずはこの『魔界ゲート』がどれくらいのものか試してみよう」
アスカがな。
「それじゃあ、試しに髪の毛から行ってみよう」
アスカが無言でうなずく。
今まで髪の毛の
ビーーン!
と音がした。
「マスター、音速の二倍程度の速度で斬撃しましたが、手ごたえがありません」
「そうか、その感じだと、指先の斬撃でもダメそうだな。それじゃ『ブラックブレード』でやってみるか?」
アスカがもう一度うなずき、右手で腰の左側に差した『ブラックブレード+3』を
「マスター、先ほどは全力を出すと言いましたが、この足場ですと全力の1割程度しか力は出せません。それでも
アスカは『ブラックブレード+3』をゆっくり振りかぶり、一瞬間を置き振り下ろした?のだろう、全く
ドッゴーーン!!! ゴゴ、ゴゴ……
まるで爆発だった。衝撃波で吹き飛ばされた砂があたり一帯に降り注いでくる。それに何か嫌な臭いもする。オゾン
アスカの体で二分された衝撃波でコーン状にえぐり取られた砂の跡が砦の方まで続いており、
砦の中から何事かと、大勢の人が兵舎の中から出てきて、辺りを見回している。
ここまですごいとは思わなかった。アスカの体で弱まったはずの衝撃波でも
「ダメですね。刀が当たった感覚に
「ぺッ、ぺッ。分かった、アスカが全力を出せなくて俺的には良かったよ。いまさらだがゲートを鑑定してみる」
『魔界ゲート』
魔界と呼ばれる世界とこの世界をつなげる門。
材質:鑑定不能の金属。現在魔素
不壊
わざわざ不壊とあるからには、どうやっても壊れないのだろう。まあ、音だか
やはり、こいつを何とかするには勇者の聖剣頼みなのか?
「マスター、どうでした?」
「『魔界ゲート』は不壊だそうだ。だめだな。
「試しに、マスターが収納してみてはどうですか?」
「はあ? 収納できちゃったらそれはそれで問題だろ」
「しかし、収納できたら、『魔界ゲート』から現れるという魔族の問題は解決します。なにせマスターの収納庫の中は時間停止してる訳ですし」
「正確には、時間停止に設定している。まあ、あれこれ言っててもしょうがないからとりあえず、収納してみるか」
ここらで
『収納!』
「????、あるれー、あるれー、収納できちゃったよ。あるれー?」
目の前に
「マスター、落ち着いてください。これでマスターは世界の
「俺が世界の救世主? いやいや、ないない。
アスカ、やっぱりこれっていろいろまずくないか? ほら、そこで一生懸命『魔界ゲート』の開放に備えて砦を作っている人たちもいるし、勇者たちだって、そのために訓練してるわけだろ? 俺だって、そのとばっちりでこの世界に来たわけだし」
「いうなれば、二階に上がってはしごを外された上に、だるま落としで、一階を吹き飛ばされたようなもんですね」
難しい例えだが言いたいことは分かる。というか言いえて妙だな。
砦の中では、先ほどの
「アスカ、ここは知らんぷりして逃げよう。『魔界ゲート』をもう一度出すから知らんぷりだ。砦を大きく
砦の方から誰かこっちに向かって叫んでいるようだがここは無視だ、振りむいちゃだめだ。無視、無視。
『やらずに
そりゃあ、他人事なら言えるよな。
なぜか少々後ろ暗いような複雑な気持ちと、
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。
俺たちは何も悪いことをしてない。そのはずだ。忘れよう。
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