第80話 屋敷を発注する
王宮でいわれた年金受け取り用の口座開設と、リリアナ殿下の元に訪問するための上等な服を注文するため商業ギルド本部へ
上等な服の方は礼服を仕立ててくれた仕立て屋さんがすでに数着用意してくれているそうだ。最初から用意する予定だったが、礼服の方を優先したため遅れたとのことで、ありがたくお礼を言って受け取った。商業ギルドと『ナイツオブダイヤモンド』はすぐそこなのでシャーリーは一人でも大丈夫だろうと思い留守番させている。
「リストさん、色々お世話になりました」「なりました」
「何のこれしき。お気になさらず」
「あと、アスカともども
「はい、存じてます。ここからも中央市場からも近い大変良い土地のようで。ただ、海にも近いようですので
「それで、その土地に家を建てようと思いまして、建築屋さんを紹介していただきたいのですが」
「良い建築業者を存じてますのでお任せください。そうですな、明朝もう一度おいで願いますか? その建築業者にお引き合わせしますので」
「それでは明朝うかがいます」「うかがいます」
翌朝。
商業ギルド本部の応接室。シャーリーは今日も『ナイツオブダイヤモンド』で留守番。あとでフォローしとこう。まだ行ってない港でも行ってみるか。
アスカは子爵閣下にもかかわらず、相変わらず俺の後ろに立って控えている。
「こちらがお二人にご紹介したい建築業者のフォレスタルさんです。王都でも
「
フォレスタルさんは、背の高い痩せ気味のおじさんで、誠実そうな目をした人だ。
「ショウタと申します」「アスカです」「「よろしくお願いします」」
「私はこれから所用が有りますので後はよろしくお願いします」
「リストさんありがとうございました」「ありがとう」
リストさんは一度うなずいて部屋を出て行った。忙しい人だからね。
「フォレスタルさん、あと面倒なのでショウタと呼んでください」「アスカで」
「それでは、ショウタさま、アスカさま」『……さま』は顧客に対してデフォなのだろう。
「二区画を使ってお屋敷をお建てになりたいという事でしたが、よろしいですか?」
「はい、東西50メートル、南北100メートルになります」
「分かりました。後で土地は見せていただきますが、概略どの程度のお屋敷とするか決めていきましょう。お二人でどうしてもこれだけは必要だというものをお教えください。後は、貴族さまのお屋敷として必要と思われるものはどこもあまり変わりませんから大体の設計は可能になります」
「それでしたら、まず必要なのは、錬金作業のできる作業部屋です。床に
「作業部屋の広さはどの程度必要ですか?」
フォレスタルさんが取り出した紙束にメモをとっていく。
「そうですね、作業するのは当面二人ですのでそんなに広くなくてもいいんですが、後々どうなるかわかりませんから広めに十メートル四方ぐらいですかね」
「作業室は正方形でないとだめですか?」
「別に形は長四角でも構いませんよ」
「分かりました」
「後は、風呂ですね」
「分かります」
大きくうなずくフォレスタルさん。何が分かるんだよ。何か
「少し大きめでお願いします」
「はい、理解しております。大き目の方が
またも大きくうなずくフォレスタルさん。何を理解してるの? いったい何をするんだ?
「あと、男用と女用に2つお願いします」
「はあ? 男用と女用にお分けになる? 何の意味があるんですか? 何の意味もないと思いますが」
「やはり、風呂は二つお願いします」
フォレスタルさんが何だか勘違いしてるようなので強めに言っておく。
「お客さまの要望であれば致し方ありません」妙にお風呂に思い入れのある人だな。
「後は何かなー? サンルームはどうかな? 温室みたいにして植物を育てるんだ」
「マスター、年寄り臭くありませんか?」
「そんなことはないと思うけどな。雨の日も洗濯ものを干せるぞ。ですよね、フォレスタルさん?」
「サンルームは最近王都でも
「とりあえずそれも含めておいてください」
「かしこまりました」
「アスカ、後何かあるかな?」
「マスター、シルバーとウーマのため
「欲しいのは分かるけど、馬を走らせるだけの場所は有るか?」
「二頭は馬車馬ですから、そんなに広い場所は必要ないはずです」
「どうせ住むのは三人だからそんなに大きなお屋敷は必要ないからな。フォレスタルさん、四頭ぐらい入れる厩舎もお願いします」
「分かりました。飼葉や敷き
「住むのは三人の予定ですが来客もあるでしょうから五部屋くらいでお願いします」
……
「それでは、ご予算ですが、いかほどを上限にいたしましょうか?」
「そうですね、相場的にはどの程度なんですか?」
「通常の子爵さまのお宅ですと大体大金貨六百枚くらいでお建てになります。今までうかがったところ、錬金作業場とサンルームを除けば標準的な子爵さまのお宅と比べかなり小さなものになりますので、大体同じくらいの大金貨六百枚くらいでしょうか」
「それでしたら、そのあたりになるようお願いします。少々超えても構いません。
それでは、そういうことで、よろしくお願いします」
「かしこまりました。早急に図面を引いておうかがいします」
とうとう俺の拠点が手に入るのか。父さん見てくれ、
商業ギルドでの打合せも終わり、『ナイツオブダイヤモンド』に帰ると、ロビーから支配人さんが出てきて、手紙を渡してくれた。
アルマさんからの手紙で、リリアナ殿下にお会いできるのが明後日の午後となったそうだ。殿下もわれわれと会うのを楽しみにしてくれているようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます