第69話 エリクシール5
翌日、朝食後。
『ナイツオブダイヤモンド』の食堂で昼食用にサンドイッチと飲み物を用意してもらい、向かいの商業ギルド本部に向かった。
「おはようございます。今日もよろしくお願いします」「お早う、今日もよろしくね」「おはようございます」「お早う」
「「「おはようございます」」」」
「今日も、昨日の部屋を使わせていただきます。よろしくお願いします」
「はい。そのまま奥へいらっしゃって結構です。昨日同様、人が近づかないようにしていますのでご安心ください。あと、終りましたら、ギルド長のリストがお話があるようなので、こちらにお知らせください」
「了解しました」
さて、今日も頑張るぞ。
元
今日は、座って作業をしようと思うので、キルンの家で使っていた椅子を出した。
直接、作業に関係ない、アンジェラさんとシャーリーのために、椅子とテーブル、飲み物に軽い食べ物を出しておくのも忘れない。
器具の洗浄も終わり作業開始だ。
俺は昨日使ったドラゴンの血の入った大瓶を取り出し、アスカが同じ手順で蒸留器の中に必要量を注ぐ。
俺は椅子に座りリラックスしながら、蒸留器に魔力を注いでゆく。
……。
「マスター60分経過しました。完成です」
二本目が完成した。
俺はビーカーに溜まったポーション一本分の輝く液体を見ながらうなずいた。今回は気分的なものだろうがかなり楽だった。アンジェラさんは、今回もでき上がったエリクシールの瓶を眺めながら不思議そうな顔をしている。
「少し早いようですが昼にして、休憩しましょう」
サンドイッチをつまみながら飲み物をいただく。さすがに、アンジェラさんとシャーリーは、俺の作業を見てる間も、
二時間ほど休憩し、魔力が二千五百を超えていることを確認して、最後の一本に取り掛かる。
……、
「マスター六十分経過しました」
三本目が完成した。そのうちシャーリーに一本やろう。これで、シャーリーの残念体形が改善されるはずだ。
魔力はわずかに残っているだけだ。それでも悲しいことに俺の必殺の火炎攻撃は余裕で撃てるんだよね。
「マスター。作業が終わってから言うのは申し訳ないのですが、私の『大魔導士のローブ』を着て作業すればよかったですね」
「?」
「『大魔導士のローブ』には、一分辺りMPが2パーセント回復する機能が有りますから」
「そうでしたね。忘れてました」。これがorzなのか。
「作業は終わりました。今日で終了しましたので、ありがとうございました」
玄関ホールの受付で
「そうですか。お疲れさまです。
昨日と同じ青の受付嬢に連れられ二階の応接室へ。すぐに昨日のポーラさんが現れ、お茶を用意してくれた。
「ありがとうございます」
お茶を受け取りお礼を述べる。お茶を飲んでいたらしばらくしてギルド長のリストさんが現れ、お互い
「旅館の宿泊券ありがとうございました」
「ハインリッヒにしては気が利いたじゃない。ありがとう」
「ありがとうございます」「ございます」
さて、どれが誰のセリフかお分かりかな? まあ、ご想像の通りだと思いますよ。
「お気になさらず。作業の方は今日で終わられたとか」
「おかげさまで作業は先ほど終わりました」
「
「あんたは、昔から口が
「そうなんですか。お二人ともお若いのに、錬金術の素晴らしい才能がお有りなのですね」
「いやー、それほどでも」
おだてられてると分かっていても
「その、とても高価な薬とは
「ハインリッヒ、あんたも結構突っ込んでくるわね。何かあるの?」
「ハザウェーさまはやはり鋭いですな。ここだけの話と言っても、もうかなり広まっているお話ですので今さらですが。
第3王女のリリアナ殿下が病で
「そうなの。ハインリッヒ、あんたも大変ね。昔を思い出すような状況じゃない。ショウタ、話していいかな?」
俺はアンジェラさんにうなずく。
「あの時はお世話になりました。今の私があるのもハザウェーさまのおかげです」
「感謝しなさい。それで、あんたは自分の幸運にもっと感謝しなさい。ショウタたちのとても高価な薬はあんたたちっていうか、世界中の人が欲しがってた、あの伝説のエリクシールなのよ」
エルフ美女のドヤ顔いただきました。今は耳を短く偽装してるけど、やっぱりエルフだわ。そして、リアルでおじさんの
「私も、エリクシールの有名なレシピは存じていますし、その途方もない難易度も理解できます」
ハンカチで額の汗を拭きながらリストさんが続ける。
「エンシャントドラゴンを
「そういうことなの。そのエリクシールをショウタは、お姫さまのために王室に
ショウタ、対価はどうする?」
「そうですね、もともと、ご病気の王女殿下をお救いできないかと思って始めたことですし。今回いただいた宿屋のブラックチケットで対価はいただいたということでよろしいですよ」
そう言って、エリクシールを一瓶収納から取り出し、リストさんに手渡す。
「これが、エリクシール」
恐る恐る受け取ったリストさんの手の中のエリクシールがポーション瓶の中で白く煌(きら)めいている。
「ショウタがいいなら、いいんじゃない。
ハインリッヒ、それで良いそうよ。感謝しなさいよ」
「はっ、はい。ありがとうございます。ショウタさま、
そう言ってリストさんが深々と頭を下げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます