第60話 出発、そして王都へ
[まえがき]
旅立ちたくなるケルト音楽集
https://www.youtube.com/watch?v=1-rCqysqC0A
なかなか、雰囲気有ります。BGMにどうぞ
◇◇◇◇◇◇◇
その日の夕食は、台所も片付けてしまった後なので外食することにした。いったん家に帰りフレデリカ姉さんを連れ、ヒギンスさんを夕食に誘いに行った。
場所はいつものレストラン。フレデリカ姉さんとヒギンスさんはワインを頼んでいたが、俺を含めた残り三人は水で済ませた。アスカにワインを勧めてみたが、俺が飲まないのに飲めないと言って断られた。
翌朝、家の
「おはようございます。ヒギンスさん」「「おはよう」」「おはようございます」
「おはようございます。皆さん」
「それじゃあさっそく、馬のところに行きましょう」
「おはようございます。オーガスさん。ショウタです。馬を受け取りに来ました」
「おはよう。おーい、あの二頭を連れてきてくれー。ショウタさんから預かってる。そうだ。いや違う。栗毛の二頭だよ。そう、その二頭。急げよ」
また、落語が始まった。
馬を驚かせたらまずいので、先に馬車を収納から出しておいた方がいいだろう。そう思い、目の前に八人乗りの幌馬車を収納庫から取り出したら、人間の方が驚いたでゴザル。
二頭の馬が連れてこられたころ、ようやくオーガスさんは再起動した。
「当面の
連れて行かれた倉庫で、結構な量の飼葉と岩塩、飼葉桶に水桶二つずつもらったので収納しておいた。サービスだそうだ。
「ありがとうございます」
アスカは馬車に入っていた馬具で、二頭を馬車につなげている。初めてのはずなのに妙に手馴れている。
「
こうして俺たちの王都への旅が始まった。
パッカ、パッカ、パッカ、パッカ アスカの
パッカ、パッカ、パッカ、パッカ
「アスカ、馬に名前を付けないか?」
「それはいい考えです。マスターの名前のセンスは素晴らしいですから」
お前の名づけは俺だからな。
「俺は、前々から馬に付ける名前はシルバーと決めていたのだ」
「でも、二頭とも栗毛ですよ。シルバーの要素がありませんが」
「そんなことはどうでも
「分かりました。で、どっちがシルバーですか?」
「右の方にしよう。正直、二頭ともそっくりで区別がつかん」
「それでは、左の子の名前は?」
「そうだなー。ウーマはどうだ」
「それじゃあ
「俺的にはウーマだ。
「それなら、ウーマでいいです」
「何度も、ウーマ、ウーマっていってたら慣れるもんだよ。慣れだよ、慣れ。ウーマ、ウーマ」
「分かりました」
「風が気持ちいいなー」「そうですね」
二頭の馬に名前を付け終わった後、俺は今周囲を警戒している。
何かしらの気配を感じたわけではないが、仲間三人の生命を守る義務がある。なお、その中にアスカは含まれてない。彼女は俺を守らなくてはならないからだ。
そういうわけで、ミニマップに注意を向けて、潜んでいるかもしれない敵を警戒している。馬車や旅の人が行き交ってるわけだから、そもそも安全なんだろうけども。しかし、後悔は先に立たない。
「マスター、今十二時十五分です。そろそろ昼にしませんか? 後ろの皆も体を伸ばしたいでしょうし」
もう少し進んでおこうと、三十分ほど前に駅馬車の駅を通り過ぎたのだが、まずかったかな。
「
少し
馬車の中にいた三人も馬車から降り、外の空気を吸ったり、体を伸ばしたりしている。よく、ラノベなんかで馬車のサスが悪くて、尻が痛くなったとか話があるが、普通に馬車を進めている分には全く問題ない。
尻が痛くなるほど馬車が揺れるにはよほどの速度が必要だと思うし、そんな速さで馬は走り続けられないと思う。それに馬車自体もすぐに壊れるんじゃないだろうか。
アスカはシルバーとウーマを馬車から外して、近くの木に繋ぎ、地面に置いた飼い葉桶に飼い葉を入れ、横に水桶を置いた。
「マスター、水と岩塩をお願いします。あと、タオルとブラシを」
水を入れた樽を一つと桶を二つアスカの前に置き、岩塩の塊その他を手渡す。
アスカは馬の汗をタオルで拭いてやり、ブラシで毛並みを揃えてやっている。
俺の方は、平たい場所を見つけて、家で使ってたテーブルと
後片付けを終え、食後の休憩を少しとり、出発。
次の駅馬車の駅は宿場町だから、その次の駅までは行かずにそこの宿屋で今日は一泊しよう。
そんな馬車旅も、今日で三日目。
ガタゴト、ガタゴト。
眠気を誘う馬車の揺れの中で、俺だけはミニマップに意識を集中している。
おかしい、敵が出ない。ここは、盗賊
いくら集中しても出ないものは出ない。そもそも、王都から大都市である迷宮都市キルンまでの幹線街道に盗賊なんぞ出るはずはないのだが、そのことに気付かず、集中するショウタ。
「何だー? マップが縮んだ? 今急に遠くまでミニマップで分かるようになった」
アスカも俺のミニマップを共有しているのでミニマップの変化に気付いたはずだ。
「マスターのミニマップの表示範囲が拡大されたようです」
「みたいだな。大体今まで見てた範囲の倍か?」
「面積だと4倍です」
「ちょっと小さくて見づらいな。もうちょっとデカくならんか? あっ! 大きくなった。今度は大きすぎだなもっと小さくなれ! おう、これくらいでいいか。アスカこんなもんでどうだ?」
「マスターのお好みで。私には、
さいですか。言い方に可愛げがないやつだ。
王都への街道は、最初北上していくが、中ほどから、右手に連なる山地を見ながら、その山地を回り込むように大きく東に曲がってゆく。
途中の駅馬車の駅舎の宿泊施設に泊まったり、駅のある宿場町の宿屋に泊まったりして、十五日目の昼前に、最後の駅を通過し、なだらかな坂を登り切ったところで、白い外壁と運河に囲まれた王都セントラルの姿が望まれた。
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