第54話 突かば槍!払えば薙刀!持たば太刀?
つらい
「マスター、今日でいったん訓練を終了します。ご苦労さまでした。これまで、ただの一度も私に、八角棒を触れさせることもできなかったわけですが、それでもマスターは着実に強くなっています。安心してください。
しかし、まだ武術の入り口に立てたという段階です。これからも時間があれば鍛錬を行って、一度くらい私に触れるくらいになってください。以上です」
アスカも進化して
三週間近く棒を振り回して裏庭もぼこぼこにしちゃったんだから、そりゃあ、ある程度は
と思ってたらまさかの提案。
「マスター、明日は実戦訓練として、久しぶりに
「西の方には行ったことないな。どんなところだ?」
「野生の熊などが出るそうです。野生の熊ならマスターの魔石奪取が使えませんから、ちょうどいいんじゃないでしょうか?」
「危なくなったら、内部破壊やら高速弾は使うぞ」
「私の見立てでは、熊程度でマスターが危なくなるようなことはないと思いますが、もしそうなったら私が責任をもって対処します。
「ああ、あれな。魚の
そして翌日。
キルンの真ん中を東西に走るデクストラ通りから西門を出て、中央大砂漠を経てはるかパルゴール帝国へと続くという街道をしばらく駆け、そこから南に折れると、そこは大森林に続く林となる。
森の中と違い、陽の光が地面まで直接届くので、下草が
すぐにミニマップに反応があった。相手は一匹で行動中のようだ。
風向きを考えながら、
ミニマップ上では、敵を示す赤い点が小さかったので、強敵ではないんだろうと高をくくっていたのだが、目にしたのは巨大な灰色の熊だった。
魔石奪取発動手前の状態でその熊を見たが、魔石は持ってないようだ。こいつは野生の猛獣に違いない。モンスターのいない世界なら、陸上の生態系のトップに君臨する生物の一つになったろう巨大熊。しかも街道からこんなに近くに出没するとは大胆なヤツだ。そんなヤツに挑もうという俺も大概なヤツだ。
「アスカ、ちゃんとフォロー頼むぞ」
腰を低くして下草に隠れるように熊に近づいていく。両手は俺の
「ブバーーー!!」
気付かれた。あと一メートルほどで、間合いに入ろうかというところで、いきなり熊が振り向き、立ち上がって
下がれば、こちらが受け身のまま相手が追ってくるだろうから、ここは逆に、八角棒を前に構え直し、一歩前へ出て間合いを詰める。
こんなに相手に近づいたのは初めてだ。縛りプレー、つれー。
これに比べての必殺コンボもそうだが、収納を使った攻撃はほんとチートだわ。見えさえすれば相手を
熊という動物は、骨格の構造上、腕を外側に振れないということを聞いたことがある。それなら、俺が力を入れやすい右から熊を攻撃できるよう、相手の左に回り込みつつ相手のスキをうかがうのが吉だろう。頼むよ、俺の豪運。最近火を
こうなってくると、下草が邪魔だな。体勢を崩さないようにすり足で回り込もうとすると、草が邪魔をしてスムーズな移動が難しい。
ヤツは、ただ突っ立てるだけのアスカのことが気になるのか、そちらの方にもチラチラと目を向ける。
ここだ!
「突かば槍ー!」
突き出した八角棒の先が、ヤツの肩口をかすめる。ヤツは大きく体勢を崩した。
「払えば
そこから右の払い。軽く払ったつもりだったのだが、八角棒の当たったヤツの左足は足首から先が吹っ飛んでどこかに行ってしまった。これは豪運が火を噴いた結果なのか? そこはどうでもいいが、まーたグロだよ。
ブバーーー!!
ブバババーーー!!
ヤツは左足から血を流し倒れ込みながらも、狂ったように吠え続けている。
もうグロでいいよ。八角棒を熊の頭目がけて振り切ったら、その頭が
戦闘後、疑問に思ったのだが、「持たば
「今の戦い、お見事です。マスター。ただ、」
「ただ?」
「ただ、熊の死骸をこのままにしておけませんので、マスター、片付けてください」
「はい」
こんなぐちゃぐちゃなのが何かの役に立つのかー? 頭が無くなった時吹き出た血で、ドロドロだぞ。まあゴブもたくさん入ってるし、いまさらか。ゴブと一緒に入っている食べ物の方がもっといまさらか。
その後、一匹の
現金化するためには、やはりでき上がりが大事なので、猪については、アスカの髪の毛による斬撃で、
ちなみに、
そうだ『
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