第23話 拠点整備


 いったん、きょてんに帰り、シャーリーに空いていた一番奥の部屋をあてがった。シャーリーにはその部屋を掃除そうじしておくように言いつけておいて、俺とアスカは料理をシャーリーに教えてくれる人を商人ギルドで紹介してもらおうと、商業会館に向かった。



 商人ギルドの受付には今日も二人の女性が座っていたので、今回は左側の女性に話しかける。いつも通り特に意味はない。


「あのう、すみません」


 隣の女性は前を向いている。


「ショウタさま、本日はどのようなご用件でしょうか?」


「かくかくしかじか、

 それで、料理を教えてくれる人を紹介していただけないかと思いまして」


「かしこまりました。係の者を呼びますので、こちらでしばらくお待ちください」



 今日も二階の応接室に案内されて、しばらく待っているとカーラさんが入って来た。


「料理のできる人をお探しとか?」


「かくかくしかじか、……、

 というわけでして」


「それでしたら、三カ月くらいの期間でよろしいでしょうから、ショウタさまのお宅の近くに居住する方で、該当がいとうする方を探してみます。すぐに見つかると思いますから、明日午後早めに、こちらにお越しください。

 人物に問題がないようでしたら、翌日からお宅に通うことになると思います。だいたい、この程度の家事手伝いですと、一カ月あたりの給金の相場は小金貨一枚ほどです」


「よろしくお願いします」


 お手伝いさんの目途めどが立ったので、これで一安心。


 そろそろ昼だな。家に戻って、シャーリーを連れて三人で近くの食堂で昼食にしよう。



「ただいま」


「おかえりなさいませ。ご主人さま」


 普段着の上に、仕事用に買ったこんのエプロンドレスを着たシャーリーが出迎えてくれた。どこのメイド喫茶? 行ったことないけど。


 いいね、おかえりなさいませ。ご主人さま。


 掃除の終ったシャーリーの部屋に、ベッドやらなにやら荷物を取り出しセットしていく。重いものはもちろんアスカの担当。


 近くの食堂で食事を済ませた。シャーリーは、小食ではなかった。とだけ言っておこう。


 その後、シャーリーはいったんきょてんに帰らせ、俺とアスカは魔道具屋へ。


 家庭用魔道具屋で、くるくる回るようなものはないか探したが、見つからなかった。そう都合つごうよくいくわけないか。


 その代り、水の出る魔道具があった。金貨五枚と値が張ったが購入した。元はすぐ取れる。魔力の続く限り水が出るというもの。新品の魔素貯留器一つ分の魔力で大体、大樽十杯分の水が出るそうだ。出てくる水はもちろん純水だ。


 生活用に使うには大樽十杯分の水ではすぐなくなるので、生活用水は今まで通り井戸水を使おう。シャーリーでは力がないし危ないので、アスカには申し訳ないが、朝一あさいちで、井戸から樽に水を汲んで台所に運んでもらうことにした。



 ポーションづくりの効率化を図るのに何かいい手がないかな? そうだ、フレデリカ姉さんのところに行って相談して見よう。



「こんにちはー、フレデリカ姉さんいますか? ショウタでーす」


 入りにくい扉をくぐって、店の中に入り、奥に向かって何度かフレデリカ姉さんを呼んでいると、


「おや、ショウタ、こんにちは。今日は何だい?」


 やっと、出てきてくれた。


「実は、ポーションを作ってみたんですけど、どうも一回で作れる量が少なくて。もう少し多く一度に作るには、何かいい手はありませんかね?」


「そうさねー。錬金釜れんきんがまを使えば、一度にたくさんポーションができるけどもねー。錬金釜だと作れるポーションの種類が限られるからねー。とりあえず、どんなポーションを作ろうとしてるんだい?」


昨日きのうは、試しにスタミナポーションを作ってみたんですけど、PAポーションを作りたいんです」


「あれは、買い手が多い。売れ筋だから良いんじゃないか。とりあえず、PAポーションが作れる錬金釜を見てみるかい?」


「ぜひお願いします」


「ちょっと重いから、こっちに来てくれるかい」


「はい」



 連れられて入った奥の部屋は、店の中よりよほど明るく、部屋の幅も広くなって、天井も高い。こっちの方が店らしい。いろんなものが所狭ところせましと置いてあった中で、部屋の隅に転がっていた火鉢ひばちのような釜がそうだと言われた。


「ちょうど、一つだけ残ってたようだね。そいつは、三種類までの材料を使うポーション作り用の錬金釜だ。値段は大金貨三枚。払えるかい?」


「ええ、何とか。追加で蓋つき瓶を何個かお願いできますか? できれば大き目で」


「大きいのは、一つ銀貨一枚だ。何個欲しい?」


「それじゃ六個もらえますか」


「大き目の蓋つき瓶はこの箱だったかね」


 箱の中にはちょうど六個瓶が入っていた。代金を支払って、釜と箱を収納。


「それじゃあ、ありがとうございました」


「何かあったら、またおいで」




[あとがき]

ここまで、読んでくださりありがとうございます。♡、ブクマ、☆等ありがとうございます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る