第10話 マキナドール


 散髪屋の椅子いすに座ってうつらうつらしていたら、そのうちに腹が減ってきたので、保存食の干し肉をいくらかかじり水を飲んだ。


 この塩味だけの食事にはさすがに馴染なじめない。やはり、早急にダンジョンを出てまともな食料を調達せねば。


 そういえば、光物ひかりものと思って思わず収納してしまったあのコア守護者だっけ、あれはどうなってるかな。


 意識を収納庫に向ける。


 いるよ、『マキナドール』。見た目は全身青色の金属で出来たマネキンだな。ちょっと怖いけど出してみるか。俺が今はダンジョンマスターなんだから俺の命令を絶対に聞くよな。


『排出』


 出てきました。『マキナドール』。スレンダーでカッコいいよ。現状、銀色の髪の毛と鼻筋だけわかるのっぺらぼうのマネキンだけど。


「えーと、君、名前は?」


「名前はいまはありません。マスター」


 おっ! 声は女の子だ。俺のことは、マスターと呼んでくれるらしい。形状も女の子と言えば女の子だしな。これで男の声だとそのまま収納してたかも。


「じゃあ、俺が名前を付けよう。うーん。……、アスカ! これでどうだい?」 


 中学の時、気になってた同級生の女の子の名前。バレンタインで放課後までチョコレートを待ってたけど、なにももらえなかったなー。万が一、アスカを連れてるときにあの子に会うことが将来あったら、赤面じゃすまないな。


「了解しました。私の名前は『アスカ』、ありがとうございます」


 マネキンのアスカを連れて、街へ出るのはちょっと難しい? 収納してれば大丈夫? やっぱ、一緒に居たいよな。


「アスカ、今はのっぺらぼうのマネキンだけど、俺みたいな人間っぽくなれるかい?」


「形状は変更可能です」


 俺は黙ってうなずいて、


「カッコよく成れるならやってみてくれ」


「マスターの記憶を参照して、カッコいい『人間』に形状変更します。マスター、私のこの手を握ってください」


 アスカの差し出した手を握るとひんやり・・・・していた。


「マスターが好ましいと感じる『人間』に形状変化しました。いかがでしょうか?」


 好ましい? カッコいいとちょっと違うような気もするがどっちでもいいか。


 俺が思い浮かべたまんまだ。同級生の堀口明日香ほりぐちあすかが十八歳くらいに成長したらこうなるんじゃないかといった姿だ。素晴らしい。ただ、髪は銀髪のままで目の色は青かった。


「うん。素晴らしい」 


 目の前のアスカはまさにビーナス。そして、マッパだ。


 早いとこ服を着せなくちゃいけない。男子高校生は焦る。


 収納庫の中には女物の下着はないな。それらしいものが何か無いか?


 収納庫の中を意識してあさる。宝物庫からいただいた防具の中にそれらしいのがあったよな。これなんかどうだろ?


「武術家の胴着どうぎと帯」(物理攻撃力+10、物理防御力+5、素早さ+10、巧みさ+10) 


「武術家のズボン」(物理防御力+5、素早さ+10、巧みさ+10) この二つは紺色で、布製に見える。 


「武術家のブーツ」(物理防御力+5、素早さ+10、巧みさ+10) これは、黒。たぶん何かの革製だろう。


「大魔導士のローブ」(魔法防御力+20、MP回復2%/1分、使用MP半減、温度調整、魔法効果20%UP、フード付き) これは、渋柿しぶがき色? ドドメ色? 黒みがかった赤茶色で素材は不明だわ。 


 こんなところかな。


 名残惜なごりおしいがさっそく着てもらう。


 なかなか良いんじゃないか? 俺にもやっとこの世界で仲間ができた。 



 俺の方もついでに、目に付いたアクセサリーをつけることにした。


「活力の指輪」(スタミナ回復2%/1分)


「生命力の指輪」(PA回復2%/1分)


「祈りの指輪」(防御力+3、素早さ+3、巧みさ+3、Lv4までの呪い無効)


「大盗賊のブーツ」(防御力+5、気配遮断けはいしゃだん、素早さ+10、巧みさ+10)


 こんなところだ。


 名前:ショウタ・コダマ 16歳

 Lv:785

 職業:収納士 Lv5/5

 種族:ヒト族|(チキュウジン)


 物理防御力:796(1×785+11)

 魔法防御力:796(1×785+11)


 PA    3,920/3,920(自然回復+2%/1分)   


 MP    3,980/3,980    

 スタミナ  3,955/3,955(自然回復+2%/1分)    


 体力    192/192     

 精神力   200/200     

 素早さ   200+13/200     

 巧みさ   207+13/207     


 運     163


 スキル:収納Lv10/5

 称号:スキル限界突破者、深淵の迷宮踏破者、第1の深淵の迷宮ダンジョンマスター

 加護:収納神の加護

 特殊:「第1の黒の書」接続済、Lv4までの呪い無効




 ちなみに、アスカはというと、


 名前:アスカ

 マキナドール


 物理防御力:7,515(+15)

 魔法防御力:7,520(+20)


 PA    120,000/120,000

 MP         0/0


 スタミナ  500,000/500,000


 体力    150,000/150,000

 精神力        0/0

 素早さ   750+30/750

 巧みさ   750+30/750



 アスカさん パネー! 俺、アスカさんに付いて行くっす。



「アスカ、お前の攻撃手段を教えてくれる?」


「基本は、指を伸長させての刺突しとつと、その指による斬撃ざんげきです。敵が多数の場合は、髪を伸長させて斬撃も行いますが、指からの斬撃と比べ威力は落ちます」


 刺突と斬撃、それと操糸術そうしじゅつ? カッチョイー!!


 うん、それだけだと、見た目にはながない。それなら両手に刀を持たせて二刀流、ソードダンサーてのもカッコいいんじゃないか? 刀だと、ソードじゃなくてブレードだから、ブレードダンサーかな。名前はどちらでもいいけど、


「刀ってわかる? ってて切ることに重点を置いた武器かな」


「はい。存じてます」


「それ使える?」


「問題なく使えます」


 なんかカッコいい刀なかったかな? あった、これなんかどうだ?


「ブラックブレード+3」(不壊ふかい、物理攻撃力が三倍になる)


「ブラックブレード+2 EX」(不壊ふかい、物理攻撃力が二倍になる、状態異常付加)


 どっちもエグすぎる。でもいいよね。かっこいいは正義だ。


 収納庫から取り出してさやから抜くと、二本とも名前通りの刀身が真っ黒の刀だった。鞘ごとアスカに渡す。ちょうどいい剣帯けんたいもあったのでこれも渡しておく。


「ソードダンサーの剣帯」(素早さ+10、巧みさ+10)


 剣帯に刀をセットし、ローブの上から腰に締める。2本の刀は腰の後ろでクロスするように差すようだ。


 これで、アスカは


 名前:アスカ

 マキナドール


 物理防御力:7,515(+15)

 魔法防御力:7,520(+20)


 HP    120,000/120,000

 MP         0/0


 スタミナ  500,000/500,000

 体力    150,000/150,000

 精神力        0/0

 素早さ   750+40/750

 巧みさ   750+40/750


 アスカがブラックブレードを抜刀ばっとうした時の攻撃力については知らん。多分ものすごいことになると思う。


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