わたしを余らせなかった(Twitter300字SS)

伴美砂都

わたしを余らせなかった

 おとなしいと言われる子どもだった。そのせいか、余ることが多かった。遠足の班決めで、登校班の列で、遊びに行った先で。大学ではひとりで過ごすのだろうと思っていた。

 杏南あんなちゃんはわたしを余らせなかった。隣の席に座り、グループの一員として遊びに誘い、同じお店でアルバイトを始めた。そして、わたしがしまむらの服を着ていれば「しまむらってださいよね」と言い、シャトレーゼの袋を持っていれば「シャトレーゼって安い味だよね」と言った。

 ひとり歩く地下街は明るく感じた。杏南ちゃんはわたしのことを傷つけたかったのだろうと思った。どうしてかはわからない。でも、だからこそ、杏南ちゃんはわたしを余らせなかったのだろうと思った。

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