鉄壁の覇者

ノッキー

序章:ダンジョン

 "No Imagine of Games"略して"NIG(ニグ)"と呼ばれる物が世界共同で開発された。これは生まれた時に付けられる端末の事でこれにより普通は見えない自身のステータスを見れるようになった。攻撃力、俊敏力、回避力、防御力、持久力、魔力、妖力、超能力、運の9個のステータスを見れるようになっている。攻撃力、俊敏力、回避力、防御力、持久力はそれぞれ体の強化具合を示している。魔力、妖力、超能力は各個特殊能力の威力具合又は熟練度を示している。言っておくと、魔力は魔術に使われ強化系の特殊能力に特に使われる力ことが多い能力であり、妖力は妖術に使われ召喚系の特殊能力に使われる力であら。超能力は他二つの特殊能力とは違い唱えること無く発動出来る特殊能力の事を示している。これらはLv(最大Lv.150)ーーー人間の日常での経験で溜まって行った経験値を数字化し、ある一定の数値を超えると上がる人の総合評価的な数字ーーーが上がる度に一定確率で発現する物である。後は能力(スキル)と言うのがあって、戦闘補助や日常補助など広くに渡って使える力である。これは特殊能力と同じくLvが上がる度一定確率で発現する。ただし、生まれながら持つ個人能力(パーソナルスキル)と言う物も存在している。そして、今それを確認しながら目をこする。


「…………何もしないと本当に暇だなぁ」


勿論意味も無くこのNIGを作たわけでは無い。今の日本そして世界の地下には広大な迷宮(ダンジョン)が存在しており、そこから出てくる怪物たちと戦うために生み出された機械である。しかしながら、未だにその迷宮がいつ作られたものなのかまた、何が目的なのかは一切知られていない。それどころか、迷宮は奥が深く未だに深淵まで行けた人は誰一人としておらず、真意はまだ謎のまま……ただ、日本に限りその探求は凍結してしまっている。なぜかと言うと今の日本は十年ぐらい前に地上に怪物が侵略して来た時があり、そのせいで主なダンジョンの入り口は大きな公共機関の建物で封をして居る状態である。そのせいでダンジョンに住む怪物達がランダムで入り口を地上に作り攻め込もうとして来る回数が増してしまったのである。それを人々は"ダンジョンドア"、訳して"ダンドア"と呼んでいる。そして日本国民はそのダンジョンに続く扉が目の前に現れた場合、近場に居る人が怪物達を討伐しに行くか、扉のランクに応じた人を連れてこなければならないのである。それが今の日本で現状である。そして今俺は仲間と共にそのダンジョンの中にいる。階層は六十層、洞窟の見た目をしており主に海の生物を中心とした怪物がいる層である。別名海洋層とも呼ばれている層である。


「ふわぁ、暇だし面倒臭いし、なんでこんな時間なんだよ」


今いる層の中で一番大きい広間みたいな行き止まりの部屋の中で、長年切っていない、いや切れない長い髪を揺らしながら、俺はため息を付く。現時間は午前一時、正直に言うと寝たい。だが、俺らが所属している日本冒険者ギルドの要請によりここに来ているので、帰るわけにはいかないのである。


『こっちエリアAにいるリュウ、標的を発見、そして逃げられた。一応地図に反応するレーダーは付けといたからそれを見て皆行動して、私はリーダーと合流する。あ、あとルー気をつけて行動して』


ザザッと音が聞こえ、耳につけていたインカムに仲間の一人の声が入ってくる。


『こちらエリアBにいるルーだよ。敵の姿が見え……た……よ……、ちょっと待って……もう嫌……なんでこいつが……と、取り敢えずリーダーがいる方に向かうように仕向けるよ、うん』


『エリアC今の所問題ないわ、リュウちゃん、ルーちゃん了解ですわ、来たらリーダーの方に誘導する……おっとごめんなすって、普通の敵と遭遇いたしましたわ、戦闘に入りますわ』


それに続いて入ってきた仲間のやりとりを聞きながら俺は指示を出す。


「目標地点、今の所異常なし、ミッズーは遭遇したその敵を速やかに排除してくれ、それから、ルーは誘導後、扉のところに戻った後、ミッズーと合流してくれ」


『うん、わかったよ……もう心折れそうだから』


それから、俺はポケットの中にしまったいた携帯を取り出して、画面をつける。画面には、この階層の地図と仲間の居場所や標的の位置が映し出されていた。そして、俺のいる部屋の入り口に仲間の一人が到着したのを確認して口の端を上げる。


「……それと相棒、到着したか」


『到着した、応答頼む』


「了解、やっぱ早いな」


部屋の入り口に巨大なスナイパーライフルを持った胸が大きい黒髪に紫目で、黒と白のチェック柄のスカートと黒いパーカーを着た少女……まぁ先程までリュウと呼ばれていた、俺の相棒である龍崎 陽野が現れる。


「私を誰だと思ってるの」


「相棒さ」


その言葉にふっと笑いを返し、リュウは俺の元に来る。それからスナイパーライフルと反対側に背負っていたバックの中からダンジョンと同じ石の色をしたフード付きマントを取り出て、リュウはそれを身につける。


「じゃ私は、定位置に着くね」


「あぁ頼む」


少し遠い場所にある大きな石の影に隠れて、相棒は肩からへカートⅡを下ろし、岩の後ろで射撃態勢に入る。そして、ザザッと通信が入る音がして、こちらルーとゲンナリとした声が聞こえて来る。


『目標をエリアCの方向に向かわせましたよ……扉の方に向かいます』


『こちらエリアC、敵を撃破、目標を確認しましたわ』


画面を見つつ頷くと、携帯をポケットにしまいながら次の指示を出す。


「ミッズーは標的をそのままこっちに向かわせてくれ、そしたら時間稼ぐ、その間にルーと合流して一緒に来てくれ」


『了解し……おっと、わ、この怪物、この怪物が今日の印ありですの⁉︎……よくルーちゃん発狂しなかったですわね⁉︎』


『カサカサしてて気持ち悪かったよ、発狂したかったよ、発狂したかったけど、頑張ったんだよ私‼︎』


ルーがそこまで嫌う物と言って俺はすでにピンと来ている。まぁルーが苦手な物はダンゴムシみたいな多触手生物か、足が大量にある生物と怪物である。ただ、ルーは蟹などの怪物でも同じように苦手意識がある。


「まーここが海関係のダンジョン層だしな、そう言うこともある仕方ない事だろうな…だから扉の方に戻れって言ったんだ」


『ま、強ちその判断は間違えじゃ無いかもね』


「お前はここにいるんだから、一々インカム使うな」


えーとインカム越しにリュウの聞こえる。いや、えーじゃねぇよ、えーじゃ……近くにいるだろお前はと心の中でツッコミを入れつつ腰に装備している剣の柄を弄る。そして、またザザッとインカムが鳴りリーダーとミッズーの声がしてくる。


『そろそろ着きますので準備お願いしますわ』


「りょーかいって言っても、準備するのは俺じゃ無くて…」


『私の方だから』


あぁそうだなと俺が答えると、ダッダッダと走る音とカサカサカサと言う音が聞こえる。


「さ、来るぞ…」


白い鎧に身を包んだ金髪に青目の女子…さっきのインカムのやり取りでミッズーと呼ばれていた宮ノ下•R•瑞希が部屋に走り込み、その後ろを額に三日月に剣が刺さった赤い模様が入っている巨大な蟹がついて来ていた。ミッズーが目の前まで来た所で射撃態勢に入っている相棒に指示を出す。


「打て!!相棒!!」


ドォォォン‼︎と言う大きな音が聞こえ蟹の腹にへカートの銃弾が打ち込まれ、蟹が痺れたように動けなくなる。こちらに飛び込んできたミッズーを背中に手を回しどうにかして受け止める。


「ナイスショット」


『どういたしまして』


相棒の能力の中にある"影の初撃"と言う効果で、敵に自身が未発見時、遠距離攻撃を敵に当てると敵が二十秒間麻痺すると言う能力がある。その能力により今目の前にいる蟹は麻痺をしている。


「ミッズー、合流して来てくれ」


「了解ですわ」


背中に回していた手を引き蟹が麻痺している間にミッズーは部屋を出る。その間に俺は蟹の元に行き、目の前で飛び蟹の甲羅に乗る。


「はぁぁぁぁ‼︎」


甲羅の上で腰を低くして、手を引き甲羅を殴りつける。バキッと音がなり甲羅が手を中心にしてヒビが入る。


『流石リーダー、格好いい』


「ありがとよ」


インカムから相棒の声が聞こえ、それに答える。そして、甲羅にヒビの入った蟹の上から降りて、少し後退する。


『キシャァァァァ』


それと同時に麻痺が切れたのか今頃のように蟹が苦悶の声を上げる。それから蟹はハサミになっている右手で俺を襲う。


「よっとあぶねぇ」


左に避けハサミが地面に突き刺さる。そのタイミングでザザッとミッズーから連絡が来る。


『こちらルーと合流しましたわ…けど』


「けど、なんだ‼︎」


右手を引き抜き、反対側のハサミでの攻撃を避けつつ応答する。


『ルーがいじけちゃって、行きたく無いって駄々捏ね始めちゃったのですの‼︎』


「ドアホ‼︎意地でも連れて来るんだ‼︎」


そう叫ぶと、嫌だ!!リーダー!!僕ここにいる!!とルーから拒絶の声がインカム越しに聞こえてくる。


「だだこねるな!!一人でもいないと、失敗するぞゴラァ」


思わずそう言い返すと、ヒッと言う怯える声が聞こえる。少し脅かしすぎたか……と思っていた矢先連続て来ていた蟹の攻撃を避け遅れる。


「やべ、これ冗談抜きで死ぬ⁉︎」


え?と言う声とな、なんですと!!と言う声がインカムから聞こえてきて、後もう少しで当たると言う所で急に腹を中心として体全体にGが掛かり、攻撃を避けれた。蟹から離れGが止まる。それと同時に前にスナイパーライフルを肩に背負った相棒が目の前に現れ、俺をマントの中に入れる。ちょっと窪んでいる所に隠れたおかげなのか壁に同化したらしく蟹がこちら探す音がする。


「全くリーダー、今のは言い過ぎじゃない、それに誇張し過ぎ」


耳元でリュウの声が聞こえ、こちらの両頬に何か柔らかい物が密着し温かくなる。それから俺の背中に手を回し抱き寄せる。あたっている柔らかい何かが潰れる様な感覚が伝わってくる。


「それに……ここにいるのは貴方だけじゃないんだからね……」


うんと頷くと抱く力が強くなり体が完全に密着する。流石に窒息死するから少しほどいてと言う意味で背中を叩くと少し抱擁を緩めてくれる。


「あれやるの?」


相棒が確認するように見て来る。それに対して頷く。コクンとリュウは頷き返し俺を少し離し、目の前にいる相棒が目を合わせてくる。そして、インカムからミッズーが無事にルーをこの場所に連れて来れたと言う情報が入ってくる。


「よし行こう、持ち時間は十分だ!!その間に倒せよ!!」


『分かったよ』


『了解しましたわ』


マントを剥ぎ適当な場所に投げフッと相棒は鼻で笑い目の前からどいた。どうした笑ってと言いつつ窪みから出て、相棒の隣に立つ。


「いや、十分ってそんなに必要なのかなって思って」


「そうだな…それはあくまでも持ち時間だからな」


再び姿を現した俺らを見て蟹が動きを止める。


「やるぞ…相棒」


「オケー任したよ、リーダー」


左手を天井に向け目を瞑り、地面に魔法陣が出現する。


「"神よ、私は何をした"」


そう唱えた後、魔法陣は消え俺は頬を限界まで上げて笑いった。目を鋭くして蟹を見つめると蟹はこちらだけを見てくる。それと同時に相棒の体の周りに黄色の煙が纏わり始めた。俺の個人能力である"蛇の睨み"と"仲間への信頼"が発動したのである。


「行くぞ!!お前ら!!」


『おー!!』


俺は叫び、戦いの火蓋は切られたのであった。



ーーーーーーーNーIーGーーーーーーーー


ー深夜


本来、鳴らないはずの銃声音が、死体安置所に鳴り響いていた。


ーーーガガガッガガガガガッガガガッ


そして、銃声音が鳴り響く通路で標的である黒いマントを被り、黒いシルクハットを被っっている男が溜息をつく。


「そんなに打ったところで僕には当たらないぞ」


コンコンコンと男は自身を襲う銃弾を見えない盾みたいなもので弾き飛ばして行く。


「な、なんなんだ、あいつは‼︎」


銃を打っていた相手側が今更動揺したように声を上げている。


「さっさと終わらせるか」


彼はそう呟くと急に銃弾が止む。そして銃弾を打ち込んで来ていた相手側は彼が目の前にいるのに全員辺りを見回していた。


「あ、あれ?」


「どこ行った」


「そこに居たのはずなのに…」


戸惑いの声を出しながら彼等は周りを見ている間に男は彼らの間を縫って後ろに出る。そして胸元からスタンガンを取り出すと近くにいた男性の首元に当てスタンさせる。


「ぐあ⁉︎」


急に倒れた男性を見て周りが騒がしくなる。だがその間にも男は彼等を一人ずつ確実にスタンさせて行き全員気絶させる。


「すまないね…ちょっとこちらもしたい事があってな…来い」


男のその声と共に何人もの人が中に入って来て倒れている彼等を飛び越えて奥に行く。


「さて、始めますか…」


彼はそう言うと彼自身も奥へと向かうのであった。

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